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大嫌いな義弟のL♡VEドールに毎晩憑依してしまいます!?  作者: 大福ちゃん


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22/24

22話.ごめんねロンリィマカロンside夏波

すっかりと日の落ちた住宅街を、此坂夏波は少し早足で歩いていた。


その腕の中には、クラス委員長のちえりとの取引で手に入れた幻の『プレミアム・マカロンセット』が、形を崩さないよう大切に抱えられている 。


(凪ちゃん、きっと喜んでくれるよね)


凪子の大好物であるマカロンを1秒でも早く届けようと気持ちが早る。


家の玄関前に到着した夏波は、ふぅと小さく息を吐き出し、立ち止まる。

そして、手元の可愛らしい小箱を見つめながら、誰に聞かせるわけでもなくボソボソと呟き始めた。


「……ただいま。これ。……昨日は言い過ぎた。ごめん」


(いや、これじゃあぶっきらぼうすぎるか?)


「……ただいま、昨日はごめん。これ買ってきたから、一緒に食べよ? 」


(……うん、こっちのほうが自然だな)


一人でぶつぶつと謝罪のシミュレーションを繰り返す。


思い出すのは昨日、今日の失態。

その激しい後悔を取り戻すための、これが最大のチャンスなのだ。


夏波は意を決して、ガチャリと玄関の扉を開けた。


「……ただいま」


少しだけ期待を込めて声をかける。しかし、返ってくるはずの「おかえり」という声はない。


それどころか、玄関の電気は消えたままで、靴箱の前に凪子のパンプスはなかった。

リビングに続く扉を開けても、部屋の中は真っ暗でひんやりと静まり返っている。


「……帰って、ないの?」


時計を見上げると、時刻はとうに凪子の定時を大幅に過ぎていた。

普段ならとっくに帰宅して、スウェット姿で缶チューハイを煽っている時間だ 。


夏波は眉をひそめ、慌ててズボンのポケットからスマホを取り出した。

メッセージアプリを開くが、凪子からの『今日は遅くなる』といった連絡は一件も入っていない。


「……っ、なんなんだよ」


リビングの明かりだけをつけ、夏波はソファにドカッと腰を下ろした。

テーブルの上にマカロンの箱を置き、貧乏ゆすりをしながらスマホの画面を何度もタップする。


五分が過ぎ、十分が過ぎる。

時計の針が進むたびに、夏波の胸の内でイライラとした焦燥感が膨れ上がっていく。


(残業? いや、だとしても連絡くらいしてくるはずだろ)


頭の中で、色々な想像が最悪の方向へと駆け巡り始めた。


(何か仕事上のトラブル……?。いや、それとも……あの胡散臭い柴崎とかいう男と、一緒に飲みに行ってるのか……?)


もしそうだとしたら、最悪だ 。

自分の態度に愛想を尽かして、あんな男に癒やしを求めているのだとしたら。

自分があげた『バカ』というメモを見て、本当に家に帰るのが嫌になってしまったのだとしたら。


それとも、事故にでも合っているのかも.....。


「……くそっ!」


いてもたってもいられなくなった夏波は、勢いよくソファから立ち上がった。


(探しに行く。駅前か、会社か……とにかく、こんなところで待ってられない)


険しい顔で玄関へと向かった、その瞬間だった。


——ブーッ、ブーッ。


静まり返ったリビングに、スマホの無機質なバイブレーション音が鳴り響いた。

夏波は弾かれたようにスマホの画面を見る。


しかし、そこに表示されていたのは『凪子』ではなく、『ハルちゃん』という文字だった 。


「……っ、こんな時に」


舌打ちをして無視しようとしたが、万が一と思い直して通話ボタンをスワイプし、耳に当てる。


「もしもし、ごめんハルちゃん、今ちょっと取り込み中で——」


『あ、夏波ちゃん? よかった繋がって! 今ね、アタシのお店にねー……』


電話越しに聞こえてきたオネエ言葉のマスターの声に 、夏波はピタリと動きを止めた。


『あなたのお姉さんの、凪子ちゃんがいるのよ。完全に酔い潰れちゃってて……お迎え、お願いできるかしら?』


「……は?」


夏波は困惑していた。どうしてよりにもよってあの場所に凪子が....。


「わかったごめん。……今から行く」


短い言葉と共に通話を切った夏波は、戸惑いと焦りが入り混じった重い足取りで玄関の扉を開け、夜の街へと飛び出していった。


テーブルの上に残された美しいマカロンの箱だけが、静寂に包まれたリビングでポツンと主の帰りを待ち続けていた。

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