11話.夢だと言って..!
「よし……」
意を決して、勢いよく扉を開け放つ。
昨日と同じ場所に布がかかった大きな塊...。
それを震える手で布を剥ぎ取った。
「…………っ!!!!」
声が出なかった。暗いクローゼットの中。そこには、私と同じ部屋着を着た、私そっくりの『ラブドール』が、虚無を見つめて鎮座していた。
(ああ..うそ、でしょ……マジじゃん……!!)
全身の血の気が一気に引いていく。
昨日のことは見間違いでも夢でもなかった。
夏波は本当に、私の顔をしたドールを隠し持っていたのだ。
パニックになり後ずさると、後頭部にズキッと痛みが走った。
そっと手で触れてみると、小さなたんこぶができている。
(あ……思い出した。昨日、これを見て焦って部屋に戻って、足元のラグで派手に転んで壁に頭をぶつけたんだわ……)
そこまで思い出して、ふと昨夜の『もう一つの記憶』が蘇る。
『ブスなんて嘘だよ……。凪ちゃんは世界一可愛いんだから』『ねぇ、凪ちゃん、僕の凪ちゃん。ずっと一緒でしょ?約束、したもんね』
ポロポロと大粒の涙をこぼしながら、私の頬を愛おしそうに撫でていた夏波の姿。
「……いやいや、あれは絶対に夢! 100パーセント夢!!」
私は赤くなった顔を両手でバシバシと叩いた。
いくらなんでも、あの生意気な夏波が、あんな優しく甘い声で泣きながら私にすがるわけがない 。
きっと、このドールを見つけてしまったショックと、頭を強く打って気絶したせいで、脳がバグってあんなイカれた夢を見せたに違いないのだ。
そうよ、私がドールの中に入るなんてオカルト現象、あるわけないじゃない。
(あれが夢だとして、なんであいつは私のドールなんて……?)
夢の中の激甘な夏波は私の脳が作り出した完全な幻だとしても、目の前にある『私そっくりのドール』は紛れもない現実だ。
嫌がらせ? 呪いの一種? サンドバッグ代わり?
それとも――。
「ど、どうしよう……今日からどんな顔してあいつに会えばいいのよ……!」
誰もいない夏波の部屋で、私は頭を抱えてしゃがみ込むしかなかった。




