10話.やっぱり可愛くない
(昨日は本当に変な一日だったなぁー)
変な時間に寝直したのでいつもより少しだけ寝過ごしてしまった
ふぁぁ..とあくびをしながらリビングに向かうと
いつもと変わらない様子でトーストをかじる夏波がいた。
一瞬昨日の記憶が蘇りビクッと硬直してしまった。
わたしが入ってきたことに気がつくといつも通りのジト目でこちらを睨んでくる。
「おっせ、夜更かしして電話なんかしてるからだろ、ブス」
こちらの緊張なんてお構いなしのいつもの夏波の生意気な言い草になんだか安心してしまった。
「..ふふっ」
(やっぱね、夏波はこうじゃなくっちゃ)
昨日のしおらしい夏波とは似ても似つかない生意気な姿に今日ばかりは救われる。
「なに笑ってんの?変なやつ」
そう言って夏波は食器を片付け早々に玄関に向かう
「もう出るの?今日は早いのね」
「今日は文化祭の準備。帰りも遅くなるから」
そっけなく言い捨て出かけていってしまった。
(今日はネチネチ言わないんだ?)
なんだか少しさみしいような気持ちでその背中を見送った
静かになったリビングでハタと気がついた。
(ん...?そういえば昨日って、どこまでが夢..?)
昨日のことはお酒が入っているのもあって記憶がところどころ曖昧だ。
たしか、柴崎くんと駅で別れて、迎えに来た夏波に文句を言われながら帰ってきて……。
そう、腹が立って、あいつがシャワーを浴びている隙に部屋に忍び込んだんだ。
そして、クローゼットを開けると、そこには……私そっくりのラブドールがいて。
「いやいやいや! ナイナイ!」
誰もいないリビングで、フルフルと首を横に振る。
いくらあいつが夜遊びするような思春期こじらせ非行少年だからって、義理の姉のラブドールを隠し持っているなんて、そんなホラーな展開あるわけがない。
きっと酔っ払っていたせいで、変な見間違いをしたんだ。
「……でも、念のため。確認するだけ……」
夏波はさっき文化祭の準備に出かけていった。家には私一人。
私はゴクリと唾を飲み込み、恐る恐る夏波の部屋のドアを開けた。
綺麗に整頓された部屋は、いつも通りだ。私は真っ直ぐ、部屋の奥にある大きな備え付けのクローゼットへと向かう。
心臓が嫌な音を立ててバクバクと鳴っていた。




