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第四話 カブトムシを捕りに行こう【交戦相手は最強の流刑魔女】

──ヒュヒュンビュンッヒュン!

ラピスがハーレクインを高速で暴れさせる。


「クソったれぇえぇぇ!!!」


──ボワッファバァ!

ジッポのダイヤルを火炎放射に。炎の道に火を放つ。

瞬時に5本の炎の柱が蛇のように魔女に伸びていく。


直後、ソードモードで炎の柱の斜め右下から切りかかる。


──弾指

──パッーーーーーン

全ての攻撃が弾かれた。


ハーレクインは四方に飛び散り。

炎は魔女の2m手前で押し返されている。


俺は乱回転で吹っ飛ばされた。

アクセルとブレーキ操作で地面に叩きつけられるのを防ぐ。


こいつ、マナ放出の単純エネルギーで防いできやがる。

ラピスは空中戦では手数が減るし俺も普段は感じない感情を抱いている。


動かない相手との戦いがこうもやりづらいとは。


「あいつの攻略法を練ろう!」

「私はハーレクインしか手はないよ。魔具もうまく活用できればだけど、肝心なあいつの魔法がなんなのかわからない。使わせないと」


魔女が口を開く。


「うーん、素晴らしいほど”レア”な魔法を持ってるわね。女の子は地面由来の鉄を利用した魔法ね。地面魔法ってより”合金魔法”ってとこね。操作の精度もいい。で、男の子は”空気魔法”」


嘘だろ。


ラピスはハーレクインを地面から生成してる時点でタネはわかりやすい方だ。

けど俺の空気魔法まで見破るなんて。


「いいかい? 相手の技量や魔法を見切れば優位に立てる。そのためにじっくりと相手を観察するんだ。時には微動だにせず相手の攻撃をいなし続けてね。それを実現するために数多の訓練を積むんだよ。要は基本を大事に。バカは応用から入るからね」


何言ってんだ? しかし説得力しかない。

現に魔女はマナ操作だけでこちらをいなしている。


「ご高説どうも。でもこっちだって鉄の玉を飛ばすだけが能じゃないよ」


そうなんだけど、それを言うなよ。


「あら、手の内を明かすのは賢明じゃないわね」

「私には戦いにおける自負があるから」

「ラピス、挑発にならない挑発は虚しいぜ?」


ハーレクインを頭にぶつけられた。軽くだが痛い。


「(ふむ、言ってることは嘘じゃないね。けどそれは戦い方のレパートリーの話であって彼女の合金魔法では空中戦はもはや手詰まりかな。あるいは空気魔法と組み合わせればもしかしたら……。)」


「あんた今何%。こっちは9%」

「やばいな、俺は残り12%」


箒の充填マナが底をつきかけている。

この状況で自身のマナを使って飛ぶのは最悪だ。


──刹那

閃いた。てかなんで俺ら戦ってんだ? 逃げろよ。


「ラピス、閃いたんだけど……」


ラピスはハッとした顔をした。


「確かにね。それじゃ”あの技”いきますか」

「タイミングは慎重に。かましたらそれがライツアウトだからな。それに何発か撃つかもしれない。1発目以降の方向はラピスから魔女への導線に絞る」

「わかってる」


幸い自身の体内マナは70%ほどはあるだろう。

しかしラピスは55%くらいか?


だとしてもデカい”大技”と箒にマナを消費しても十分残ると判断した。


「動くか。そうはさせないよ!」


魔女が拳大ほどの大量のマナを飛ばして来た。


マナが通ると空気が歪む。

マシンガンの如きそれを左右に分かれてかわす。


魔女も追随し打ち込んでくる。


読まれてる? この状況で箒を使わせてくるか。

メーターにはマナ量ワーニングと10%が表示されている。


ラピスが魔女めがけてハーレクインを四方から計4つ放つ。


それをいなそうとする魔女。

魔女のマナ弾がハーレクインにぶつかる瞬間、破裂するように細かい鉄の楔になりハーレクインが魔女を襲う。


「ほう」

──弾指

──ボッハァーーーン

魔女は全方位にマナを放出し楔を吹き飛ばす。


すかさずハーレクインの猛襲と同タイミングで作った、魔女までの酸素を圧縮した一本道にジッポの火炎放射を流す。


──キンッ、シュッ、ボワァァアァー!

魔女めがけて炎が飛ぶ。


──弾指

炎が中央から穿たれる。火炎放射した手元まで魔女のマナが飛んできた。


俺は燃費がいい方だ。

空気操作は要所ですればいいしメインウェッポンは魔具のジッポ。


火剣ならまだしも火炎放射ならマナ消費は一瞬みたいなもんだ。


どラピスは違う。

砂鉄などを主成分に玉を作り出し操作する。


楔に変化させるのだって、俺の手にアーマーをつけるのだって、瞬間のことではあるがそれなりにマナを消費する。


極め付けはリアリスという環境。

マナが限りなくゼロに近い環境での箒を組み合わせた戦闘は短期集中と決まってる。


しかも俺もラピスも”マナ吸収”はできない。


それこそレアな魔法、というか体質だ。


昨日はぐっすり寝た。

体内のマナは十分貯まっていたがそれも今は60%ほど。

ラピスはもう50%を切ってるかもしれない。


「マナを消費させる方向性は間違っちゃいない。けど闇雲でもいけない。相手に消費させたマナより自身が消費する量の方が多いなら意味はないからね。ま、その点は問題ないけど」


さっきから論を垂れやがる。


やばいなラピスに疲れが見える。汗を流して目が虚気味だ。

けど集中は切れてはなさそうだ。


「思い出した。あんた大罪人でしょ。”忘却のグランティ”。違う? ずっと引っかかってたんだよね。出界した魔女。戦闘の実力も上々。魔法戦闘なんてアウトローな奴以外は心得てないからね。出界じゃなくて流刑なら話がつくんだけど?」


やはり集中は切れてはなさそうだ。

しかしハンドルを握るラピスの手は震え顔色も悪くどこか声も震えている。


てか大罪人? 忘却のグランティ?


「お前それって5年くらい前のニュースのやつか? 国家機密情報やアルカナ世界に関する歴史書を洗いざらい奪ったとかいう謎犯罪者。まあ大罪と言えばそうだけど、そいつがなんで?」

「指名手配されて未だ捕まらない。しかも盗んだ時に出くわした国家の手練れ魔法使いをほぼほぼ屠ってる。アルカナに居れなくなって出界した。さながら流刑ね。そう考えると合致するけどね、目の前の魔女がグランティって」


魔女は少し驚いたように見えた。


「やっぱり、お前達バカじゃないね。如何にも、私の名はグランティ」


凛々しく、堂々と魔女は名乗った。


「お前達?」

「ラピス、いいよそう言うツッコミ」


なんで疲労困憊でどうでもいい一言に噛み付けるんだよ。

確かに大罪人と見破ったのはお前1人の功績だけど。


「私からすれば世界を跨いで逃げ切るなんて朝飯前だわね。それにしても世界書を盗んだことになってるのね。そうと言えばそうだし、まあ落とし所はそんなところか」


含みのある言葉を発する。


出界? 渡界? 流刑?

真の目的がなんであれ重要なのはリアリスで今交戦している事実だ。

実力はわかってる。こいつの過去に用はない。


「ねえ、見逃してあげる。私達がアルカナに戻ってもあんたのことを国にチクったりしないから。だからそっちも見逃してよ」

「アハハハハハ! すごいねあなた! 名前はなんて言うの? とてつもなくご機嫌だし最高ね、気に入ったわ!」


グランティの言葉に嘘はないように思えた。

ラピスの正義は万人受けしない。が、刺さる人には刺さる。


「ラピス=ポアロ。弟はウルト=ポアロ。気に入ってくれてどうもありがとう。それじゃあ、さようなら!!!」


──刹那

──ズドッガガガガァーーーーーーーーン

轟音、衝撃、揺れる空気。

空間が悲鳴をあげ地面の土塊が雨のように下から上空に降りかかる。


「ッ! (なんだ!? 何がおきた!? あの子達は!? )」


大技を地面にぶっ放し錯乱させる。

俺達はマナと気力を振り絞り最初で最後の逃亡に出た。

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