43「はい、論破」(復活済み)
※2017年5月16日に34~50話の大幅変更が実施されています。ご注意ください。
【1。獣王国サイド】
思えば遠くに来たものだ……留学11日目のマイルズ(3歳)です。
「そういえば、最近肉を食べていないのです……」
まーちゃん係と呼ばれるお姉さんにもたれかかりながら不意にこぼしてしまった一言でした。
「マイルズよ。我ら、貴様が肉を食べぬ主義の者だと思っておったぞ」
ポチの言葉です。こちらの世界でもそのような人たちが居るのですね……。あ、草食動物がベースの獣人さんたちですか。なるほど……。深い。
「お肉、大好物ですよ?」
「お主、来た日から野菜と魚の話ばかりであったであろう。料理長も気をつかっておったぞ?」
ん~~~~なんてこった!!
お魚戦線ばかり気を取られていました……なんて迂闊な…。とても大事な人(お肉)をおざなりにしておりました。
「……本日お肉な気分なのです! 今日はお肉たべたいのです!! お肉なのです! ひき肉を使ってハンバーグが良いのです! とろーりチーズINが正義なのです! スープはコーンスープが良いのです! 何より調味料がいっぱい見つかったのです!」
ここは学院のホール。沢山の生徒がいる中で幼児必殺の駄々っ子タイム!
「おにくーーーなの!」
といつものように背中を中心に暴れようとした所、権三郎に抱え上げられました。
「参りましょう。そろそろ『そう』言われると思いまして王家御用達の店を調査済みです」
ゆっ、優秀過ぎませんか権三郎!
「新たな調味料や器具をご所望でしょうか? そちらも手配可能です」
そう言って私を降ろすとスッと一礼する有能執事。
遠慮なく色々と注文しました。
「では、学校が終わりましたら肉屋へ向かうと通達いたします」
「お願いなのです!」
「……マイルズよ、権三郎殿と同系機種の案山子を売ってくれまいか?」
残念ながら権三郎は我が国の……いえ我が家の秘密(謎)の塊なので売れません。
残念そうにするポチとは対照的にタマが漏らした言葉になぜだか皆さん頷いていました。
「晩御飯がグレードアップ確定です♪」
―――とある異世界宗教の7大幹部、その1人―――
「エルルちゃん~、今日はここまででいいよ~、お兄さんも迎えに来てるしね~」
「は~い」
儂は雇い主であるマナ殿。猫獣人の恰幅の良い……否、ふくよかなご婦人である。
「いつもエルルがお世話になっています」
「もう! お兄ちゃん。私はちゃんとお仕事してるよ!」
「本当に2人は仲好さんね~」
夜の営業へ向けた仕込みが終わり一息ついていたほかの従業員も微笑ましい視線を我々に向ける。
「では、皆さん。お先に失礼します」
「「「「お疲れ様~」」」」
こうして私は兄(部下)に手を引かれて店を出るのであった。
「……フィラント様。例の計画は……」
部下は儂と同じく表と裏に携わる者である。
表向き教主に恭順して居るが思考は儂と同じである。
「うむ。素材も順調に集まっておる」
「はい……」
「何暗い顔をしておる。人死にが出るわけでもないのだ」
「しかし、その後西大陸全域で戦乱が起きます。……私は大戦などもう2度と……」
顔を伏せる部下。こういった態度は好感が持てる青年である。
「うむ。安心せよ。それも必要最低限になるよう、我らが動くのじゃ」
「……そう、……ですね……」
「プロジェクトクラーケン。まずは海運が経済の大動脈であるこの国、その首都でかつ物流の出発地点である王都横の大河にて混乱を起こす。これは布石じゃ」
言い忘れたが、儂はほかの幹部向けに『聖竜』という肉体を提供した世界最高の錬金術師じゃ。獣王国よ。すまぬが我らの都合で少々混乱がある。許せ。これも我らが生き残るがため……。
「……混乱……」
私は兄(部下)はそう呟くと顔を顰める。
しかし、兄(部下)の口角が邪に吊り上がっていたことに、その時儂は……………………………………気付いていた。
【2。領都グルンドサイド】
―――教会幹部【節制】バルニフェルディアス(ユリアナ)の視点②―――
私は……私たちはドゥガと接触のあった男を路地裏で囲んでいました。
男は囮だ。何も知らない単なる信徒だ。たぶん善良な男なのでしょう。
「貴方に少しお話を聞きたいのですが、よろしいか?」
「信仰の事でしょうか?」
善良な笑顔だ。
「惚けなくていい。ドラという食人鬼をさがしている」
オルヒマがそういうと、わかりやすい反応があります。
さすがに『ドラという食人鬼』という言葉で表情を変えたら答えているようなものです。
「3日前に貴方たちと会った男だ。あ、ちなみにほかの男たちはこの都市の騎士たちが確保に向かっている。貴方は俺たちの為に譲ってもらった」
ワグナートが続けます。
そう、ですがそのすべてが囮。
でも、捕まえないといけません。
捕まえてあの『運命神』の審判を受けなければならないのです。
異世界人に対する運命神の審判は『再審判』とされています。
神々の中でも上位神である運命神様が今回の『再審判』に応えることが決まっております。
「ふむ、おかしなことをおっしゃいますね。私は神の教えを説いて歩いているだけの一般市民。食人鬼など恐ろしいものに心当たりは…」
男の表情に余裕が戻ります。
「ほほう、では信仰についてお教えいただいても?」
「ご興味がおありですか?」
「こう見えても信心深いほうなんだよ」
ワグナートはおどけて言うが、その手から放たれているものを私は知っています。
男が話す内容は知っている。よくある話です。
この世界は後1000年で滅びる。
その時人間を救ってくれるのは主だけ。
死んだあと救済してくれるのも主だけ。
だから主は素晴らしい。他の神と違い常にともにあってくれる奇跡を見せてくれる。救ってくれる。
そして、この後悩んでいるものに人工の奇跡を見せる。……いつもの手口です。
「あー、そろそろ。効いてきたかい?」
「はい?」
「いやさ、もうそんな嘘っぱちな話はどうでもいいんだ」
「なんですと!?」
「だってよ。全能とか、救いとか言っておいて、他の神を信じて亡くなった俺の爺さんとかは救ってはくれないんだろ?」
「それは……」
「だからよ。もうその話はいい。お前さんらの聖人ドゥガってやつの行き先を教えてくれ」
やはり、そこまで知られていましたか……。
「多分西に逃走しました。って私は何を!?」
「ありがとよ。もうお前さんには用はない」
そういうと後方に待機していた騎士たちが現れ、男を連行して行きました。
そうこれはワグナートの得意スキル『テイム』です。
こちらの人間相手に使っても意味はないが、異世界人には見ての従順にさせる効果があります。
「それにしても、寄りにもよって西か……」
連行されてゆく男を見送りつつワグナートはつぶやいた。
……グルンドの西地区と言えば大陸有数の戦力が集結する場所。『龍殺し』『英雄』『賢者』がいる区域。しかもそれらは敵対勢力。馬鹿でなければ犯罪者は近づきたくもないはずなのです。
でも。
私は思います。
あの狂った男は意図的に西に向かったのではないか……と。
無辜の民に犠牲をばらまきながら自滅するドゥガの姿を予測しつつ、我々も帰路に付きました。





