42「いつもいつもちゃんと反省しております」(復活済み)
【1。獣王国サイド】
裁判の日にお仕事を受注し、数日が経過しました。
「ふむ、違和感がなくなったのう」
ポチの一言です。何を言ってるのでしょうか。
「ですね。普通に幼女で通じますね」
タマ? 目、ついてます?
「我々としてはこのまま成長していただきたく思います。何でしたらグルンドに引っ越す所存です」
親衛隊長? あなた、キャラ壊れすぎです。
結論。周囲も自分も慣れすぎました……。
あれ? スカートに違和感が……あれ? あるぇ?
……今日のリボンですか? 青がいいのです!
……違和感先生! 仕事して!!
◆◇◆◇◆
「てなことがあったのです……」
「へぇ」
ザン兄の反応はいまいちです。おかしいのです。
「で、それ何?」
「ふふふ、ザン兄もよいところに気づいたのです。遠隔操作型案山子試作1号なのですよ」
「ふーん」
我ら兄弟の部屋に置いてきた遠隔操作型案山子試作1号越しザン兄の問いにに応える私。
一時帰郷しているザン兄とバン兄の前で祖父と祖母に没収され実家に持ち去られた案山子を遠隔操作中なのです。
それにしても……反応が冷たいのです。
遠隔操作ロボットですよ!
もっとロマンあふれる男の娘的な熱い反応はないのでしょうか?
……男の子的に熱い反応があるシーンではないのでしょうか!?
……人間だれしも間違いはあるのです……。仕方ない。もう少し刺激してみましょう。
「この遠隔操作型案山子試作1号で高い高いしてあげましょう!」
「ふん!」
なぜだかザン兄が遠隔操作型案山子試作1号を思い切り殴りつけ拳を痛めました。なんと無謀な。権三郎で研究した私の遠隔操作型案山子試作1号の装甲はそんじょそこらの案山子とはけた違いなのですよ! ふふふ。
「今日はこれで終わるのです! ではまた!」
遠隔操作型案山子試作1号の動作確認を済ませると私は冷ややかな視線を送るザン兄とバン兄に手を振って接続を切りました。
遠隔操作から意識を教室に戻しました。
遠隔操作をしているときはこちらの体が空くのです。お昼寝という体で横になったのですが……。
気づけば髪形をいじられていました。三つ編みとか。あれ? およそ15分ぐらいでなぜこうなった……。
「うがー! なのです」
「逃がす……と思ったか!」
「確保しました」
「もうあきらめてそちらに目覚めましょう」
3番目の人! というか親衛隊長!
私、3歳児です。よくある『昔は着せ替え人形にして遊ばれてた』的な流れのはずです。なのに、なぜあなたの発言はガチ臭がするのでしょうか? 不穏な流れはお控えください!
ゆっ、油断も隙もないのです。
◆◇◆◇◆
「てなことがあったのです……」
「災難じゃな」
ああ、理解者は獣王様だけです。
現在、王宮滞在10日目。
なぜだか作るものすべて発表禁止、製法は国家機密とか……。異議ありまくりなのです。幼児が作る玩具ですよ?
「遊びたいのです! なぜ、荷電粒子砲とか……電磁加速砲とか……プラズマ砲とか……反物質粒子砲とか……付けちゃダメなんでしょうか!」
「うむ、素晴らしい発想だが! 剣は近接武器じゃ」
なぜですか! なぜ、そこで正論なのですか獣王様!!
「なぜですか! 発想の転換をしないと技術進化はあり得ないのですよ!」
「……興味はあるからもう一本わたそ……」
「おいこら、いぬっころ」
祖母が怖いです。小声で応援しましょう。
「獣王様、がんば」
「ぐぐ……可能性は止めては……」
「お手」
「バウ」
所詮はポチの親という事でしょうか……。
「マイルズ」
祖母の笑顔が怖いです。
「おばあちゃん。お仕事忙しくなってお帰りになったのではないのですか?」
小首をかしげて小悪魔スタイルです。あ、頭を掴む握力が強いのです。ご、ご勘弁を……。
「何を作る気だったの?」
「普通に振動剣を……」
「振動剣って?」
祖母の手が緩みました。少しだけ。
「刃先を超振動させまして、接触する組織を細胞単位で断裂させてゆく剣です」
「おお!」
理解してくれますか! さすが獣王様!
「もうね! 鉄ぐらいならスパスパなのです!」
興奮する獣王様。おばあちゃんは少し握力を強くしました。
……もう一歩踏み込んでも……良さげですね!
「そして!」
「そして?」
いいです! いいですね、獣王様! 今度一緒にテレビショッピングしましょう。
「キーワード起動で隠し機能が発動します!」
「キーワード! 隠し機能! 燃えるのう! して、どのような機能じゃ!」
「魔法力が続く限り連射可能な先日の爆発魔法ぉぉぉぉぉぉぉ」
おばあちゃん頭痛いのです。ギブですギブです。
「はぁ、やっぱり見に来てよかった……」
「基準がわからないのです……」
「連射型爆発魔法はセーフではないのか?」
祖母の視線が厳しくなります。
「アウト」
「では連射機能なしの爆発魔法は?」
「……ギリギリかな」
ほう、では複数機能を付けちゃおう。
いける、イケルで!
………脳内反響で『逝けるで!』に聞こえましたが気にしてはいけないのです!
獣王様もそこで我慢したらしく納得顔である。
さて、基本設計を紙に起こしましょうか。
気分で実装が変わりますが。
こうして私は一本目の魔法剣作成を開始します。
あれ? そういえば私、滞在期間超過してません?
「問題なしじゃ!」
「この状態で戻って来られるとかえって問題ありよ」
ふむ、納得しました。納得できないけど。
「……あ、そうだ。マイルズ」
「……はい」
「あなたが作った案山子。反応がおかしかったけど何かしたよね? 罰則追加かしらね?」
そっそんなご無体な―(棒)。
「……何か裏がありそうね……」
そんなことないですよー(棒)。
……はい。遠隔操作機能を白状させられました……。面白ロボットだったのになぁ~ちぇ~。
―――とある異世界宗教の7大幹部、その1人―――
「エルルちゃん~、今日はここまででいいよ~、お兄さんも迎えに来てるしね~」
「は~い」
儂は雇い主であるマナ殿。猫獣人の恰幅の良い……否、ふくよかなご婦人である。
「いつもエルルがお世話になっています」
「もう! お兄ちゃん。私はちゃんとお仕事してるよ!」
「本当に2人は仲好さんね~」
夜の営業へ向けた仕込みが終わり一息ついていたほかの従業員も微笑ましい視線を我々に向ける。
「では、皆さん。お先に失礼します」
「「「「お疲れ様~」」」」
こうして私は兄(部下)に手を引かれて店を出るのであった。
「……フィラント様。例の計画は……」
部下は儂と同じく表と裏に携わる者である。
表向き教主に恭順して居るが思考は儂と同じである。
「うむ。素材も順調に集まっておる」
「はい……」
「何暗い顔をしておる。人死にが出るわけでもないのだ」
「しかし、その後西大陸全域で戦乱が起きます。……私は大戦などもう2度と……」
顔を伏せる部下。こういった態度は好感が持てる青年である。
「うむ。安心せよ。それも必要最低限になるよう、我らが動くのじゃ」
「……そう、……ですね……」
「プロジェクトクラーケン。まずは海運が経済の大動脈であるこの国、その首都でかつ物流の出発地点である王都横の大河にて混乱を起こす。これは布石じゃ」
言い忘れたが、儂はほかの幹部向けに『聖竜』という肉体を提供した世界最高の錬金術師じゃ。獣王国よ。すまぬが我らの都合で少々混乱がある。許せ。これも我らが生き残るがため……。
「……混乱……」
私は兄(部下)はそう呟くと顔を顰める。
しかし、兄(部下)の口角が邪に吊り上がっていたことに、その時儂は……………………………………気付いていた。
【2。領都グルンドサイド】
―――教会幹部【希望】ディニオ(雑貨屋)の視点③―――
「バルニフェルディアスに監視が付きました」
影の報告を聞く。
思った以上に代官の動きが速い。何者だあの男。
「ドゥガは?」
「地下に潜伏しております。かの御仁にはあの魔術がございますので逃げ延びるかと……」
「……末端の牧師までで済みそうか?」
「……商会の従業員まで手が伸びるかと……」
「……そうか……では本格的に撤収指示を」
「はっ!」
影の気配が消える。
私は深く嘆息をつく。
幹部3名集まっての都市攻略で撤退戦か……。
フロントの商会に潜ませている構成員をデコイにして……商会と教会の接点を極力排除しておいてよかった。
これでは商会から教会へは辿れない……。
あとは私も撤退か……今の顔はルカスとリーリアに知られていない。
だが間違いなく気付かれる。奴らの嗅覚は異常だ。
しかし私のこちらでの実績は十分。
王都の本店に戻るという言い訳も、ドゥガがこちらに来る前から周囲に仕込んでいた。居なくなっても疑われることはない。
……はぁ、コツコツと積み上げてきた内部浸透工作も、あの短絡的なドゥガのせいで崩壊……。
そもそもなぜあのような無謀な計画を立てたのか……。
ドゥガを使うならば、北で遊ばせておれば良いものを……。
……まったくもって度し難い。
◆◇◆◇◆
「貴方と貴方の信じる神のご加護があらんことを」
男。アンリは十字を切り、話していた相手から離れてゆく。
アンリは昨日よりグルンド市街北地域で布教活動をしている。
今まで隠してきた信仰を隠さずに路地裏の貧民に声をかけ、優しく話を聞き食べ物を施し、信仰を説く。残念ながらこの都市の人間は貧しくとも信仰になびかない。弱身につけ込むにはまだ時間が必要なのだ。
ではなぜアンリはこのような事をしているのか?
もちろん囮だ。
教会暗部、いや異世界転移人教会派閥の中で幹部と呼ばれる【正義】ドゥガをこの都市から逃がすため、望んで囮となっている。
アンリが派手に行動することで捕まったとしても出せる情報は『ドゥガが犯罪者に仕立て上げられ為政者に弾圧されている。正しい信仰を守る為逃がしてさしあげねば』程度である。
アンリもそれを認識している。そしてそれ以上を知る必要はないとも理解している。自分の脳をかき回しても何も出ない。
しかし宗教の自由が保障されているこの都市でアンリが拷問されることはない。
尋問からの身辺調査はされる。うらで異世界宗教を信仰していたことも露見するだろう。
公に調査されれば事実は噂として広がり、グルンドで住めなくなるだろう。
信仰に殉ずるアンリにとってはそれもまた仕方ないこと。
秘密集会場がばれるだろう。それも痛くない。むしろ錯乱させる情報として誤情報をまき散らせることで撤退を判断した異世界宗教的に損はない。
アンリは細々と布教活動を行ってきた。そこに先日、聖人が訪れた。
その精悍な顔で神々しいオーラを纏う戦士は【正義】ドゥガと名乗った。
アンリは神に感謝した。
素晴らしい出会いだと感動した。
同時に都市の権力者がこの聖人を貶めようとしている事に憤りを感じた。
だから要請に応じた。
アンリはそれまでの大工としての表の顔を捨て、神父として行動を始めた。
他にも10人程応じて都市各地で表立って布教活動を開始した。
不意にアンリは路地から人がいなくなったことに気付く。そしてアンリは覚悟した。
だが深刻な覚悟はしていない。
やってる事はただの布教活動なのだ。
テロなどには関わりがない。
建物の影からモヒカンの男が現れる。
恐怖を感じたアンリは自然に、ゆっくりと振り返る。
だが反対にはスキンヘッドの男と赤髪長髪の女がいた。
もう開き直るしかない。
悪事はしていない。
神の教えに従って正しく生きているのだから。
アンリは自分が人間だと思っていた。
同時に神を信仰しない者は人間ではないとも思っていた。
囲まれているがアンリの顔は自信満々だった。
そしてすぐに気付く間違いであると。





