第34羽 鳥、は……
背後からアーリィの胸部を貫き、滲む様に消えた闇の槍。
エリスさんの傷痕と同様に、闇に染まったその槍痕からは……血液が――
「――がはっ、……ごふっ」
「アーリィッ!!」
「アーリィ様ッッ!!」
そんな、そんな、そんなッ! くそッ、何で!? 【魔力感知】にも【空間把握】にも反応がなかった!
あれは駄目だ、あの傷は駄目だ、今すぐに治療しないともたないッ!!
「あ……れ……? ……ごほっ、……な、にが…………?」
「アーリィ様! 喋ってはいけません!」
全身の力が抜けた様にして地へと仰向けに倒れそうになったアーリィを、地面に膝をついていたエリスさんが抱き留めた。
口元から下を真っ赤に染めたアーリィ。
そのアーリィを受け止めた衝撃で、脚の傷から大量に出血し、歯を食い縛り、苦悶の表情で激痛に耐えているエリスさん。
二人が……一瞬で、血塗れ……に…………
――くそぉおおッ! 呼び掛けなんてせずに魔力が枯渇してでも聖炎で守っていればっ! ――っ、そうだ治療だ! 浄化は無理だが聖炎の発動には充分過ぎる程にまで魔力が回復している!
そう思った俺が二人に近付き、聖炎でアーリィの治癒を開始しようとした、その時だった。
アーリィの背後、光球の光が届かない距離。
そこから周囲の闇に紛れるかの様にして、こちらへと狙いを定めている闇槍が、俺の目に映る。
――なっ! くそッ、最後の一本か!
槍はアーリィとエリスさんの死角に浮遊している為、二人は気付いていない。そうでなくともあの傷では回避は無理だ。
あの槍は普通じゃない。聖炎は治癒用に取っておきたいが――まずは迎撃しなくては治癒もクソもない!
槍の矛先から、その狙いは二人のどちらか。瞬時にそう判断した俺が二人と闇槍との間に盾を模した聖炎を設置したと同時、音も無く闇が射出された。
一直線に宙を滑る槍。その闇槍が銀炎の盾へと到達して――――貫通、し……!?
――くそがあッ!! 間に合――
――ドスッ……。
「…………ノ、イン……?」
ははっ、間に、合った……ぜ……。
「ノインさん!? そ、そんなっ!」
っと、喜んでいる暇は、なかった、な……。
早く、アーリィを……治療しないと……。
……何、だ? ……頭が、ぼうっとするな。
……ん? 痛みが……ない……?
おっと……力が抜けて……飛べな、い……落ち――
「――ノイ、ン……ッ!」
サンキュ……アーリィ。……ちょうどいい所に、落ちたな……。
「二人共動かないでっ、治療します! 『――――――――』[治癒]!」
そうか……回復魔法が、あったな……忘れてたよ。
「……効果が、無い? ……そんな、なぜ?!」
効果が……無い? ……あの、闇槍の……せい、か?
「ならポーションを!! …………そんなっ、これも……!?」
ポーション、も……ダメ……か。
「アーリィ様! ノインさん! そんな……なぜ、なぜっ!?」
「……ノイ、ン……だめ……いや、だよ……」
心配しないで、いいさ……【超回復】がある、からな。
それに、聖炎なら……治療、できるだろう。
もう一回……分、ぐらい、魔力はある、はず……。
さて……聖炎で、アーリィ、を…………………………?
……発動、しない?
「――っ! ここは危険です! 避難します、気をしっかり持ってください!」
なぜ、だ? なぜ……発動、しない…………!
「いや、だよ……ごほっ、……ノイ、ン……死ん、じゃ…………いや、だ……!」
「アーリィ! それ以上喋らないでっ! ――ぐぅっ、脚が……っ!」
何で、聖炎が……発動、しないんだ!?
何でだ!? ……何で! 何で! 何でっ! ……何でッ!!
状態:魔石損壊
生命力: 3/95(19+76)
――っ…………はは、……そういう、ことかよ……。
魔石、やられると……聖炎……出せねえ、っぽい、な。
そうか……魔石、やられちゃってた、か……そりゃ、【超回復】も、発動しない……わな。
……――くそがあッ! くそっ、くそっ、くそっ、くそっ! ……くそおぉ……っ!!
「……ぐううぅッ! はあっ、はあっ、はぁっ、はぁ、…………ここまでっ……来れば……」
……エリスさん……あの脚で……俺達を、運んだ……のか。
生命力: 2/95(19+76)
「っ! だめッ……――ごふっ、……ノイ、ン……ッ!」
「ッ! ノインさん! そんな、身体が!?」
……から、だ……?
「だめえぇッ! ――がふっ、……ノイ……ッ……だ、……がはっ……」
「っ! 止めてアーリィ! お願いだからもう喋らないで!」
くそ……アーリィ……が、死んじ……まう……。
「ピ……ィ」(アー……リィ)
言葉が、話せ……ない……。
魔力、が……使えない、のか……。
生命力: 1/95(19+76)
「ノイ……っ、だ……め…………ごほっ、……死ん……ゃ、だ……」
「ピ……ィ」(アー……リィ)
「ノインさん、身体が……! アーリィ、お願いだから……もう止めて……!」
もう……耳が……アーリィ、の……声が……聞こえ、ない。
……俺は……死ぬ、のか……?
……そんな、訳には……いかないっ……。
ご主人さま……を……死なす、訳には、いかないっ…………。
「い……や、…………っ……ノ、イ………………」
「ピ……」(ア……)
ご主人、さま……を…………ひとり……に、は…………。
く……そ…………も、う……目…………が…………。
「ノ……ィ……」
「…………」
アー、リィ……と…………いっ、しょ…………に……。
ず……と…………アー…………リ…………の…………そ……ば……………………に…………………………。
生命力: 0/95(19+76)




