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ラグナロク  作者: ピロ
第6章 地下帝国とレンの旅立ち
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依頼を終えて

今回レンのシーンが長かった・・・

小夜と交互で第6章を進めるつもりでしたが、長くなり過ぎました。

ちょっと反則ではありますが、第6章にある小夜の話を一度消して、第7章に持って行こうと思います。




「タタカイ、オワッタ。ワタシ、ミテクル」



洞窟の入り口に座り込んで一点を見つめていたミレーヌが急に顔をあげた。

中で行われていた戦闘が終わった事を、精霊が教えてくれたからだ。

「本当か?」

「ウン。ワタシ、ミニ、イク」

「お、おい。俺も行くぞ」

洞窟の入り口で待機していた悠久の探索者のランスもミレーヌに続いて洞窟の中に入っていく。


洞窟内には等間隔でランタンが吊るしてあるが、周りが辛うじて見える程度だ。

しかしミレーヌは夜目が効くから、ランスを置いて走っていった。





ご主人様。どうか無事でいて・・・








「ユキ、大丈夫か?」


興奮がようやく収まったユキ。

ユキに舐められて、俺の顔はヨダレでベトベトだ。

「うん。オイラは大丈夫だぞ」

ユキの体を見渡して、どこにも怪我が無いことを確認する。

静さんがユキを助けてくれたんだな・・・



「ねぇ、あんちゃん。お願いがあるんだ」



「どうした?」

「おかあちゃんをここに残して行きたくない」

「ああ。そうだな。静さんを皆に見られる訳にはいかないし、ちゃんとした所で眠ってもらおう」

俺も静さんをこんな所に置いておくことは出来ない。

指輪の次元収納に静さんの遺体を収納する。


寂しそうな顔をするユキの頭を撫でていると、静さんのいた場所に魔物がいた。

手の平サイズのスライムに触手が生えたような魔物だ。

「あんちゃん。コレって・・・」

ユキはその魔物を手に乗せた。

その魔物は俺達に攻撃をするのではなく、ユキが持ち上げると腕に触手を充てて、甘えるように体をスリスリさせてくる。

「・・・・かわいい」

「コレって静さんの元々の姿なんじゃないか?」

「そうなのか?」

ユキが手の平に乗せている魔物はローパーと呼ばれていた。

確かにこの姿が大きくなったような感じがしないでもない。

ユキに妙に懐いているのも、鬼の中にいた静さんの心が宿っているのかもしれないな。

「あんちゃん。連れて行っても構わないか?」

ユキに攻撃をしないか不安ではあるが、懐き方を見ていると危険は無さそうだ。

「ああ。構わないぞ。ただし、危険が無ければの話だからな」

「うん」

この世界で魔物をテイムして連れている人がいるのか分からない。

そのことをユキに確認してみると、魔物使いは存在しているとのこと。



「後でランス達に聞いてみるとするか」



洞窟内は風が流れているから、匂いが籠ってはいない。

だが、盗賊達が風呂に入っている筈もなく、辺りに臭い匂いが染み込んでいる。

それに彼等の血の匂いが混ざって、かなりの異臭を放っていた。

ミレーヌも心配しているだろうし、早く外に出ようと思っていると入ってきた方向から何者かの気配がする。

「ユキ、誰かくる。そいつを隠せ」

洞窟に入ってきた方向から音がする。

悠久の探索者だったとしても、今は見られないようにした方がいいだろう。

「分かった」

ユキはポーションの入ったポーチを急いで空にする。

そして傷が付かない様にローパーを優しくポーチに入れた。


「しばらくココで大人しくしてくれよな」


近づいてくる足音は走ってこちらに向かってきていた。

「敵の可能性もある。ユキ、油断するなよ」

「うん。オイラに任せてくれ」

俺もユキも立ち上がり、いつでも戦闘に入れる状態で構える。



「ゴシュジンサマッ!!」



広間に入ってきたのはミレーヌだった。



「ミレーヌ!?」

「ヨカッタ。フタリ、トモ、ブジ」

ミレーヌはそのまま俺の所まで走ってきて抱き着いた。

「ゴジュジンサマ、ダイジョウブ?」

ボロボロの俺を見て心配そうに下から上目で見つめてくる。



「心配かけたな・・・」



「レン、無事かっ!?」

俺がミレーヌの頭を撫でていると、ランスがやってきた。

俺達が無事なのを確認して、辺りにまだ敵がいないか確認している。

さすがはAランクパーティのリーダー。

ギルドのナンバーワンパーティは伊達じゃないな。


激しい戦闘の跡をランスは観察している。

「すげぇな・・・」

Aランクの戦士が見てもそう思うなら、静さんは相当な強さだったってことだよな・・・


「ネェ、ゴシュジンサマ。バケモノ、ドコ?」

圧倒的な力を持っていた化け物。

でも化け物の姿がここにはない。


「ああ。この刀の切れ味を恐れて逃げていったよ・・・」

「そうか、本当に運が良かったな」

ランスは信じたようだけど、ミレーヌの目は疑っている。

ミレーヌには後でちゃんと話さないとな。


「レン。後の事は俺達に任せて外で休んでいてくれ」

「いや、でも俺達も手伝った方が・・・」

「ワカリマシタ。ワタシタチ、ハ、ソトデ、マッテル」

ミレーヌがすかさず俺の言葉を遮った。

まぁ俺とユキじゃ、こんな状態でも手伝うだろうからな。

ミレーヌには感謝しないと。


「ダレカ、ヨンデ、クル?」

「ああ。ジークとローグを呼んできてくれるか?」

そう言いながらランスは盗賊達の首を切って血抜きをしている。

ランスが躊躇いもせず首を切っているのを見て、俺に出来るだろうか?と考えてしまう。

「ワカッタ。ユキ、テツダッテ」

「うん」


俺が歩き易いようにミレーヌとユキが腰に手を回して俺を支えようとするが、さすがに身長差があり過ぎるだろ。

これじゃあ全体重を掛けてしまうことになるぞ・・・

まぁ気持ちだけ受け取っておこう。


「レン。大丈夫なの?」

ミーシャとロロナがやってきて、回復魔法を掛けてくれた。

痛みや腫れ、傷口が一気に塞がる。

「ありがとう。怪我をしてると効果覿面(こうかてきめん)だな」

感謝の言葉と共に、俺は感動していた。


男性メンバー達が洞窟内に向かって行く。

転がっている盗賊の首を刈るだけなので、しばらくすると三人が戻ってきた。

「ギルドの情報よりもかなり大所帯だったな」

結局頭を数えてみれば盗賊は30人越えの大所帯。

俺達は知らないけど、悠久の探索者達の顔見知りが8人もいたらしい。


冒険者なんて盗賊と見た目も雰囲気も大しても変わらないからな。

それにしても悠久の探索者達がベテラン冒険者達だったからよかったけど、そうじゃなかったら俺達の誰かが死んでいたなんてことも有り得る話だ。



ギルドには依頼の内容をしっかり精査してもらわないとな。



「これは追加料金貰わないとやってられないわね」

生臭い生首を入れた袋を見て、ミーシャがボソリと呟いた。

盗賊だが知っている元冒険者が8人もいた。

これだけでも依頼のランクが大幅に上がるだろうし、当初の3倍近い盗賊がいたのだ。

とはいえ、冒険者に成り立ての俺には適正の報酬は分からない。

交渉は悠久の探索者に任せた方がいいだろう。


「レンは馬車に乗らなくて大丈夫?」

「ああ。ロロナが回復魔法を掛けてくれたから問題ない」

荷馬車には足の健を切られて歩けない女性、妊娠してしまっている女性。

病気になっている女性や幼子を座らせた。

あとは全員歩きになったけど、突き上げる尻の痛みを考えると、俺はこっちの方がいい。


「そう、それならよかっ・・・」


ロロナが俺に近づいてくると、ミーシャがユキに目で合図した。

ミーシャが右側、ユキは左側から俺に抱き着いてきてロロナが抱きつけないようガードする。

そして無邪気な笑みを俺に見せ、ロロナに勝ち誇る視線を向けていた。

こういう時のユキとミーシャは相性ピッタリだ。


「いやはや、レンさんのモテっぷり、羨ましいかぎりですね」

ロロナが苦虫を噛んだような顔をしていると、珍しくジークフリードが羨望の眼差しを向けてきた。

捕らえられていた女性全員が俺にだけ抱き着いて、感謝の言葉を述べていたのが、羨ましかったのかもしれない。



国境の街マルケスには盗賊のアジトから半日も掛からずに到着した。

「おいおい。コレ全員盗賊なのか?」

「ああ。依頼じゃ十人前後って話だったんだが、蓋を開けてみたらこのザマよ」

悠久の探索者達は門番の兵士達も知っていて、盗賊の数に驚いていた。

捕らわれていた女性や子供達は街で責任持って引き取ってくれた。

正直有難い。

「領主であるヘルマン様から報酬が出るだろうから、それまでは街で待機しているがいい」

街で待機しなければならなくなったのは予想外。

まぁ隣国アルジウス王国の情報を仕入れるのに、この街にいるのは都合がいい。

あまり待たされるのは困るが、そうなった場合は俺達はいなかった事にすればいいだろう。

「ゴシュジンサマ、ウカナイ、カオ、シテル。ダイジョウブ?」

顔に出てるのか。





「ああ、大丈夫。心配してくれてありがとな」

「ゴシュジンサマ、ダイジョウブ、ジャナイ。アトで、チャンと、ハナス」

心配そうな顔で俺を見つめている。

ミレーヌは奴隷だ。

でも奴隷としてではなく、心配してくれている事は分かる。

有難いことだ。

「分かったよ。宿に着いてから話すよ」

ミレーヌの頭を撫でていると、ユキが不満そうな顔をする。

「あんちゃん。オイラお腹空いたぞ」

さっきからユキのお腹がグーグー鳴りっぱなしだったな。

「よし。さっさとギルドに行って、美味しい物を食べに行くかっ!!」

「やったぁーーーーーーっ!!」



ユキとミレーヌに引っ張られて、俺達は冒険者ギルドに向かうのであった。



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