チョロイン二人は伊達じゃないっ!!
第6章になった小夜の話を第7章に持ってきたものです。
申し訳ございません・・・
この世界の亜人差別は酷いものだ。
ドワーフはクラフトマンとして重宝されているから、他の種族に比べればマシな方といえる。
それでも奴隷と大して変わらぬ扱いだ。
何度か独立しようと辺境に街を築いてはみたが、ことごとく人間に滅ぼされてしまった。
地下帝国を建設する
そう言ったのは、初代国王であるボブル・ディナ・ゲイドールの言葉であった。
希望を持つことが許されなかったドワーフ達にとって、自分達だけの国を造るということはまさに希望。
悲願の一大事業だった。
ドワーフ達は歓喜し、給金が出ないにも関わらず、世界中のドワーフ達が夢を求めて集まってきた。
「ガッハッハッ。俺が造った彫刻を見るがいい。素晴らしいだろ」
「そんなもん、役に立つもんじゃないだろうて。儂が造った噴水を見ろ。これこそが実用を兼ねておる芸術というものよ」
「なに馬鹿な事をいってやがる。俺が造ったこの石畳の道こそが真の実用的なものだ。そんなことも分からんとは、まだまだヒヨっ子よ」
酒を片手にドワーフ達の自慢話が、夜毎酒場で繰り広げられていた。
国を造る為に立ち上がった者、それを支える為に食料を用意する者、ドワーフ達の生きる糧ともいえる酒を造る者。
街中が希望を糧に盛り上がり、全てが支えあっていた。
やがて城が立ち
国が出来て
子を成し
死んで土に還る
人からの支配を逃れたドワーフにとって、そこは楽園であった。
ドワーフの王国は永遠に続いていくものだと、誰もが信じていた。
魔物が溢れ出すまでは・・・
「おおー。明るいねぇ」
ドワーフ達の案内によって自警団の住む屋敷に案内された。
外にはあまり光が無いが、建物の中に入ると驚くほど明るい。
「血の匂いで魔物をおびき寄せてしまうが、光でも魔物をおびき寄せてしまう。だから外では最低限の明かりしか使わないようにしているんだ」
「へぇ~。明かりでも寄せちゃうんだ」
応接室に通されると、ソファーに座るよう促される。
「小夜。ここの光は普通のものと違います」
「ほう。客人はここの明かりが普通のものと違うことに気が付きますか」
ドワーフの長の話によると、ドワーフ達が地下を掘り進めて行くうちに、エネルギーの媒体となる鉱石を見つけたのだそうだ。
長が近くにあった鉱石を持ってきて、水の入った皿の中に入れる。
すると鉱石が光を発生させて、周りが暖かくなってきた。
「面白い石だね。こんな石初めて見るよ」
水を掛けると熱と光を発生させる特性を持つ鉱石。
光の無いこの世界にとって、この鉱石はドワーフ達の生命線となった。
「・・・ねぇアイラちゃん。コレってさ、ウランとかヤバい鉱石じゃないよね?」
「大丈夫です。そこまで強い力は感じませんし、有害物質は発生させていません。今まで見た事も無い鉱石で世紀の大発見ともいえます」
「ほぅ。客人は石に詳しいとみえる」
ドワーフの長は両肘をテーブルに乗せ、手を組んだ上に顎を載せる。
そして前のめりになって語り出した。
長の話はどんどんエスカレートして、相手が引いているにも関わらず語ることに夢中だ。
アイラちゃん助けてくれ~。
小夜が横を向くと、笑顔で聞いているフリをしてスリープモードに入っている。
そしてしばらく長の話を聞かされる小夜であった。
「長。その辺にして下さい。そろそろ食事の準備が出来るのでこちらにどうぞ」
小夜が真っ白に燃え尽きた頃ビランダが呼びにきてくれた。
ナンデ、モット、ハヤクキテ、クレナカッタ、ノ・・サ・・・
チーン。
「小夜、元気がありませんよ?」
この裏切者めー。
何も無かったみたいに言ってくれるじゃないか。
ビランダが食堂に案内してくれる。すると豪勢な食事がテーブルいっぱいに並んでいた。
「うはっ!!美味しそうっ!!」
ヨボヨボの老人のように疲労していた小夜だったが、用意された食事を見て一瞬で体が潤いを取り戻す。
「お肉ばかりですよね・・・」
「アイラちゃんっ!!見てよこのお肉。すごく脂が乗ってて美味しそうっ!!それにソーセージまである」
食べる事が大好きな小夜と違って、食事を必要としないアイラは、食事は嫌なことでしかなかった。
食べれない訳ではない。
ただその後の洗浄が面倒なのと、しばらく匂いが消えない事が嫌で嫌でしょうがないのだ。
しかしAIとしての機能がこの場で食事をしないのは不正解。
肉を食べろと命令をしてくるのである。
「辺鄙な場所で出せる物は限られているが、ドワーフの食べる物を是非とも食べていって欲しい」
「あひはほぉー」
そう云われると同時に食べる小夜。
基本お嬢様育ちだから、食べ方はキレイですけど、口が波打つようにモグモグと食べてますね。はしたないです。
どれだけお腹が空いていたのですか・・・
しばらくすると、埋葬に行っていたドワーフ達もやってきて、豪快に酒を飲みながら食事を始める。
仲間の死に葬式のような感じになると思ったのですが、酒を飲んで騒ぐのも、弔いを兼ねているのだそうです。
それよりもドワーフは私が持っていたライトに興味津々で、質問責めにあってしまいました。
勿論私には過去に行われてきた歴史や、技術の知識が記憶されています。だから何をすればコレが造れるか分かりますが、千年以上も技術に差があるので、説明したって理解は出来ないと思います。だからドワーフの持っている鉱石と交換でライトをプレゼントしました。
「アイラちゃんも美味しいから食べなよー」
相変わらず不健康な食べ物を食べ続けています。
小夜は分かっていません。小夜が口を開けて寝ている時、匂いに釣られたハエが飛び回っている事を。
ナイスアイディアが浮かびました。その映像を撮って、小夜の口の中にダイブしたハエが●●●を産み付けて、ピーがピーでピーする映像を可視化するのです。
そうすれば完璧な食事である、ヘルシックチューブを食べるようになるかもしれませんね。
フフフ。コレで小夜はもう普通の食事は出来なくなるハズです。
さすが私。
すーぱーあんどろいどは伊達じゃない。
まぁ小夜は強いかもしれませんが、可愛いチョロいんですからね。
「フフフフフフフフフフフフ」
「アイラちゃん、さっきから何をブツブツ言ってるのさ?ちょっと怖いんだけど・・・」
おっと。完璧すぎてつい声が漏れてしまいましたね。褒めてくれて構わないのですよ
「どうですか?お口に合いましたでしょうか?」
「うん。凄く美味しいよっ!!ソーセージなんて久しぶりで幸せだよぉ」
ビランダの問いに答えつつも、小夜は口を動かすことは止めない。
「アイラさんの方はあまりお口に合わなかったのでしょうか?」
「うぅん、アイラちゃんはねー。ベジタリアンだからお肉は基本食べないんだよ」
「ベジタリアン??」
「うん。野菜しか食べないんだよ。だから気を悪くしてたらゴメンねー」
小夜・・・
「ねっ、アイラちゃん」
「ハイ。小夜の言う通りです。折角用意してくれたのに、ほとんど手を付けずにゴメンナサイ」
フフフのフ。
小夜が私の為にそんな言い訳を考えていてくれたなんて。
ゴメンナサイ。私は悪いアンドロイドでした。
恥ずかしい。
このままマイクロ核融合炉を臨界まで回して、溶けてしまいたいです。
なぁ~んてアイラちゃんは考えてるんだろうなぁ。
アイラちゃんはチョロいんだから、私に掛かればそんなものお見通しさ。
まぁこれでも千年は生きてるからね。
千年生きてるババァは伊達じゃない・・・
違うな。
お局様はだ・・・
違う。
「玉藻ちゃんは伊達じゃないっ!!コレだ。コレで行こう。アハハハハハハ」
顔を真っ赤にした小夜は、頭の中で考えていたことを声に出していた。
“ 何で私がそこで出されなければならない・・・ ”
「玉ちゃん、いいじゃんかよぉー」
“ ハァ・・・全く、酒ごときに飲まれるとはな。恥を知れ。恥を・・・ ”
小夜が出された飲み物は果実酒で、すっかり酔っぱらっている。
心の中で玉藻と話をするのが、口から出ていることにも気づかないでいるほど酔っていた。




