表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラグナロク  作者: ピロ
第6章 地下帝国とレンの旅立ち
78/83

野盗との戦い

この世界の中の他の物語を書いています。

ショートストーリーで書き終わったら一気にアップする予定です。

もし気に入って頂ければブクマなどして読んで頂けると嬉しいです♪

馬車の車輪がガタガタと音を立てている。

昨日とは打って変わって、馬車の中は静かな空間が広がっていた。



“ 精霊達。君達が受ける不快な者達の存在を私に教えておくれ ”



“ うん。いいよ ”



精霊と話すミレーヌ。

精霊使いになるには、精霊が見えなければなる事は出来ない。

ここにいるメンバーで精霊が見えるのはミレーヌだけ。

精霊達の声は小さいので、馬車に乗っている他のメンバーは精霊とミレーヌが何を言っているのか分からない。

だが確かにミレーヌは誰かと会話している。



“ この人が怪しいよ ”

“ 違う。この人は私のご主人様。悪い人では無い ”

“ でも体から変なオーラが出てる ”

“ うん。でも変な人じゃない。この人以外の不快な存在を教えて ”

“ ミレーヌが言うならしょうがないね。分かったら教えてあげるよ ”

そういうとミレーヌの周りにいた精霊達はどこかにいってしまった。


野営した場所は小高い丘になっていて、緩やかに下って行く道のりだ。

街道自体はそこまで広く無いが、周りは草原が広がっていて野盗からいきなり襲撃を受けることは無い。

そのおかげでしばらくは何事も無く馬車は進んで行く。


「もう少ししたら森に入るぞ」

馬車が出発して一刻くらいの時間が過ぎた頃、ギルドから派遣された御者のダインが幌の隙間から声を掛けてくる。

「分かった。何かあったらまた教えて」

「ああ」


しばらくすると巨大な森が現れた。

ジャイアントフォレストと名付けられたこの森は、その名の通り巨大な森が広がっている。

この森は巨大な森が広がっているだけでは無く、巨大な木が立ち並んでいるのが特徴だ。

そのせいで昼間でもほとんど日の光が入り込まず、街道の周りに生えているのは岩に生えた苔や、シダ科の植物くらい。

常に薄暗く、野盗が商人達を襲うには絶好の場所ともいえる。


「相変わらずここは真っ暗だね」

「野盗が襲うとしたら恐らくこの森でしょうね」

ロロナとジークフリードの言葉に全員が頷くと、馬車の中に一気に緊迫感が広がる。

「ダイジョウブ。セイレイタチ、マダ、サワイデない」



更に俺達は森の中の街道を進んで行く。



「野盗に襲われた馬車だ」



御者のダインが幌の隙間から小声で情報をくれる。

「奴等の行動範囲に入った。何かあったら知らせる。近づいた時は音で合図するからな」

ローグは敵がいる時の音と、敵が近くにいる時の音、こちらから攻撃する時の音などいくつか打ち合わせをしている。

「分かった」



握りしめた手に汗がにじむ。

日本で何度も喧嘩はしてきた。だけど相手を殺そうなどと一度も思った事はない。

冒険者ギルドで暁の牙の連中とも争ったが、殺すとか口にはしたものの、本当に殺すつもりなんか無かった。

でも今は違う。殺すとか、そう考えるだけで心臓がバクバクしている。

心配してユキが俺の手を握ってくれた。

「ユキ、ありがとな」

ユキは俺と違って緊張している様子は無い。恐らく覚悟は元々出来ているんだろうな。

そう考えると、俺よりもずっとユキの方が凄いと思う。


「ゴシュジンサマ、テキ、イル」

「本当か?」

ミレーヌの小さな声を聴いていたローグが幌に近寄って話掛けて来た。

「ウン。コノサキにイルって、セイレイオシエテクレタ」

「分かった」

「俺にはまだ分からないが、気付いたら合図する。皆もいつでも戦闘に入れる準備をしていてくれ」

無言のまま馬車は進んで行く。

しばらくするとローグから敵を確認したという合図の音が聞こえた。

ローグが気付いたのがかなり後だった事を考えると、ミレーヌは斥候としてかなりの能力があるということだ。

「テキ、チカクにイル。ロロナ、ミーシャにマホウ、カケル」

「分かった」

ロロナはミレーヌの指示通りに小声で魔法の詠唱を唱える。

呪文が唱え終わると、ミーシャの体が薄っすらと光った。

これが魔法が掛かったということなんだろう。

「ぎゃぁぁぁぁああああああああっ」

ローグから攻撃の合図が聞こえると同時に、敵の断末魔が聞こえる。

「クソッ!!隠れてるのがバレてるぞっ!!全員で一斉に掛かれっ!!」

「「「「おうっ!!!」」」」

前方から声がする。

「行くよっ!!」

「分かった」

一番先にミーシャが飛び出して、ロロナとジークフリードも飛び出した。

「敵は残り11」

「おうよ」

ランスが接近する敵の前に立ちはだかる。

ローグの声にランスが反応した。

「ミーシャ!!街道左手、木の上一人!!」

「分かった!!」

ミーシャが弓を放つと木の上から敵らしき者が落ちて行く。

「右に二人」

「任せてっ!!」

「ライトニング!!」

ミーシャとジークフリードが同時に弓と魔法を放つと、二人が一撃で倒れた。

同じ敵を攻撃しないのは、長年一緒にいるパーティで役割も決まっているからだろう。

「ミーシャは前衛に。ロロナとジークはサポートを頼む」

ローグは指示を終えると、ショートソードを持って前衛にいるランスの所に走り出す。


「始まったな。よし!!俺達も行くぞ」

「うん」

「ワカッタ」

俺達も馬車から飛び出すと、既に前衛は乱戦になっている。

しかし野盗の持つダガーなどでは、ランスの持つグレートソードの攻撃を受ける事も出来ずに切り伏せられていた。

ローグとミーシャは前衛から後ろに行かせない様に牽制しながら野盗達と戦っている。

流石はAランクパーティ。連携が完璧だ。

「畜生ッ!!罠だったかっ!!」

野盗の一人が自分達が討伐対象になっていた事に気付いたが、時は既に遅かった。

「お、俺は死にたくねぇ」

そこに俺達が馬車から出て戦闘に加わろうとしているのを見た野盗の一人が逃げ出す。

「レン!!こっちを頼む」

「分かった」

逃げ出した野盗の一人を追いかけてローグは戦線から外れた。

俺はローグのいた場所から野盗が後ろに回り込まないよう急いで前線に駆けつける。

「レン!!任せたぞっ!!」

「分かった!!」


心臓がバクバクいってる。

今から殺し合いをするんだ。当然だよな。

俺は相手を見る。殺し合いをするというのにヘラヘラと笑っている。

快楽殺人者なのかもしれない。じゃなきゃこんなこと出来ないよな・・・

「死ねやぁぁあああああ!!!!!」

怒声と共にダガーを上から振り下ろしてくる。あまりに大振りで、動きも遅い。

だから余裕で避けることが出来る。

人を殺す事が出来ないなら絶対に戦闘に参加するなよと昨日ランスに釘を刺された。

ランスの言うことは最もだ。戦闘の出来ない奴がいても邪魔になるだけだからな。

もし俺のせいでユキやミレーヌが攻撃されて死んでしまったら俺はどうする?

平気なのか?駄目だ。そんなことは許されない。



迷うな、覚悟を決めろ!!



野盗が避けた瞬間俺はカウンターで切り付ける。

すると相手の左肩からお腹の辺りまでザックリと切れた。

俺の身体能力が高いのもあるけど、ロロナがフィジカルエンチャントを掛けてくれていて、予想を超えた力で野盗を切ってしまった。

「えっ!?」

野盗は自分がザックリと切られたことを、驚いた顔をしながらバタリと倒れる。

「レン!!やるなっ!!」

ランスは口笛を鳴らしながら、敵二人の相手をしている。



初めて人を殺してしまった・・・



レンは思考が停止して、何も考えられなくなってしまっていた。

殆どの人が初めて人を殺した時は、こんな感じになるのではないだろうか。

悠久の探索者はその辺のことは分かっているからか、これ以上期待はしてなさそうだ。


「じゃあそろそろ終わりにしようか」

ランスは一人を蹴飛ばして転ばすと、もう一人の相手を切り付ける。

野盗は受ける事が出来ないから、やりたい放題だろう。

転ばした相手にランスはグレートソードを突き立てた時、ミーシャも相手にしていた男の首を切って勝負があった。

「こっちもオッケー」

残りの二人だが、ミレーヌが気の精霊を使役して野盗二人を拘束していた。

「ヘヘッ。案の定大した事はなかったな」



心臓の音がまだバクバクいってる。

「あんちゃん。やったなっ!!」

「ゴシュジンサマ、オミゴトです」

皆が何か言ってるけど、全く何を言ってるのか分からない。

思考が完全に停止してしまって全く頭に入って来ないんだよ・・・

俺が殺した奴の死んでいく時の顔が、鮮烈に脳に焼き付いている。

あの驚いた顔。死を悟って絶望した顔をして、あいつは死んで行った。

やっちまった・・・

「あんちゃん、大丈夫か?」

刑務所に入ったら何年出て来れないんだ?そしたら小夜を探せないだろ。

それはマズい。捕まる前にここから逃げないと・・・

「おーい」

でもどこに逃げればいい?どこに逃げれば捕まらない?




「あんちゃんっ!!!!!」




ユキはレンを座らせると、レンの頭を抱え込んだ。

「・・・」

突然俺の目の前が真っ暗になる。何が起こった?

でも柔らかくていい匂いがする。

「大丈夫だぞ。オイラがいるからな」

誰かが俺を撫でてくれている?

「ゆっくり息吸ってー。今度はゆっくり息を吐いてー」

俺はその声に従ってゆっくりと大きく息を吸う。すると、ほんのりミルクのような匂いがする。

いい匂いだ。

どこか懐かしくて、凄く落ち着く・・・

俺はその安らぎを更に求めて抱き寄せる。

「あんちゃん、どうかしたのか?」

「人を殺しちまった・・・」

その問いに俺は自分のしてしまった事を素直に吐き出した。

「あんちゃんは悪い奴をやっつけた。凄かったぞ」

「そうなのか?俺の住んでる所じゃ、人を殺すのは犯罪なんだぞ」

「違う。あんちゃんは何も悪くない」

俺の頭を撫でてくれる感触が、徐々に俺の焦りを紐解いていく。

ユキの心臓の音がする。その音を聞いていると、俺の心も落ち着いて行った。

俺が幼い頃、母に抱きしめてもらっていた時の記憶を思い出す。



「あんちゃんが辛い時は、オイラが側にずっとついてるからな」



「ユキ・・・ありがとう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ