戦いの前
だんだん暖かい日がやってきてくれて嬉しいです♪
ただ気持ち良くて、いつも以上に寝落ちしてしまうのが難点ですぅー・・・
俺は雪菜という女性がユキと重なって見えたことを思い出していた。
彼女は俺のことを龍と呼んでいたな。
龍と呼ばれた俺が雪菜を抱きしめた時と、今ユキに抱きしめられている時の感覚が全く同じだ。
まさかとは思うけどアレは前世なのか??
いつもは思い出そうとするだけで頭が激痛に襲われて思い出すことが出来なかった。
でもこの体ならあっちの体ほど痛みを感じることはない。
何か思いだせそうな気がする。
俺はユキを強く抱き寄せて、ユキの匂いを何度も大きく吸い込みながら、何か思い出せないか記憶を探る。
「えへへ。あんちゃんは甘えん坊だなぁ」
あの時と全く同じ感覚だ。俺はあの時安らぎを感じていた。
「いいぞ。オイラがあんちゃんをいっぱい甘えさせてやるからな」
彼女は雪のように冷たかった。だが不思議と暖かかった記憶がある。
雪菜と出会う前は沢山の人に囲まれていても孤独だった。
何かが違う。
どこかが噛み合っていなくて、常に何かがすれ違っているような感覚。
雪菜と会ってからは幸せだった。
雪菜の奥に見える何か。そうだ、雪菜には何かが重なって見える。
声も匂いもぬくもりも・・・
雪菜の顔の奥に更に雪菜を大人にしたような女性が重なる。
真っ白い髪に赤い瞳。
美しく妖艶な雰囲気を持っているが、笑うと気持ちが安らぐような可愛らしさも持ち合わせている。
・・・夜・・美?
「そろそろ時間だぞ・・・」
眠そうな目を擦りながらランスが起きて来た。
見張りを交代するために起きたランスの目に入ったのは、レンがユキの胸の中に顔を埋めてスーハーしている光景だ。
「お、お前、やっぱりロリコンだったのか・・・」
ランスの声に俺は正気を取り戻す。
「えっ?俺はいったい・・・」
そしてユキの胸に顔を埋めて、匂いを嗅いでいた事に気付いた。
「ち、ちが・・・ユキすまな・・・」
顔を上げてユキを見ると、慈愛に満ちたユキの顔がそこにある。
「あんちゃん・・・」
潤んだ瞳は恋する乙女だ。
ユキは俺の頬に両手を当てて、再び抱きしめてくる。
「オイラのおっぱいはあんちゃんだけのものだからな」
そういって俺をヨシヨシしてくれるユキ。
誤解だと言いたいが、もう何を行っても無駄だろう・・・
「・・・・・・・・・・」
ランスの冷ややかな目が俺の心に突き刺さる。
何も言ってくれないのが一番辛いやつだ
「ダイジョウブ。テキ、ナニもイナイ。チャンとミハリシテル。ソレカラ、ワタシはアナタよりトシウエ。ゴシュジンサマ、ロリコンちがう。ランスはだからモテない。ただのエロオヤジ。スゴクシツレイ」
そういってミレーヌも俺に抱き着いてくる。
「そうだぞ。それからオイラはミレーヌよりおっぱいが大きいから立派な大人なんだからな」
ランスの言葉ミレーヌとユキがすぐさま反論する。
「まぁ確かにロロナより大きくないけど、ミーシャより確かに胸は大きいな・・・」
ランスがそれならしょうがないのか?とかブツブツ言っているが、全て俺達に聞こえている。
「すまないな。俺が人を殺したことがないから不安なんだと言ったら、二人が俺を勇気づけようとしてくれたんだ」
「ふーん。モテる男はしてもらえる事も違うんだな」
そういいながら鼻の下を伸ばしながらニマニマとしている。
「まぁいい。明日は戦闘になる予定だからな。早く寝て戦えるようにしておけよ」
「ああ、分かった」
「それとレン。無理だったら絶対に戦闘に参加するんじゃないぞ」
急にヘラヘラしたランスの顔が真剣になる。
その言葉の意味は後で気付くことになるが、今はまだ何も分からないでいた。
翌朝。
この世界は昼の時間も夜の時間も長い。
だから太陽の出ている時間とそうでない時間の寒暖差が激しく、明け方が日の無い時間帯で一番寒かった。
寝袋を持っているのだが、何かあった時に寝袋では咄嗟に起きあがる事が出来ない。
だから毛布にくるまって寝ているが、想像以上に寒いのが難点だ。
夜美か・・・
どこかで聞いた事があるよな。
俺はその名前が気になって寝むれずにいた。ユキを抱きしめていた時に思い出したのが夜美という名前。
しかし誰なのかは全く思い当たることはない。
だがそれがとても大事な人だったような気がしてならなかった。
「ゴシュジンサマ、サムい・・・」
ミレーヌがブルブル震えながら、俺の隣にやってくる。
既に俺の隣にいるユキの反対側に横になるミレーヌ。
傍から見ると毛布にくるまった芋虫三人が転がっている状態だ。
「アッタカイです」
俺はユキとミレーヌに挟まれてかなり暖かくなったが、小夜を探す旅に出ればコレが毎日続く事になる。
寝る事が出来ないほど寒いから、何かしら対策をしないといけないな。
「そろそろ起きろよ」
ローグが起床を告げる。気付けば空が白み始めていた。
「やっぱ外で寝るのは寒いわねぇ」
「本当。早くホームに帰りたいわ」
ミーシャとロロナは震えながら起きてくる。
「そうですね。今回は焚火が出来なかったから特に寒かったです」
ローグと二人で最後の見張りをしていたジークフリードは、寒いのは苦手だとばかりに毛布を被っていた。
そして何か温かい物は無いの?とばかりに俺の方に視線がやってくる。
高台のこの場所は火を起こしたり、大声で喋らなければ野営に最適な場所だ。
その代償として風を遮るものが何も無い。
「温かい物食べるか?」
俺がそういうと、全員が瞬時に返事をした。
「コレもすげぇ美味いな」
大量の肉が煮込まれたスープ。
大量に脂が浮いていて俺の感覚からするとコッテリしすぎだ。
だが脂が上に浮いてスープがすぐに冷めない状態になっていて、この寒さがコッテリ感を緩和してちょうどいい感じにしてくれている。
一緒に食べるパンもスープに浸せば、柔らかくなって食べやすい。
「コレも大鷲の羽亭で作ってもらったのか?」
「いや、コレは商人ギルドの宿で作ってもらった」
「えっ!?レンってもしかしてあの高級宿に泊まってたの?」
「ああ。屋敷を買うまではずっとあそこのペントハウスにいたぞ」
「「「えええっ!!!」」」
俺達が泊まっていた部屋は特に高いらしく、一泊金貨5枚もするらしい。
でも確かにそのくらいはしてもおかしく無いような部屋だったな。
「結婚してっ!!」
「私もレンと結婚するっ!!」
「俺もレンと結婚するからなっ!!」
「いや、勘弁してくれ・・・」
ランスとミーシャとロロナはいい漫才トリオになるに違いない。
「そうか・・・やっぱり見た目が幼女じゃないと駄目か・・・」
「それじゃあ私達はアウトだよね」
「ぐすん。レンさんは最低です・・・」
「・・・・・・・・・・」
俺は夜の一件があって一切反論することが出来なかった。
「さて、今から出発するがキャラバン隊で得た情報だと、商人が襲われた場所に今日通る事になる。怪しい箇所を通過する時は前もって俺が合図するから、いつでも馬車から出られる準備はしておいてくれ」
「分かったわ」
食事を終えて各々の準備が終わる頃、スカウトのローグが頃合いを見て話出した。
悠久の探索者はちゃんと役割分担が出来ている。
最初は怪しい奴にしか見えなかったローグだが、こういう時はローグが実質的なリーダーで実に頼もしい。
「それからレン、ミレーヌ、ユキの三人は野盗が出て来てもすぐには出ないようにしてくれ」
「分かった」
「野盗が出たら私が一番先に出るからね」
「分かりました。ロロナはミーシャが出る前にフィジカルエンチャントを掛けて下さい」
「了解」
馬車に乗り込むといつもヘラヘラしているミーシャの顔つきが変わった。
ジークフリードも温厚な雰囲気は変わらないが、いつもの雰囲気より緊迫感があるのが分かる。
彼等は全身の神経を張り巡らせて、最善の行動が取れる状態にしている
コレがAランクの冒険者ってやつか・・・
こうして初めての対人戦に出発するのだった
雪菜については第3章 商会 前編の秘密と記憶に登場しています。興味がございましたら、そちらをご参照下さい。
夜美についてはイラストを載せてるので気になる方は 幕間 イラスト載せます 2に載せています。個人的に夜美が私の一番好きなキャラです(人•͈ᴗ•͈)




