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9. けっこう重要な任務じゃないっすか!

 道満との戦いから無事に生還(せいかん)すると、時男たちはすぐにMISTの東京本部長、椿(つば)木(き)麗(れい)子(こ)に報告を行った。

 それを受けて、すぐさま椿木から二番隊の京園寺秀(ひで)人(ひと)に対し、残された隊外構成員の救出命令が下される。

 京園寺は二番隊の隊長であり、皆からの信頼も厚い人物であった。


「お前たちだけでも無事でよかった。あとは任せてくれ」


 時男たちにそう伝えると、単独でトンネルに向かう。

 他の隊員が同行しなかったのは、京園寺が信頼されているが故(ゆえ)であるが、人手不足ということもまた、その理由の一つであった。

 今は一番隊が海外(かいがい)派(は)遣(けん)で国内におらず、その穴を埋めるため、他の隊員は日々任務に負(お)われているのである。


「ふむ、気合をいれて来たんだがな……」


 トンネルに着くと、すでに悪霊は姿を消していた。そのため、救出はあっけないほど簡単に終わる。


(それにしても、幽体を集めてまで悪霊が探したいものとは……?)


 それから数日後、時男、雛、響斗が京園寺により会議室に呼び出された。


「あ~、きっと時男が死刑を言い渡されるのね」


「おいおい、それはいくらなんでも可哀想だろう。クビ程度じゃないか?」


 会議室に向かう途中、雛と響斗が後方の時男を真顔で揶揄(からか)う。


「ちょっ。そんな怖いとこなのっ、MISTって!? 俺がいったい何したんだよ!?」


「身の程知らず罪(ざい)よ。高望み罪(ざい)ともいうわね」


「ふっ」


 雛が正面に視線を戻しながら答え、それを聞いて響斗が笑った。


「面白ぇじゃねーか、雛~っ。弁護士呼べや。六法(ろっぽう)全書(ぜんしょ)見せてみろやあっ。そんなんあるわけねえだろ~っ」


「ああ、大(たい)言(げん)壮(そう)語(ご)罪(ざい)でもいいかも」


「それぐらいにしといてやれよ、雛」


「こんの~っ、京園寺先生に言いつけてやる!」


 後ろで吠える時男をおいて、二人が歩いていってしまう。


「突然呼び出してすまないな」


 会議室に着くと、すでに来ていた京園寺が笑みを見せた。


「京園寺さ~ん、雛ってばひどいんすよ~~。ぐすっ」


 すぐに時男が京園寺に泣きつく。

 京園寺は笑いながら時男を慰(なぐさ)め、さっそく話しだした。


「呼び出した理由だが、本来なら、まだ隊外構成員のお前たちに頼むべきことではないんだ。だが、なにせ人手不足でな。まあ、奴から逃げきったお前たちなら、きっと何とかなるだろう」


「奴?」


 雛が訊(き)くと、すぐに話の核心(かくしん)に入る。


「お前たちに、道満という悪霊の追(つい)跡(せき)を頼みたい。実力的に倒せとまでは言わないが、せめて奴が探しているというものが何なのか、それを知りたいんだ」


「えっ? やった! けっこう重要な任務じゃないっすか!」


 時男はすぐさまガッツポーズをとった。


「そうだな。それがあるものなら、奴の手に渡るのを絶対に阻(そ)止(し)しなければならないんだ」


「……あるもの?」


「ああ。これはMISTが探しているものでもあり、三番隊のイズミがずっと追っているものでもあるんだが……」


「イズミさんが!?」


「そうだ。それについては後々(のちのち)話していくから、とにかく今は道満が何を探しているかだけでも突き止めてくれ」


「うっす!」


 イズミの名を聞き、時男が勢いよく返事をするが、雛と響斗は冷静に質問を投げかける。


「だけど、あいつを追おうにも、なんの手掛かりもない状況ですよ。どこから探せばいいんでしょうか?」


 まずは雛が真剣な表情で訊いた。


「奴が幽体を集めているのなら、話は早い。幽霊の目撃情報が出た場所から当たればいいんだ」


「あー、なるほど」


 雛が納得の表情で手をポンっと打つ。


「しかし、幽霊の目撃情報がある場所など日本に山ほどありますよ。それのどこから?」


 次に響斗が質問を投げかけた。


「少女の体に憑(ひょう)依(い)しているなら、体力的にさほど遠くへは行ってないだろう。トンネルから100キロ圏内といったところか。まずはその範囲で探してみるといい」


「……確かに、そうですね。さすが京園寺さんだ」


 響斗も納得の表情を見せる。

 京園寺は笑みを返しながら、最後に三人に確認をした。


「では三人とも、引き受けてくれるということでいいんだな?」


「はいっ」


 三人が揃って返事を返す。

 それから四人は軽い雑談をし、しばらくすると京園寺は会議室を出ていった。


 「じゃ、まずは情報集めね。アタシは坂(はん)楽(らく)さんのところに行ってみるわ。あの人なら色々な情報を探せるでしょ」


 雛がすぐに動きだす。

 坂楽とは、MISTでコンピューターオペレーションを担当している霊能者、坂楽栄(えい)太(た)のことであった。


「そうだな。なら俺は、そういうことに詳しい知り合いに当たってみよう」


 雛に続いて、響斗も動きだす。


「あんたはどうすんの?」


「う~ん」


 雛が訊くと、時男は顎(あご)に手を当てて考えた。

 すぐに「あっ」と何かを思い出して話しだす。


「俺は前から気になってたとこがあるから、ちょっとそこへ行ってみるわ。あそこは幽霊が出るって有名だから、もしかしたら……」


「ふ~ん。じゃ、とりあえずみんな別行動ってことで。分かってると思うけど、あいつはかなりヤバい悪霊だからね。情報が入ったら、単独で動かずにすぐに集まりましょ」


「うっす!」


「了解だ」


 雛の言葉に、時男と響斗が口角を上げて答える。

 それから、時男は一人、最寄りの駅に向かった。電車を乗り継ぎ、埼玉のとある場所に向かう。


「噂(うわさ)どおり、不気味なとこだなあ」


 時男がたどり着いたのは、廃(はい)墟(きょ)と化した動物園だった。

 ここの噂を中学生の頃から聞いていたため、もしやと思って来てみたのである。


「でも一人も……いや幽霊だから一霊か。一霊もいねえな」


『この有様(ありさま)じゃあ、さすがに幽霊も出てったんじゃねーか?』


「うおっ。突然出てくんなよ、お前っ。びっくりすんだろっ」


 いきなり横に並び立った茂左衛門に、時男が驚く。


『そもそも何で動物園に幽霊がいんだよ? 動物園って楽しいとこだろ? 遺恨なんて残らねえだろうし、そしたら幽霊もいねえだろ。その噂はガセなんじゃねえか?』


「あー、まーなー。そうかもな~」


 二人は同じ方向を見ながら、うっすら途(と)法(ほう)に暮れた。


――ヴフォォーーッ――


 その時、背後から動物の唸(うな)り声と鼻息が聞こえる。


「えっ……」


『おいっ、動物ってもういないんだろ?』


「そのはず……」


 二人が振り向くと、そこにはカバの幽体がいた。


『にぎゃあああっっ!!』


「うおおっっ!」


 驚いて二人がすぐに逃げだす。


「幽霊って、動物の幽霊かよーーっ!?」


 叫ぶ時男たちを、カバは全速力で追いかけ始めた。


『いや~~~~っ!! でかい~~っ! こわい~~っ!』


 動物園に茂左衛門の叫び声が響き渡る。


お読みいただきありがとうございます。

二番隊の隊長、京園寺秀人が活躍する「守護霊の王」も、ぜひご一読ください。

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