第7話「この人生がくれたプレゼント」
ぼくは今、統合失調症だ。
働けずに生活保護で暮らしている。
テレビでたくさん映画やドラマなどで活躍している人たちが毎日、映っている。
ぼくも社会で活躍したかった。
せめて、普通になりたかった。
自分の生活費すら稼げない。
生きているのが申し訳ないし、働けない自分が悔しかった。
一生、働けないのだろうか。社会の役に全然立てないまま。
没頭できることもない。何もかもがつらい。
ぼくは自ら命を絶とうと心に決めた。
練炭でしのう。
ぼくは練炭を燃やしながら、睡眠薬を大量に飲み、密室の部屋で横になった。
ああ、ぼくは死んだのか?死ねたのか?
死後の世界なんてないと思ったら、今すぐに死にたいと思ったんだよな。
寿命まで生き抜くという目標すらどうでもよくなっていた。
もう、苦痛だった。
何やらしても無能で人格も悪く本当に最低な自分が大嫌いで、その自分に今まで裏切られてきたから、復讐してやろうと思ったから。
自分を〇ろしたい。
自分が憎かった。こんな自分が。
真っ白で何もない空間にいた。
突如、神様みたいな人が現れた。
白髪の長い髪に眼鏡をかけていて、白いローブを着ている。
「ぼくはやっとしねたのでしょうか?」
「そうだよ。君は練炭で自殺したんだね」
「でも、今、意識があるってことは、死後の世界はここですか?あったってことですか?」
「君がなぜ、自殺したのかを聞きたいな」
「それは、生きているのが嫌になったからです。自分の生活費すら稼げずに、普通に仕事すらできずにいることに耐えられなかった。みんなが働いて、社会に何かしら役に立っている。ミセスというミュージシャンや、霜降りというお笑いコンビとか。そんな大活躍している人を毎日、見ていて、むなしくなったんです。死にたくなった。ぼくは何もできてないのに、あいつらはいいな。あんなに大活躍して!って」
「なぜ、君は今までいた世界に生まれてきたと思う?」
「わかりません。もう二度と、あんな世界には生まれたくないです。本当なら、死後の世界なんて存在してほしくなかった。消滅したかったのに。もう、すべてに疲れた。感じ疲れた!」
「人生はくじ引きなんだよ。運だ。成功者になれるかも、どんな人生になるのかも運だ。君はたまたま統合失調症の運命であっただけで、本当なら漫画家の鳥山とか手塚とかに生まれる可能性もあったんだよ。君が生活費すら稼げない無力な弱い者に生まれたのは、君のせいではないんだ。そんな深刻になるな。単なるくじ引きで、へこんでどうするんだ?」
「とてもしんどかったんです。だから、死んでしまいました。すいません。命を無駄にしてしまって。もう手遅れでしょ?今更、戻れない。もう、ぼくは死んでしまったから。これからは、違う人生を歩みたいです!」
「人生は運だ。神様が決めるんじゃない。人間には自由意志というものもある。すべてたまたまの偶然なんだよ。たまたま生まれた国、たまたま持っていた才能、たまたまの出会い。すべてが偶然だ。君の人生は確かに弱者の立場かもしれない。しかし、弱者の立場の人生を歩んだからこそ、その者たちの心を知ることができたよね。それは大きな財産だよ。弱い立場の者を助けるためには、弱い者の気持ちを知らなくてはならない。これから多くの人を助けられる可能性が高まったんだ。現に、君は弱い者の人たちを助けれられるなら助けたいと思っているじゃないか。自分と同じ思いの人たちを助けてあげたいと。それが、君の人生で学んだすべてだよ!」
「単なるくじ引きの運ゲー人生なんて、もうまっぴらごめんです。二度と歩みたくない。運ゲーなんて全部クソでしょ?こんな世界作った人を恨みます!」
「君に見せたいものがある」
神様みたいなその人はいきなりテレビを空中からポンと出現させ、映像を流した。
そこには、「どんな人生になっても自分で選んだから、文句言いません!本望です!」
と言っている自分の姿があった。
「確かに、ほとんど運で占められるこの運ゲー物質界を作ったのは神様だ。しかし、そこに望んで生まれてきたのは君なんだ。君が選択したことなんだよ。だから、文句言われる筋合いはないな」
「ぼくが望んだことだった?しかし、なぜこんな苦痛だらけの世界に自ら望んで生まれたりしたんだろう。不思議だ」
「君はこの天国での生活に飽き飽きしてしまったからだ。なんでも思い通りの天国生活はチートを使ったゲームのようで、飽きてくる。楽しくなくなるんだよ」
「だからって、こんな苦痛にまみれた人生を歩まなくたって」
「どんな人生になるかは神様にもわからない。未来は常に未知だ。だからこそ、面白いんじゃ!君はどんな人生になるんだろうって、ワクワクしながら転生していく姿も映像として見れるが、見てみるか?」
ぼくは見た。その映像を。
確かに、ワクワクして、喜びにあふれている。
「苦しみは確かに物質界にはあふれている。しかし、苦しみがあるからこそ、喜びも感じられるのさ。天国生活では、苦しみがほとんどないので、退屈になり、それがやがて苦痛になり、みんながまたどんな人生になろうかワクワクしながら、この地球に人間としてまた生まれてくるんだ。もちろん、苦痛だらけの最低な人生、悲劇な人生になったとしても、それを覚悟して、認めて、そのうえで、それでもいいから、天国生活にいて、退屈しているよりはマシだからって人間にまた生まれる。だから、生まれることを選んだのも自分自身だ。半分は自己責任だ。まあ、もう半分は、この世界そのものを生み出した創造神だな!」
「ぼくは運が悪かった。こんな統合失調症の人生で。でも、ボクが鳥山や手塚に生まれる可能性もあったんだな。憧れの成功したあの人に、ぼくがもしかしたら生まれていたかも」
「でも、弱者人生には、それなりに得られるものもあるよ。そのひとつが、弱者への慈悲の気持ち。助けたい。救いたいという気持ちを持てるようになることだ。同じ状況を経験したからこそ、その弱者へと情が芽生えるんだよ。だから、苦痛もあったかもしれないが、得られるものもゼロではない。最後まで生きてみなさい。まだ、君は死んでない。自殺は成功しなかったんだよ!」
「また、ぼくにあの苦しみの毎日を過ごせというのか?何のために?」
「本当の敗者とは、人生を途中で投げ差すことだ。最後まで人生を生き抜いて、寿命という卒業証書を手に入れた人は、全員、勝ち組だ!勝者だ!どうせなら、勝者として、また君に会いたい!行ってらっしゃい。また、人生を最後まで生き抜いたものしかもらえないご褒美をたくさん用意して待っているからね!」
「おじさんー!」
ぼくはまたこの世に戻ってきた。
練炭で死ぬということは、失敗に終わり、ぼくは、病院で治療中から目が覚めた。
家族が泣いて、心配してたし、僕が目を覚ますと、これまた泣いて喜んでくれた。
「この人生にもとても意味があるんだな。無駄な人生なんてないんだ」
ぼくは大切なことをあのおじさん?神様から学んだ。
こうして、ぼくは最後までこの人生を寿命まで生きることを心に決めた。
もう、死のうとはしない。
また、苦しくて、死にたくなる時がいくらでもくるだろう。
「この底辺人生の本当の意義について知れたんだ。だから、喜んで、弱い立場を全うしたい。いつか、ボクが困っている人を助けるための心の土俵づくりなんだ」
最も弱い者のために生きたいと素直に思える僕がいる。
それは、この人生がくれたプレゼントだ。




