後日談・其の二:敗者の矜持と北天の斗星― 最上と安東の行く末
後日談(三部作)其の二になります
この話は前の話と変わって
この騒動を引き起こした人物
その人物が主人公進んでいきます
最後までご講読ください
安東の軍門に降った最上義守の隠居所。
そこには、戦後処理の証人である佐竹義昭と、存続を許された蘆名の姿があった。
「……最上の殿。心中、お察し申す。まさか安東が影武者を立てていたとはな。我らもまんまと騙されたわ」
蘆名が自嘲気味に呟くが、義守は静かに首を振った。
「……いや、蘆名殿。わしは知っておったよ。あの安東が、偽物であることをな」
「な……っ!?」
義昭と蘆名が息を呑む。義守は濁った瞳で庭を見つめ、忌まわしい記憶を吐き出すように続けた。
「あの影武者の家族を手にかけ、家を焼き、彼奴を戦場に引きずり出したのは……このわしだ。
復讐に燃える偽物を、わしの手のひらで踊らせ、安東家を内側から食い破る。そのはずだったのだ」
義守の拳が、膝の上で震える。
「わしは影武者を、その復讐心を御することばかりに目を奪われていた。……本物の当主?
あんな寝てばかりの小娘、見くびっておったわ。何一つできぬ無能な飾りだと、端から勘定に入れておらなんだ」
「……それが、最大の誤算だったというわけですか」
佐竹義昭が低く問う。義守は力なく笑った。
「そうだ。わしが影武者という『執念』に囚われている間に、あの本物の小娘は、わしの想像を絶する場所におった。
……何もしないことで、すべてを動かす。あの異質な覇気。わしのような孤独な狐が、何十年かけて積み上げた策も、
あの娘の『溜息』一つで吹き飛んでしまったわ」
義守は、蘆名と佐竹を交互に見つめ、一息ついた。
「北天の斗星とは、安東という個人ではなく、あの『安東家』という仕組みそのものを指していたのだな。
復讐に燃える影武者、計算の化物である小栗、そして……すべてを突き放して座る本物の女当主。
あの異質な塊こそが、安東なのだ。我らのような、古き武士には到底及ばぬわけだ」
その時、廊下を歩む力強い足音が響いた。
「殿! 義光殿が謁見を求めておられます!」
義守は居住まいを正した。
入ってきた嫡男・義光の瞳には、敗北の悔しさと、新しい時代への強い覚悟が宿っていた。
「父上。私は……最上は、これからどう歩むべきでしょうか」
義守は、息子を真っ直ぐに見つめた。
「……義光。人を計るなら、その背後にある『円』を見ろ。わしは影武者の執念に目を奪われ、その横にいた『本物』という怪物を忘れた。
……一人で全てを背負うな。蘆名殿や佐竹殿のように、共にこの奥州を支える『円』を広げろ。それが、わしが敗北から得た、お前への最後の贈り物だ」
安東という異質な斗星を見上げ、最上の親子、そして不遇を囲った大名たちは、新しい時代の「家の形」を模索し始めていた。
後日談其の二ご講読ありがとうございます
前回とはうってかわって
敵役(義守)側の視点で書いてみました
敵とは言えなぜこんな事をしたのか?
どうしてしなければならなかったのか?
本編で語られることのない義守の悩み・苦しみ
それが理解して頂けたのであれば
原作者として歓喜以上の感情はありません
其の三は明日更新予定です
よろしければ最後までご講読ください




