後日談・其の一:北の覇者たち― 奥州、その後
4月5日後日談(三部作)投稿です
安東家と関わってしまった結果
一番変わってしまった人物……
後日談其の一はそんな人達が主人公です
最上の動乱から数年。奥州には、束の間の、しかし確かな静寂が訪れていた。
安東領の外れ、柔らかな陽光が降り注ぐ田畑の一角。そこには、派手な陣羽織を脱ぎ捨て、泥にまみれて鍬を振るう一人の男の姿があった。
「――おい、義季! 農民のガキが呼んでるぞ。いつまで土をいじってやがる」
畦道に腰をかけ、暇そうに野良犬の頭を撫でていた南部が声をかけた。かつての北の覇者も、今は安東の隠れた「協力者」として、この奇妙な平和を楽しんでいるようだった。
鍬を止め、額の汗を拭った男――かつて安東の影武者として戦国を揺るがした男は、屈託のない笑みを浮かべた。
「わかった、すぐに行く。……待たせると、あいつら後でうるさいからな」
彼は「影武者」という重荷を下ろし、今は一人の男、義季としてこの地に根を張っていた。南部は去り際の彼の背中に、問いを投げかけた。
「ところで……どうしてその名を選んだんだ? 影武者なんて呼び名じゃなく、わざわざ『義季』なんて名を名乗り始めたのはよ」
義季は足を止め、少しだけ空を見上げた。
「それはな……。……ふふ、その内教えてやるさ」
そう言い残し、彼は村の子供たちの待つ方へと駆けていった。
一方、その頃。
伊達の居城・米沢城の修練場では、一人の少年が激しく木刀を振るっていた。後の独眼竜、伊達政宗である。
その様子を、父・輝宗が静かに見守っていた。輝宗の脳裏には、安東に敗れ、隠居を余儀なくされた義父・最上義守の姿があった。
「政宗よ。山形の祖父上(義守)がなぜ敗れたか、わかるか」
政宗は動きを止め、父を真っ直ぐに見つめた。
「……狐の策が、安東の誠に及ばなかったから、ですか?」
「それだけではない。祖父上はな、義光(伯父)に最上の未来を繋ぐため、あえて泥をすすり、安東に膝を突いたのだ。己の誇りよりも、子の代の存続を選んだ。あれもまた、武士の戦いよ」
輝宗は、安東がもたらした「戦わない平和」を見据える。それは伊達にとっても、牙を隠して耐えるべき忍耐の時代を意味していた。
「政宗。我らも今は、安東の作ったこの『静寂』を飲み込まねばならぬ。だが、ただ眠るのではない。次に備えよ。
祖父上が守り抜いた最上の血も、この伊達の血も、お前の中で一つになるのだからな」
父の言葉を噛みしめるように、政宗は再び木刀を構えた。
その幼き瞳に宿るのは、祖父から受け継いだ執念と、父から託された未来。
「……次は、負けんぞ。安東」
少年が放ったその一言は、安東の支配を終わらせ、いつか奥州を、日の本を統べるという誓いだった。
安東家がもたらした平和の裏側で、男たちはそれぞれの「親心」を胸に、次なる時代を形作ろうとしていた。
皆様後日談其の一ご講読ありがとうございます
安東家に関わってしまった結果
家族を壊されてしまった二大名
しかしその先にはきっと平和という「幸」が
生まれたのかもしれませんね
さて後日談其の二は明日更新予定です
よろしければ明日もご講読お願いします




