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【信長の野望】弱小大名・安東家。女当主と影武者で生き残る東北戦国記  作者: 西住


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第十四話 絶望の連鎖

第14話までお読みいただきありがとうございます。


ここまで積み上げてきた「勝利」が、

すべてこの瞬間の「絶望」を引き立てるためのフックでした。

歴史を知る人ほど、「そんな馬鹿な!」と叫びたくなるような包囲網が完成します。


蘆名軍の猛攻は、無慈悲な「氷の壁」の前に霧散した。


急ごしらえの拠点と侮った蘆名の将兵たちは、滑り落ちる足元と、容赦なく降り注ぐ矢の雨に、その戦力を削り取られていく。


「……退け! 一時撤退だ!」


蘆名の苦渋に満ちた号令が響く。だが、その背後から安東の追撃が容赦なく襲いかかった。


用人が計算し尽くしたタイミングでの反転攻勢。蘆名軍が、見るも無惨に敗走していく。


その光景を遠巻きに見ていた近隣の諸将に、激震が走った。


中でも、安東の力を測りかねていた常陸の佐竹家は、即座に動いた。


蘆名が、あの氷の城一つに敗れたという事実。安東はもはや我らの手に負える相手ではないと判断した佐竹は、即座に「臣従」を申し出た。


北の安東が、ついに奥州から関東の入り口までをその影響下に置いた瞬間だった。


「……終わったのね」


本陣で報告を受けた玲夢は、深く、長い溜息をついた。


しかし、その顔は手放しの喜びとは程遠い、複雑な表情だった。


「玲夢。何か考え事か?」


安東が声をかける。その声にも、どこか晴れない響きがある。


「いや……今回の動乱は、言うなればうちのバカ殿がふざけた手紙を送ったのが始まりだけど……。

南部ともあろうものが、事実の確認もせずにこれほどの大軍を動かすものなのかな、って」


「玲夢もそう思うか?」


「……ということは、貴方も?」


安東はその問いに、重々しく頷いて答えた。


「実は自分も気になっていた。とはいえ、家臣団の前で口にするわけにもいかなくてな……」


安東もまた、地図の一点を見つめたまま難しい表情を浮かべる。二人の間に、勝利の喧騒とは切り離された、奇妙な静寂が流れた。


「……とはいえ、これでこの動乱も終わり。戦いが終われば少しゆっくり出来るし、それから調べても遅くはないでしょう」


玲夢が自分に言い聞かせるように言葉を紡ぎ、ようやくわずかな笑みを浮かべた、その時だった。


「ほ、報告! 緊急事態です!!」


悲鳴のような報告と共に、伝令が転がり込んできた。


「越後より長尾、南より北条、それぞれ総力をもって進軍中! さらに、山形より最上義守の全軍がこちらへ向けて動き出しました!」


「……は?」


玲夢の笑顔が、今度こそ完全に凍りついた。


「何を……言っているの? 長尾と北条は不倶戴天の敵同士のはずよ。なぜ、同時に動くの?」


「わ、分かりません! ですが、三家は互いに背後を突く素振りも見せず、真っ直ぐに我が領地を目指しております!」


「……そんなバカな……!」


傍らにいた用人が、ガタガタと震え出した。


「最上と北条が密約を結ぶ確率はゼロではない。だが、そこに義に厚い長尾までが加わるなど、あり得ない……!」


安東の頭脳とも言うべき用人が、真っ青になり震えている。


その様子は、長く仕えている教育係の玲夢ですら、一度も見たことがない光景だった。


「計算が合わない……! 世界が狂ったのか!? 長尾は毘沙門天の化身ではなかったのか!? なぜ北条と手を取り合って、無名の我らを潰しに来る……!?」


用人は狂ったように地図を指でなぞるが、その震えは止まらない。


勝利の確信は、一瞬にして底なしの泥沼へと変わった。


その横で、安東は静かに天を仰いだ。


「……平和、短かったな」


最上が放った「悪意」の包囲網。


安東家を跡形もなく押し潰すための包囲は、


すでに完成していた。

最後まで読んでいただき感謝です。


ADHDの過集中を「最悪の状況を構築すること」に全振りした結果、

とんでもないラストになってしまいました。


この絶望的な展開にゾクッとした方は、

ぜひ【ブックマーク】や【評価】を。

それが安東家の生き残る唯一の「糧」になります!

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