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【24】

ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。



デュークハルトとゼノンが戻ると、野営地周辺ではちょっとした騒ぎとなった。


現在ダフネの森はデュークハルトの指示の下、立ち入りが禁止にされている。

にも拘らずダフネの森から少年と青年が出てきた。

そのうちの片方は、数時間前に空から白い雷を降らせた少年だ。

デュークハルトの正体を知らずとも騒ぎになるのも仕方ないと言えるだろう。

そんな中、周りにいた数人がデュークハルトを見て顔を引き攣らせ、こう呼び表した

――雷公、と。


さらに、森から出てきた青年が手に持った魔物の頭部も騒ぎの一因となった。

この辺りでは見ることのない珍し魔物の頭部に、冒険者達が騒ぐのは当たり前だった。





野営地・指揮本部の天幕内。

デュークハルトの帰還によりマーギスを除いた前回の会議出席者が集まっていた。

もちろんゼノンも面倒そうにしていたが強制参加だ。

トロールの集落での出来事と現状、マンティコアの特性などについてのデュークハルトが話すと参加者からは苦々しい声が上がる。

なんでそんな魔物がこんなところに…とでも言いたいのだろうが、誰も感情的に叫ばないだけでも十分理性的だ。



「帰りに偵察に出ていた冒険者達の物と思われる装備を発見したが、肝心の冒険者達は安否不明だ。新たに捜索部隊の編成し、森を捜索させる。並行して残りっているであろう魔物討伐も行う。この際だ、攻撃的な魔物の討伐は徹底的に行え」



現在、この場の全権限はデュークハルトが握っている。

その旨をハインリッヒ侯爵に伝えるため、デュークハルトは既に早馬を走らせていた。

援軍が到着するまでは指揮をカルラフォード大公の名の下に一時的に預かる、と。

デュークハルトの方が爵位が高く緊急事態とはいえ、本来ならある種の越権行為となるのだが、今回の場合は事前にハインリッヒ侯爵の方から許可が出ている。

デュークハルトが早馬を走らせたのはあくまでも報告のためであり、侯爵に許可を求めるためのものではなかった。

まぁ、例え許可がなくとも必要と判断すれば躊躇わないのがデュークハルトなのだが…。



「それ以外は先程指示した通りだ。引き続き警戒を緩めるな。何かあれば即座に報告を上げるように。以上だ」



何かあるかと問うが、誰も何も発言することはなかった。

それは異論がないということは勿論だが、デュークハルトの雰囲気に皆が呑まれていたというのもある。

そして何より紅騎士とゼノン以外の参加者の空気が原因だった。


大公と呼ばれる少年が到着して僅か数時間でのスピード決着。

ある者はデュークハルトに畏怖の視線を向け、ある者は畏敬の視線を向け、ある者は視線すら合わせようとせず、またある者は笑顔で目を輝かせている。

そしてある者は――頬を染め、デュークハルトを凝視していた。

とても高い熱量を宿して。



様々な視線が向けられる理由をデュークハルトは理解しているが誰も何も発言しないため、特に何も問題はないと決め、会議の終了を告げた。

デュークハルトが解散を宣言し天幕を後にすると、当然のようにリュノンが後を追う。

護衛をとして彼が付いて来たのだ。



「閣下、そろそろアルセイユの隊が到着する頃かと」


「そうだね。クルソンの七番隊が着いたら捜索は任せようかな」



デュークハルトは溜め息を吐くと「何日かかるかなぁ…」と零す。

美少年が憂い歩く様子はとても絵になるのか、周りの視線が集中している。



「いや、二日で終わらせよう」



デュークハルトの頭の中でシナリオが組み上げられていく。

捜索はクルソン・アルセイユが率いる七番隊を投入して徹底的に行い、討伐はリュノンとライオスの隊に任せる。

ハインリッヒ騎士団と冒険者はそこに組み込む者と野営地周辺に配備する者に分けよう。

捜索や討伐の合間を縫ってゼノンを勧誘。

森の一件がある程度の決着をみたらハインリッヒ騎士団に引き継ぎ、帰ろう。

ザルツ村にも寄らないといけないし、きっと領内の仕事も溜まっているだろうからこれが一番だとデュークハルトは決意する。

何よりデュークハルト自身が帰ることを強く望んでいた。

早く帰ってシェリスティーナの笑顔が見たい。

今も昔もデュークハルトを突き動かすのは、何より大切な妹への強い想いだった。





夕方前、野営地に炎翼騎士団の追加派遣されたクルソン率いる七番隊が到着。

天幕設営後に捜索と残りの魔物討伐に参加。



翌日、ハインリッヒ騎士団の援軍が到着し、森の捜索に加わった。

そしてこの日の昼過ぎ、生死不明の冒険者達だと思われる遺体が発見、埋葬された。



さらに翌日の朝、トロールの集落に赴くとゼノンが炎の魔術で集落を焼却した。

死体を何日も放置するとゾンビ化する恐れがあるための措置だ。

焼却時にちょっとしたトラブルもあったが、概ね予定通りに終わった。


昼過ぎには現場指揮をハインリッヒ騎士団のマルフォイに引継ぎ、派遣中の炎翼騎士団の指揮はラインフォルトに預けると、デュークハルトは帰路に着いた。

同行者は六番隊隊長のリュノンと六番隊所属の紅騎士ハンス。

そこに同行を承諾した冒険者のゼノンが加わり、一同は馬を駆りカルラフォード領を目指した。


行きのデュークハルトは馬に強化魔法をかけ、カルラフォード領からダフネの森までをノンストップ、一日で駆けた。

当然、宿屋に泊まるということもなく、休憩も最低限で。

対して帰りは被害状況の確認のためにデュークハルト自身がザルツ村に立ち寄ったものの、それ以外は途中の街に宿泊しながら余裕を持っての帰路となった。





カルラフォード大公領・領都カルダナ、領主邸。

帰邸してすぐシェリスティーナの顔を見たデュークハルトは、頭に手を置くとそっと撫でる。

頬に触れ存在を確認するように妹を腕に抱き上げ、デュークハルトは小さく息を吐いた。

少し疲労の色は見えるが、その顔には間違いなく極上の微笑みが浮かんでいた。

今まで外で見せていた微笑みとは異なる、デュークハルトの心からの本当の微笑みが。


その後、シェリスティーナへの土産話として今回のトロールの件を話して聞かせるのだが、さすがのデュークハルトも妹の反応までは予想できなかった。






これにて一応、ダフネの森の討伐は終了です。

次回からは長らくお休みだったシェリスティーナが戻ってきます。



時系列に。

≪≫…学園見学からの経過日数



 ≪当日≫シェリスとデューク、学園見学

     ↓

≪1日後≫侯爵が協力要請を出す

     ↓

≪2日後≫↓早馬

     ↓

≪3日後≫明け方、早馬がカルダナ到着

     朝、炎翼騎士団派遣・炎翼騎士団移動中

     ↓ (副団長、二番隊、六番隊)

     ↓

≪4日後≫↓【現場】(マルフォイが冒険者を偵察に出す)

     ↓

≪6日後≫【現場】朝、炎翼騎士団到着

     ↓【現場】ダフネの森へ偵察隊を出す(ハンス率いる)

     ↓【現場】夜、報告書を携えライトニングホーク飛ぶ

     ↓

≪7日後≫ 朝、領都カルダナにライトニングホーク到着

     ↓炎翼騎士団本部とデュークに報告が届く

     ↓昼、デュークが追加部隊を派遣

     ↓【現場】会議・再度の偵察案は却下

     ↓

≪8日後≫デューク、早朝に馬を駆りダフネの森を目指す

     ↓【現場】朝、副団長、追加部隊を知る

     ↓【現場】夕方、応援の冒険者達が到着

     ↓

≪9日後≫【現場】夜中、偵察隊(紅騎士)が帰還・報告

     ↓【現場】ラインフォルトの予想外の事態発覚

     ↓【現場】早朝、会議で事態の報告

     ↓【現場】デューク、到着&会議乱入

     ↓【現場】会議中にトロール氾濫発生

     ↓【現場】トロール討伐・デューク参戦

     ↓【現場】デュークとゼノン、ダフネの森へ

     ↓【現場】デュークとゼノン、トロールの集落発見

     ↓【現場】マンティコア発見&討伐

     ↓【現場】昼過ぎ、デュークとゼノンが森から帰還

     ↓【現場】会議&指示出し

     ↓【現場】七番隊・クルソン到着

     ↓【現場】捜索&残りの討伐開始

     ↓

≪10日後≫【現場】援軍到着&捜索参加

     ↓【現場】昼過ぎ、冒険者達とみられる遺体を発見&埋葬

     ↓【現場】夕方、捜索&討伐完了

     ↓

≪11日後≫【現場】朝、トロールの集落を焼却

     ↓【現場】昼過ぎ、マルフォイに引継ぎ

     ↓デューク帰途(同行はゼノン、リュノン、ハンス)

     ↓ザルツ村に寄り被害状況を確認

     ↓

     ↓

≪13日後≫夕方前、デューク帰邸

     ↓

     シェリス、デューク、ゼノン、応接室でお茶


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