【22】
ダフネの森に入って数時間、デュークハルトとゼノンは深部を目指し進んでいた。
「そう言えばゼノンは何歳なのかな?」
「あ?十八だが、どうかしたか?」
「うーん、妹の話し相手には少し年齢が上過ぎるかな」
「妹?大公様のか?」
その辺りを散歩するような気安さで会話をしているが、本人たちはこれでも警戒して歩いている。
一見、傍から見たら危険地帯をのんきに散歩しているような異様な光景だろうとも。
「何歳だか知らないが、俺に大公様より小さい子供の相手なんて出来る訳ないだろ」
「とても賢くて可愛い子だよ。それに優しい」
「へぇ、そうかそうか」
いきなり始まったデュークハルトの妹自慢にゼノンは適当に相槌を打った。
「本当に賢い子でね、今年三歳になったんだよ」
「そうか、そう…は?はぁぁっ!??」
相槌の途中でゼノンが大声量を上げ、隣を歩くデュークハルトを見やった。
予想外のことに思わず食って掛かる。
「おまっ、三歳って!子供じゃなくて幼児だろうが!」
「あの子は賢いから大丈夫だよ」
「大丈夫じゃねぇよ!」
「大丈夫だよ。あの子は“特別”なんだ。魔導士の私よりずっとね」
デュークハルトの“特別”という言葉にピクリと反応したゼノン。
どういう意味だと視線で問えば、デュークハルトの答えは簡潔だった。
「会ってみれば判るよ」
それだけ告げるとデュークハルトは森を進んでいく。
横で眉を顰めて歩くゼノンを見て、思い通りに事が運びそうだと喜びながら。
森に入ってかなりの距離を歩き太陽が真上に差し掛かった頃、目的地が見えてきた。
ダフネの森の深部、険しい山を背に築かれた集落。
集落といってもかなり粗末な造りで、建物も家と言うより倒壊寸前の荒ら家のような状態だ。
偵察ではトロール三百体余りが確認されていたはずだが、現在は恐ろしい程に静まり返っている。
森の外に溢れ出て来た数は、どう多く見積もっても上位種を含めて二百体程度だろう。
少なくともここに残りの幾らかのトロールはいるはずだ。
なのに何故、トロール達の拠点であるはずの集落がこんなに静かなのか。
普通なら偵察隊が誤った報告をしたと考えるのだが、デュークハルトには炎翼騎士団の彼等がそのような報告を上げるとは思えなかった。
二人が警戒しながら集落に近づくと、異様さはさらに増した。
周囲に漂うトロール独特の鼻を突く酷い生活臭。
集落の中には大量の赤黒い水溜まりと、トロールのものだろうと思われる巨大な手や足があちこちに散らばっているのが見える。
そして何かを引きずった赤黒い跡がいくつもあり、それは全て集落の奥へと続いているようだ。
明らかに何かがありましたと言わんばかりの現状にゼノンがデュークハルトを見やると、彼は静かに頷いた。
分かりやすく時系列に。
≪≫…学園見学からの経過日数
≪当日≫シェリスとデューク、学園見学
↓
≪1日後≫侯爵が協力要請を出す
↓
≪2日後≫↓早馬
↓
≪3日後≫明け方、早馬がカルダナ到着
朝、炎翼騎士団派遣・炎翼騎士団移動中
↓ (副団長、二番隊、六番隊)
↓
≪4日後≫↓【現場】(マルフォイが冒険者を偵察に出す)
↓
≪6日後≫【現場】朝、炎翼騎士団到着
↓【現場】ダフネの森へ偵察隊を出す(ハンス率いる)
↓【現場】夜、報告書を携えライトニングホーク飛ぶ
↓
≪7日後≫ 朝、領都カルダナにライトニングホーク到着
↓炎翼騎士団本部とデュークに報告が届く
↓昼、デュークが追加部隊を派遣
↓【現場】会議・再度の偵察案は却下
↓
≪8日後≫デューク、早朝に馬を駆りダフネの森を目指す
↓【現場】朝、副団長、追加部隊を知る
↓【現場】夕方、応援の冒険者達が到着
↓
≪9日後≫【現場】夜中、偵察隊(紅騎士)が帰還・報告
↓【現場】ラインフォルトの予想外の事態発覚
↓【現場】早朝、会議で事態の報告
↓【現場】デューク、到着&会議乱入
↓【現場】会議中にトロール氾濫発生
↓【現場】トロール討伐・デューク参戦
↓【現場】デュークとゼノン、ダフネの森へ
↓【現場】デュークとゼノン、トロールの集落発見
↓
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≪13日後≫夕方前、デューク帰邸
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シェリス、デューク、ゼノン、応接室でお茶




