【17】
学園見学より七日後。
ライトニングホークで報告書を送った翌日。
設営された指揮本部の天幕の中、現在までの情報共有が行われていた。
参加者はハインリッヒ騎士団からは責任者の第三部隊隊長、第五部隊と第八部隊の隊長。
炎翼騎士団からは副団長、そして二番隊と六番隊の隊長。
冒険者からは代表として男が二人と女冒険者の三人が参加していた。
偵察の冒険者達が帰らず身動きが取れない現状に、冒険者達からは再度偵察を出す案が浮上していた。
しかしこれはマルフォイによって却下される。
なぜなら昨日、ラインフォルトが独自に偵察隊を派遣していたからだ。
行き違いなどの可能性も考え、今はこれ以上の偵察は不要との判断からだった。
最初は納得のいかない様子だった冒険者達も不満はあれど異論を呑み込んだ。
しかしその日も、偵察に出た冒険者達が帰ることはなかった。
翌日、朝方に戻ってきたライトニングホークの指令書により、ラインフォルトは追加部隊の派遣を知る。
早ければ明日の昼にも到着するだろうとの内容に、ラインフォルトはデュークハルトの対応の速さを改めて感じた。
マルフォイに追加部隊のことを知らせると、彼からは安堵の言葉が漏れた。
夕方過ぎ、近隣の街より追加の冒険者達が到着。
マルフォイがそれぞれの配置などを指示し、野営の準備をしていく。
森から迷い出てくるトロールはいるがその程度なら特に問題なく、この日も前日と変わらず夜を迎えた。
そして日付も変わった深夜、眠りに就いていたラインフォルトは自分の天幕に近づく気配に目を覚ました。
気配の人物は天幕の入り口で止まると声を潜め、口を開いた。
「お休みのところ失礼します。副団長、ご報告が」
「入れ」
天幕の中へ促すと一言断りを入れ、紅騎士が滑り込んで来た。
今夜は六番隊隊長のリュノンが夜番の責任者として起きていたはずだ。
にも拘らず深夜にわざわざラインフォルトを起こすくらいなのだ、何かリュノンでは対応できないことがあったのだろう。
「…何があった?」
「報告いたします。先程、偵察隊が帰還しました」
「偵察隊とは紅騎士か?それとも冒険者達か?」
「我々の偵察隊です。消耗が激しいようで、治癒術用の天幕での休息と治療をリュノン隊長が指示したところです。報告をとのことで副団長を呼びにまいりました」
「そうか、わかった」
偵察隊が戻ったことに一先ず安堵し、紅騎士を連れて天幕を出た。
紅騎士の先導で六番隊の天幕を潜ると既にそこには二番隊隊長ライオスと六番隊リュノン、そして偵察隊を率いていたハンスが揃っていた。
「すまない、待たせたな。ハンス、偵察隊の皆は無事か?」
「はい。疲労の重い者はおりますが、全員無事に帰還しました」
「ご苦労だった。早速だが報告を聞こう」
「偵察結果ですが―――」
偵察隊全員が無事に帰還したことに安堵の息を吐くと、続くハンスの報告に目眩を覚えた。
ハインリッヒ騎士団が当初報告、予想されていた生息数を大幅に上回ったトロール達。
確認できただけで約三百体近くのトロールの群れ。
その三割近く――約百体余りが上位個体、ウォートロールであることを確認。
ダフネの森はあまり広くなく、そこにトロール種が約三百体とは明らかに異常事態である。
しかもそのうちの約百体が上位種だなど、もはやただの悪夢だ。
森の広さを考えれば今にも溢れそうな状態に、さらなる対策と早急な討伐を余儀なくされる。
そして先に森で偵察に入った冒険者達の物とみられる装備と大量の血痕の目撃も報告された。
たぶん冒険者達は――…。
次々と出てくる喜べない報告にラインフォルトは眉を顰める。
紅騎士にマルフォイを呼びに向かわせると、直ちに方針を決めなくてはと溜め息を吐いた。
気分転換に外に出れば、既に空は白み始めていた。
分かりやすく時系列に。
≪≫…学園見学からの経過日数
≪当日≫シェリスとデューク、学園見学
↓
≪1日後≫侯爵が協力要請を出す
↓
≪2日後≫↓早馬
↓
≪3日後≫明け方、早馬がカルダナ到着
朝、炎翼騎士団派遣・炎翼騎士団移動中
↓ (副団長、二番隊、六番隊)
↓
≪4日後≫↓【現場】(マルフォイが冒険者を偵察に出す)
↓
≪6日後≫【現場】朝、炎翼騎士団到着
↓【現場】ダフネの森へ偵察隊を出す(ハンス率いる)
↓【現場】夜、報告書を携えライトニングホーク飛ぶ
↓
≪7日後≫ 朝、領都カルダナにライトニングホーク到着
↓炎翼騎士団本部とデュークに報告が届く
↓昼、デュークが追加部隊を派遣
↓【現場】会議・再度の偵察案は却下
↓
≪8日後≫デューク、早朝に馬を駆りダフネの森を目指す
↓【現場】朝、副団長、追加部隊を知る
↓【現場】夕方、応援の冒険者達が到着
↓
≪9日後≫【現場】夜中、偵察隊(紅騎士)が帰還・報告
↓【現場】ラインフォルトの予想外の事態発覚
↓
↓
≪13日後≫夕方前、デューク帰邸
↓
シェリス、デューク、ゼノン、応接室でお茶




