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ある家の昔話。
とある貧しくも裕福でも無い家庭があった。
その家には夫婦が住んでおり、妻の父は魔王ルシアに仕える家臣だった。
だが、その夫婦は彼とは縁を切っていた。
彼女は、夫婦はヘルグラムの平和主義を好んでいたからだ。
魔力は強くはない。
だから平凡。
彼女には兄弟姉妹も沢山おり、家を出るのも簡単だった。
それがルシア死後直ぐの事、父は突然家を訪れた。
夫婦と父は無言だった。
「皆は元気ですか?」
「勿論だ」
娘の問いに、父は答える。
素っ気ない。
「何の用事ですか?」
「ルシア様を…子供を作れ」
父の最初の言葉を夫婦は聞き取れなかった。
「子供…ですか?」
夫婦には子供が居なかった。
勿論欲しい。
だが、どういう風の吹き回しか全く理解出来なかった。
「そこに座ってろ」
父は言うと、呪文を唱える。
夫婦は知識が無い為、何の呪文かわからない。
それは、転生しようとしてる者を呼び出す呪文。
本来時間がかかる転生を、ルシアを今すぐ転生させる為の呪文だった。
「子供は大切にしろ」
それだけ言うと、去っていった。
夫婦はルシネルと名をつけると、何も知らずに大層可愛がったのだった。




