過去の記憶。
「ヘルグラム様!」
「大丈夫ですか、ヘルグラム様!」
二人の家臣が魔王であるヘルグラムを心配する。
シェバルトとデリオルオだ。
デリオルオは敵を倒し、後からヘルグラムに駆け寄る。
直接的に、間接的に、色々な敵が魔王を狙う。
今一番大きな魔王を狙う勢力はルシア派だ。
ルシア派は小さな派閥をも自らに収め、勢力を大きくしている。
代表のルシアは魔族としての役割を望む。
そう、ヘルグラムの平和主義とは反対なのだ。
そして、ルシアの送り込む敵によって日々狙われている。
「ヘルグラム様、治安は我々にお任せ下さい」
「わかってるよ、アムネシア」
アムネシア、彼女は四人の信頼の置ける家臣の一人、女性だが治安部隊長だ。
信頼の置ける四家臣のもう一人、フィルズの恋人でもある。
「フィルズも言ってやって」
「そうですね。魔王様は心配しすぎです。我々を頼って下さい」
「やれやれ、フィルズはアムネシアの味方か」
「恋人ですから」
フィルズは笑顔で告げる。
端から見てもアムネシアとフィルズはラブラブだ。
鐘が鳴る。
夜を告げる鐘。
昼夜変わらず薄暗い為、決められた時間に定期的に鳴らすのだ。
「フィルズ、もう出ましょう。魔王様、お休みなさいませ」
「あぁ、お休み」
アムネシアとヘルグラムは立ち上がる。
だが、フィルズの様子がおかしい。
「魔、王、様…」
フィルズは膝をつき汗をかく。
だがその後スッと立ち上がると結晶の刃を無数に出す。
「魔王様!」
フィルズが結晶の刃を投げると同時に、アムネシアはヘルグラムに防御壁を張った。
「フィルズ、何をしてるの!」
「殺すんだ…」
アムネシアがフィルズを後ろから取り押さえると、フィルズはそう呟く。
それは、いつものフィルズではなかった。
フィルズは邪魔だとばかりにアムネシアを振り飛ばす。
「フィルズ…魔王様、洗脳されてます!」
アムネシアは叫ぶ。
ヘルグラムは立ち上がると洗脳を解こうとした。
だが、フィルズにかけた洗脳は解けない。
ヘルグラムと同等か格上の魔力を持った者がかけたのだ。
「フィルズ!」
アムネシアはフィルズの頬を叩く。
「あ…」
愛の力か、その途端洗脳が解けた。
フィルズは自分がした事に唖然とする。
「魔王様、すみません!」
フィルズは言うと、部屋を駆け出した。
次の日、フィルズは自ら死を選ぶ。
アムネシアは愕然とし、魔王やシェバルト達もいたたまれない。
アムネシアは酷く動揺し、泣き叫ぶ。
数日経った頃、アムネシアは家臣を退職する。
ヘルグラムにそれを止める権利は無い。
「私が居なくなればフィルズが死に、アムネシアが慟哭する事も無かったのだろうか…」
ヘルグラムは呟く。
「魔王にならなければ良かった…人間になれば良かった…」
「魔王様?」
ヘルグラムは立ち上がるとフラフラと謁見室から出て行く。
「魔王様!」
シェバルトはデリオルオと共に開けた部屋に駆けつける。
「すまない…」
それは転生魔法陣。
<できれば人間になりたいな…>
ヘルグラムは心の中で呟くと魂となって消えた。




