昏睡のヘンリーとキーレンの帰還。
「ヘンリー様、大丈夫ですか?」
村に着く直前、ヘンリーはうつらうつらしていた。
ユーフェミアに教えた後から、魔力の使いすぎか睡魔が襲うのだ。
そして、着いた直後に倒れた。
「ヘンリー!」
「ヘンリー様!」
「ヘンリー殿!」
皆ヘンリーに駆け寄る。
だが、ヘンリーが目を覚ます事は無かった。
「原因はわかりますか?」
隣町から医者を呼び、診察してもらう。
「強力な魔法、ですね。普通の医者に治す事は出来ません。申し訳ありません」
医者はそれだけ言うと、帰っていった。
「キーレン、どうにかならないか?」
ユーフェミアが問うが、キーレンは首を横に振る。
「それは自分で外せないのか?」
それ、とは腕輪の事。
だが、腕輪に魔力がほぼ吸収されてるため魔法を使えない。
「ねぇ、ユーフェミアが外す事は?」
「習っていない」
ユーフェミアはアンリエッタの提案にそう答えるしか無かった。
「じゃあ、壊したら?」
ある意味過激な意見である。
「いいですね!」
アンリエッタとキーレンは意見が一致する。
だが、ユーフェミアには自信が無かった。
「どうやって壊すつもりですか?」
「そうね…とりあえず石で?」
「壊すイメージでユーフェミアさんが壊すのは?」
二人はそれぞれ提案する。
アンリエッタは石を持ってくる。
「思いっきりやっちゃって下さい!」
危ないというのに、アンリエッタどころかキーレンもノリノリだ。
だが腕輪は特殊性金属で、傷一つつかなかった。
「駄目ね。ユーフェミア、やってみて!」
直接的に壊すのを諦めたアンリエッタはユーフェミアに促す。
「どんなイメージで壊せば?」
ユーフェミアは戸惑う。
「もしかしたら、鍵を開けるイメージかも?カチッと音がしてたし」
「鍵を開ける…」
ユーフェミアは集中する。
ヘンリーの好きなからくりを、歯車を。
「鍵よ、開け」
するとカチッと音がする。
歯車は回る。
「外…れた」
ユーフェミアは成功し、力が抜ける。
「お見事!流石ヘルグラム様の唯一の弟子なだけある!」
突然の拍手と共に男の声が聞こえる。
「あんた…誰だ?」
現れた男を見る。
だが、キーレンに見覚えは無かった。
「初めまして、キーレン様。オネラスと申します」
オネラスは言うと、お辞儀として右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出す。
「お迎えに上がりました、キーレン様。あなた様には魔王様より仕える様御命令が下っております」
突然の言葉にキーレンは動揺する。
現魔王と面識が無いのだ。
「理由は?」
「知りません」
「断る」
キーレンがそう告げるとニヤリとする。
「いいんですか?人間であるあなたの主を眠らせたのは私ですよ?」
それは脅しだった。
「一つ前の町で眠ってる彼に催眠をかけたんですよ。魔力を使うほど眠くなるってね。まさかこんなに早く効果があるとは思いませんでしたけど」
「解け」
低い声でキーレンは命令する。
「わかりました。ですが、あなた様が魔界に戻るなら、です」
怒っているキーレンに対して、物怖じせず告げた。
「わかった」
キーレンは背に腹は変えられない、と思い承諾した。
「では帰りましょう」
オネラスの言葉に力無く頷くと、キーレンは消える。
「そうそう、彼には一生眠っていただきたいものですね」
アンリエッタとユーフェミアにそう言うと、何もせずにオネラスは消えた。




