「戦場」
飛んでくる銃弾を少し大袈裟なくらいに避け、壁に身を潜める。弾道と壁の位置を考えれば、ここにいる限り当たることはまずないだろう。
さては、下から天井ごと爆破して強引に道を作ったな。
いくら人気のない場所だからって、こんな目立つことをするとは思っていなかった。もっとも、今さら文句を言っても仕方がない。
目には自信がある。そんな私が、砂煙の向こうにいる相手の姿を捉えられない。つまり、向こうは敵の位置も分からないまま、適当に撃ち続けているだけだ。
このまま部屋に隠れて、銃撃が止むのを待つ?
……いや、最善策を考えろ。
向こう側に階段はなかった。銃弾の着弾点は、僅かに天井に近い位置。そして、聞こえてくる足音は階段側からだけ。
なら……!
私は壁に身を寄せたまま、砂煙の中へと突っ込んだ。
爆発から、ここまで約五秒。まだ敵が三階まで上がってきている可能性は低い。それに、下の階から撃ち込まれた弾丸は、できるだけ水平に近い軌道を通っていた。
つまり、相手は三階にいる私を狙っていたわけじゃない。爆発で開けた穴から、こちらのいる階へ向けて銃を撃ち込んでいたのだ。
そして、私が慌てて部屋へ逃げ込んだところを、階段から上がってきた仲間に仕留めさせるつもりだったのだろう。
追い込まれたように見えて、主導権は私にある。
姿勢を低くしたまま、爆心地へと近づく。砂煙の向こうに、やはり床に開いた穴が見えた。私は慎重にその縁まで進み、下の様子を覗き込む。
二人の男がいた。
壁際に身を寄せながら、銃を高く構えて撃ち続けている。予想通り、二人とも銃口を水平に近づけることに必死で、遠くばかりを見ていた。
足元の砂煙に紛れている私の存在には、まるで気づいていない。
私は銃を構え、二人を撃った。
これで終わり。
そのまま穴から下の階へと飛び降りる。三階では今頃、私がどこへ消えたのか分からず、慌てふためいていることだろう。
一息ついて、再び考える。
銃を撃ち込んでいた人間が二人だけだったこと。この建物にいる敵が、思っていたほど多くない証拠だろう。さらに、爆発のあとも三階へ上がってくる人間はいなかった。少なくとも、ジャンプで3階に跳べる身体能力の持ち主は居ないらしい。
引く理由はない。
私は少し身を屈め、足に力を込めると、思い切り地面を蹴った。
身体が宙に浮き、視界が一気に上がる。一階分の高さなんて、私にとっては大した問題じゃない。何事もなかったかのように元の階へと降り立つと、服についた埃を軽く払った。
我ながら完璧。
前方では敵のざわめきが大きくなり、複数の足音が忙しなく行き交っている。爆発で舞い上がった砂煙も、そろそろ晴れ始めていた。
もうひと頑張りだ。




