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目覚め

 なんだか俺はやたらと口うるさく演出に口を出していた気がする。こだわりが強かったのだろうか。あるいは演出家気取りで気持ちよくなっていたのか。俺の性格を考えると後者だな、たぶん。

 それにしても、俺は過去に人形劇なんかやっていただろうか。あまり覚えていない。ごく短い期間だったのかもしれない。だから忘れているとか。どうだろう。まったく忘れるなんてあり得るのか? うーん、俺の性格だからなあ。ないとは言い切れない。

「っていうかさ、ふざけてる場合じゃないだろ。もう本番近いんだぜ。練習しないと」

 ユウが苛立った様子で言う。

「まあまあ。それじゃあみんな、一息ついたことだし、通し練習いこうか? ねえ、リーダー?」

 ハルタが笑って言った。俺はリーダーなのか。演出家だから当然か? 通し練習といっても台本なんて知らないけど、夢だからなんとかなるだろうか。

「分かった、じゃあ――」



 視界がまるごと変わった。

 清々しい開放感。

 狭苦しい小屋から俺は、山へと移動していた。

 見渡す限り、手入れされた様子もなく鬱蒼と生い茂っている木々だ。俺の前には、踏みしめられてできた様子の獣道が伸びている。

 夢だなあ、と俺は思う。気がついたらさっきとまったく違う場所にいる。夢あるあるだ。でも明晰夢だと、なんだか変な感じだ。

 とりあえず歩いてみる。

 かなり緩やかな斜面だ。登っているのか下りているのかも分からなくなるくらい。これは夢だからこそなのだろうか。それとも実際にある山なのか。

 地面を踏みしめる。バッタやらカマキリやらが草むらから飛び出してくる。俺が知っている虫しか出てこないのが、なんだか面白い。

 人形劇の続き、できればやりたかったな。山なんかいつでも登れるけど、中学生になって人形劇をやれる機会なんて二度とないもんな。

 そういえば、ここから滑り降りたらどうなるんだろう。熊に遭遇したらどうするんだろう。倒せるのか? それとも、夢の中でも死んだりするのかな? 死んだら現実ではどうなるんだろう。現実でも死ぬ? そんなわけないか。

 ちょっと試してみたい気もする。でも危ないかな。そういう都市伝説もあるし……。



 また視界が変わった。今度は見慣れた景色。自室のベッド。鮮明になった全身の感覚に、これは夢ではなく現実なのだと気づく。気づくまでには、少し時間が必要だった。

 初めて明晰夢なんて見た。

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