振られた気持ちはどうだい?
「何でぇぇぇ何でぇぇぇ何でぇだよぉぉぉぉ」
「何でも何もありませんよ」
「1+1=1だろぉぉぉぉ」
「2です」
↑↑↑小1の頃の俺。
第二話始まります。
二週間前(僕目線)
◇
二週間前の僕はその場で立ち尽くしていた。座っているのだから正確には立っていないが。
その時の僕はあと一つのピースで完成するジグソーパズルが倒れ全部台無しになった時と感覚的には似ていた。これまでの努力が全て台無しになった時の、あの感覚だ。僕のライフプランは全て台無しになってしまったのだ。
「お客さん、会計はまだですか」店員に言われ我に帰る。会計中に何やってんだ。後ろの客も待っているんだぞ、と言われてもいない悪口を言われたような気がして嫌な気持ちになる。たかが1000円程度の料理に10000円を出す。別に小銭がなかったわけでもない。が、何もかも新しくすれば、自分が変われると思っていた、のかもしれない。
◇
「だから、僕と結婚してください」
プロポーズは悪くなかった。むしろ、これ以上ないぐらいに成功した、と自分の中では思えるぐらいに。だからこそ、僕の脳内には「振られる」という言葉は入っていなかったのかもしれない。
「私は思うんだけどさ」
「まずは思ったことからいう感じのパターンね」
「それは置いておいて。私の中の恋愛では髪とシャンプーに似ていると思うんだよね」
「はあ」いきなり何を言い出すのかと僕は困惑する。
「髪が私で、シャンプーが男たち。つまりさ、髪っていう私を綺麗にするのが、シャンプーっていう男たち。でもさ、髪って汚くなるじゃん。だからまた新しいシャンプーで綺麗にする。これが私の中での恋愛だと思うんだよね」
「つまり何が言いたいんだい、君は」
「だから私が言いたいのは、シャンプーとは結婚できないってことなんだよ。でもね、君は意外と私の髪を綺麗にしてくれたいいシャンプーだったよ。ありがとう。このハンバーグのお代は払っておくよ。まぁ、自分のだしね」
そう言って僕を取り残し、つまりは僕の脳みそだけを取り残し、机を後にする彼女を僕は眺めることしかできなかった。こんな場合、どうするのが正解なのだろう。何か洒落たセリフを言って連れ戻すのが正解か。あるいはこういう運命なんだなと受け入れてまた次の人を探すのが正解か。
何が正解かもわからない中、僕は残ったハンバーグを食べることにした。
◇
怒鳴り合う声が聞こえて、僕は目を開ける。
目を開けるということは目を閉じていたんだな、と無意識ながらに考える。怒鳴りあっているのは、カウンターの所だろうか。何言っているのかはわからないが、怒鳴り合っているのはわかる。そういう状況だ。
僕は無意識に席を立ち、カウンターの近くまで行く。「考えるより先に体が動いていた」と言うが、まさにそんな状況だ。ここまで来ると、流石に何を言っているのかはわかる。
「おいおい、ふざけんじゃねーぞ。俺を何様だと思ってるんだよ」割と小柄な男が言う。サングラスを掛け、いかにもヤンキーみたいなネックレスをぶら下げている。
「そっちこそ、俺を何様だと思ってるんだよ」今度は大柄な男が言う。後ろ姿で顔は見えない。
「お前マジでやんのか、オラ」
「やるさ。やるよ。やるよ。」
そう言った後2人の怒鳴り声は聞こえなくなった。店を出たのだろう。店を出て何をするのかは、おおかた想像がついた。
僕はついでに会計に向かう。
今日あったことを日記に綴るとしたら、一ページやそこらでは書ききれないだろう。日記を書く習慣がなくて本当に良かった、と心から思っていた。




