オルフェウスの『過去』
【前回のあらすじ】
《レン》
ハルの葬儀も終わり、僕は欠けた夜を過ごした。
アレクシアは謝る必要は無いって言ってたけど、ハルの死は僕にも非がある。それだけの事だよ。
※途中、オルフェウスが語る視点になります。
ーーー俺はかつて極零帝国で過ごしていた。ーーー
鬼依と言うのは俺が極零帝国にて名乗っていた名だ。その時から俺は既に主君に忠誠を誓っていた。一騎討ちの末に負けたからな。
『敗者は勝者に従い、勝者は敗者を従える』
それが俺たち鬼人族の掟だ。
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「なんか、変わった掟だね」
「まあな。鬼人族は実力主義と言っても過言ではない。俺は主君と出会う前は誰にも負けた事は無かったから、それなりの地位はあった」
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それから、俺は修行の旅に出た。その時に辿り着いたのが、極零帝国だ。
極零帝国に着いたやいなや、俺は兵士達から怪しまれ、牢屋に送られた。魔王であると言うことを知られはしなかったが。
そして俺は尋問される事となった。旅の目的や身分を聞くためだ。
その時に俺の尋問を担当したのが、荊戟司の丹葉だ。思えば、あの最悪の出会いから長い付き合いが始まったのかもな。
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「ちょっと待って!」
オルフェウスが話している途中に、レンは止めた。
「どうした?」
「ちょっと立ちっぱなしだから脚が……」
「おっと、そういえばそうだったな」
そうして、オルフェウスとレンは森の開けた所で焚き火を焚き、その火を囲うように座った。
「それで、そのキョーゲキシって何?」
「荊戟司とは、極零帝国全体の軍や兵士、そして鍛冶師の育成・管理、及び武具や兵器の製作を重点的に務めている、言わばブラムの村とトルネシア王立騎士団が合わさって規模が国レベルになったようなものだ」
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その尋問の後、皇帝自ら俺を品定めするために、極零帝国は俺を無理やり皇帝の元へと連れ出した。その皇帝は、たったの12歳だった。
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「12歳!?12歳で国のトップに!?」
「先代の皇帝が若くして病死してしまったからな。それに代わるように即位したんだ」
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その皇帝の名は奏永。俺の知る中で、最長である70年間皇帝として国に尽くしていた。
品定めの末、奏永は俺の出入国を認め、なんと在留権までも俺に与えた。鬼依と言う名と家を与えられ、俺はそこで暮らすようになった。奏永の護衛役となる事を条件として。
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「でも、オルフェには元々仕えてる人がいるんじゃ……?」
「彼が15になる時にその事を伝えた。すると、彼は主君に会いたいと言ったのだ」
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奏永の頼みも断りきれず、俺は奏永を主君に会わせた。意外にも、彼と主君は考えが共通していた。そして、主君は俺に命じた。
「この若い皇帝から与えられた恩を忘れるな」と。
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「もしかしてオルフェって、ご主人から二君に仕えない人って思われてる?」
「まあ……、思われてないと言えば嘘になるな……。現に、奏永とは皇帝と護衛と言う関係ではあったが、それをあまり気にした事は無かった」
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そして彼が20を迎えた頃、彼は極零帝国にて極めて凄まじい技術か戦闘能力を持つ者を大勢集めた。無論、その中には俺もいた。何故集める必要があったのかと聞くと、彼はこう言った。
「極零帝国がいつ潰えるかは分からぬ。だが、既に余の代で12となった。内部は一先ずこれと言う問題はないが、外部からの干渉には未だ手薄だ。そこで余は、信ずるに値する者を4人選び、神将の名を与える事とする」と。
これが、後の歴史に伝わる『極零五神将』の始まりだ。
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「極零五神将って?」
「……そうか。トルネシアでは伝わっていないのか……」
オルフェウスは少し残念そうに言った。
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続けて彼はこう言った。
「神将とは、神の如し才を持つ者の事だ」と。
俺はそんな言葉を聞いたことはない。後々分かったが、彼の造語だった。
奏永は、神将に俺と丹葉を選ぶ事は決まっていたらしい。理由を聞くと、俺を選んだのは人並み外れた戦闘技術を持ってるかららしく、丹葉を選んだのは当時最高峰の鍛冶師と呼ばれていたからだとか。
問題は残りの2人だ。俺は極零に住み着いて日が浅く、丹葉もツテがないと言って悩んだ。だか、奏永は既に3人目を決めていた。
朱華だ。朱華は弓の扱いと暗殺技術の達人であり、奏永が裏で率いている暗殺部隊の隊長だ。頼み込んだところ、早々に受け入れてくれた。俺との関係を築くのは難しかっただろうが。
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「オルフェが鬼人族だから?」
「それもあると思うが、一番は、俺が部外者だったからだろう」
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そして最後の1人だ。最後の1人に関しては奏永ですらも当てがいなかった。ある時、朱華がある噂を聞きつけた。永若剣人と呼ばれる剣士がいると。
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「エージャク……ケン、ジン?なんか読むのが難しそうな二つ名だなぁ……」
「分かりやすく言うと、永遠に若いままの剣士と言うことだ。噂では、8代皇帝の楓殿の時から若いままだと言われていたな」
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奏永はその者を一目見ようと宮殿に招いた。そして、その者と俺を戦わせ、実力を高く評価して神将の名を与えた。その永若剣人こそ、俺の好敵手『だった』泉稜だ。
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「泉稜……。でも、だったってどういう事?」
そう聞くと、オルフェウスの表情は曇った。
「それは……。とてもとは言えないが、語れない事が多く起こったのだ。それがあって以来、泉稜とは会っていない」
「それ以来会っていない……?まさか、その永若剣人って言うのは……」
「……何かに気がついたのか?」
「うん。もしかして永若剣人って、何千年経っても死ねない呪いみたいなのがあるって事?」
そう言った途端、オルフェウスは真っ直ぐにレンを見つめ、
「……そうだ」と言った。
「と言うことは、その泉稜って人もオルフェと同じで、仲間は年をとって死んでいって自分だけ若いまま生きてるっていう悲しい思いをしたんじゃ……」
「その方が良かったんだがな」
オルフェウスは何だか意味ありげに言いながらその場を立ち去ろうとした。
「一先ず、今日はここまでにしよう。続きは、また別の機会だ」
「そっか。なら、また会えるって事だよね。次は僕が勝つからね!」
すると、オルフェウスは少し笑って、
「フッ、それは表彰式でも言ってただろう?」と言った。
「あれ?そうだったっけ?アハハ……。まあ、それはそれとして、オルフェからもアイリスの事、何か分かったら教えて?」
「ああ、分かった。なるべく全国に部下を手配してアイリスの動向を探らせる」
「頼んだよ……!僕も打てる手は全部打つから」
そう交わしながら、オルフェウスとレンはお互いの目を見ながらうなずき、それぞれでその場所を離れた。
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