全てが落ち着いた後に
【前回のあらすじ】
〈レイ〉
クリシスは無事で、レンとセトも聞いたところでは大丈夫そうだった。けど、アレクシアはかなり精神的にヤバい事になってた。
そりゃ、自分の手で知らねぇ間に魔物をぶっ殺してたんだから、アレクシアみてぇな優しい奴にとっちゃ地獄みてぇな現実だぜ。
翌日、アレクシアの提案でハルの葬儀はレン、レイ、セト、アレクシア、クリシス、そしてトルネシア王のみで行われる事になった。ネルケディラ女王の手紙を読んで急いで駆けつけたと言う。
神父が説教を唱えようとしたが、アレクシアは、
「エルフでは葬儀の際は静かに祈りを捧げるんです。死した者の魂が、無事に森へと還れるように……」
と言い、祈りを捧げた。レン達もそれを見て祈りを捧げた。
そして、ハルの棺はネルケディラ王都から少し近い所にある静寂の森に埋葬された。その時にハルが埋葬された場所は、生前にハルが好んでいた赤いガーベラで埋め尽くされていた。
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その夜、トルネシア王はネルケディラ女王に呼ばれて城に入っていき、セトとレイは宿で今までの疲れを癒すように眠りにつき、レンは、1人夜の王都を歩いていた。修繕作業が進められている闘技場を見て、レンはある事を思いふけっている。もし自分が仇敵ではなく、仲間を取っていたらどうなっていたのだろうと。あの時に思いとどまっていたらと。レンはその事がずっと頭から離れられない。
すると、隣にアレクシアが座ってきた。
「隣……、いいですか?」
「……いいよ。1人じゃどうも落ち着かないし」
レンとアレクシアは、しばらく闘技場を見ていたが、アレクシアが口を開いた。
「ボク、今ならレンさんがアイリスをなにが何でも倒そうとした理由が、少し分かる気がするんです。長い間一緒にいた人を理不尽に殺されて、その殺した張本人はなんの悪気も無く平然としていて、挙げ句の果てにはその張本人が、自分の殺した相手を侮辱して……」
レンは黙ってそれを聞いていたが、突然立ち上がると、アレクシアに頭を下げた。
「アレクシア……、ごめん!僕があの時無理してアイリスを倒そうとしなかったら、今ごろハルは生きていたのに……」
アレクシアは突然の事で驚いたが、すぐに微笑んでレンを見つめて、
「レンさんが謝る必要なんて無いですよ。それに、殺されたからって殺した張本人とは違う人を憎むなんて、お門違いですから」
と言った。レンは顔を上げると、一瞬だけアレクシアの表情が師匠のアンネロッテに見え、一粒の涙を流した。
「レンさん……?どうして泣いて?」
「え?あっ、ホントだ」
アレクシアに言われて、レンは涙を拭った。
「アレクシアの顔が、少し師匠に似ていたもんだから……」
そう言いながら、レンは笑っている。アレクシアには、それが作り笑いのように見えた。
「そ、そうだ!気分転換がてら、少し王都の外に出ようかな〜……。また明日ね、アレクシア!」
レンはまるでその場から逃げるように離れていった。
アレクシアは少しレンの事を心配したが、明日の事も考えなければいけないので、宿に戻っていった。
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レンは王都から出ようと正門の近くに来たが、その近くでオルフェウスが待っていた。
「オルフェ?もう帰ったもんだと思って……」
レンが話しかけると、オルフェウスはレンの方を向いて、
「話しておかなければならない事があってな。少しついて来てくれないか?」
と言った。
レンはオルフェウスについて行き、着いた場所は静寂の森だった。レンは何故オルフェウスがこの場所を選んだのか分からなかった。
「ねぇ、オルフェ。なんでこんな所まで?」
「どうしても他の者には聞かれたくない事なんだ。レン、今から言う話は絶対に他言無用だ。もし喋ってしまったら……、命は無い」
その事を聞き、レンは息を飲んだ。それ程にまで重要な事なのだろう。心して聞かなければならないと思い、レンはじっとオルフェウスを険しい表情で見つめた。すると……。
「冗談だ。命は保証する」
オルフェウスはそう言って少し笑みを浮かべた。レンは肩の荷がほんの少し下りた。
「じゃあ、そこまで言う必要ないじゃん……」
「すまなかった。では、話すとしよう。他言無用というのは本当だ」
そして、オルフェウスはレンにだけ、重要な事を伝えた。レンは驚いたが、それでも絶対に仲間には伝えないというのを約束した。
「……分かった。にわかには信じられないけど……、受け入れて僕の心の中にしまい込んでおかないと……」
「ああ。その方がこれからの為だ。頼んだぞ」
そう言ってオルフェウスはレンから離れようとしたが、レンはオルフェウスを引き止めた。
「どうした?今俺が話した内容で説明してほしい事でも?」
「いや、その話はもういいんだ。実は、僕が決勝で気を失ってる時に、オルフェの過去の記憶のようなものを見たんだ」
その事を聞き、オルフェウスは目を見開いた。
「俺の過去?何を見たのだ?いつの時代の事だ!?」
オルフェウスは今までにない動揺した表情でレンに詰め寄った。
「僕だって分からないよ……。だけど、その記憶の中で、オルフェはキエって呼ばれてて……」
レンは慌ててそう言ったが、その事を聞くやいなや、オルフェウスはレンから少し離れた。
「そうか……。やはりあの時の事が……」
「あの時の事……?」
「恐らく、レンの見た俺の記憶と言うのは、映写によって見たものだろう」
「映写?」
レンにとってはそれは聞き馴染みのない魔法だった。それもそのはずその魔法は……。
「ああ。映写は意図して扱える魔法ではない。恐らく、俺とレンのお互いの強大な力がぶつかり合って、勝手に発動したんだろうな」
「勝手に発動する魔法……」
「まあ、魔法というより、現象だな」
そう言いながら、オルフェウスは木々から漏れ出る月明かりを見上げた。
「そうなってしまったのだったら、俺の過去もついでに話しておこう。別にこの事は他の者に言っても言わなくても構わん」
【ちょっぴり用語解説】
〈静寂の森〉
かつてこの森に住んでいたエルフの加護により、魔物どころか人間すら寄り付かない静かな森。
〈映写〉
対象のかつての記憶を見る事ができる魔法。しかし、任意で扱えるものではない為、魔法というよりも現象に近い。
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