騒動の後
【前回のあらすじ】
《レイ》
ハァ……、もうため息しか出ねぇよ。
ハルが死んで、アレクシアが暴走して、クリシスとセトは重傷。
オルフェウスって奴がいなかったら、もっと悲惨だったかもな。
アレクシアが目を覚ますと、そこは宿のベッドだった。身体に力が入らず、ずっと天井を見続けている。
すると、近くにいたレイが、アレクシアの目覚めを確認すると、アレクシアに近づいた。
「目ぇ覚めたか?」
「レイさん……。ボク、あれからどうなりました?」
「そう言うのはあんまし思い出すもんじゃねぇよ。じゃ、オレはセトとクリシスの具合見に行ってくら」
そう言い残してレイは部屋を出ていった。
ーーーーーーーーーー
レイは、セトとクリシスの様子を見に、ネルケディラ城へと向かった。実は、レイがネルケディラ城に来るのはこれが初めてなのだ。
「こんなんが初めてなん、ぜってぇ不吉だよな……」
そう呟きながら、レイはネルケディラ城の正門までやって来た。正門では2人の兵士が行く手を守っている。
「悪いが、今は城への入場を制限している。要件次第では入場を認めよう」
「クリシス・フォン・グラヴィエッタに用がある。後、オレには許可証があんだけどね」
そう言って、レイは兵士に菱形のメダルを見せた。クリシスがオルフェウス経由で渡した、ネルケディラ城特別入場許可証だ。それを見せた瞬間、兵士は扉を開けてレイを通した。
「失礼。どうやら特別な事情があるようだな。入れ」
レイは城の中に入った。ネルケディラ城の中はトルネシア城と違い、ステンドグラスが至るところに張ってある。白系色をベースとした明るめの内装も、黒系色といった少し暗めな色を使ったトルネシア城の内装と全然違う。
レイが城の中を見渡していると、1人の青年がレイに近づいてきた。
「あんたがクリシス団長の言ってたレイって人?」
「おう。そういうお前は?」
あまりにも敬意のない言い方で聞いたので、一部の兵士はレイに詰め寄った。
「きっ、君!!いくら英雄とはいえ、この人は……!!」
「そういうのいいから。それに、俺はそういったのが嫌いだし」
「し、しかし……」
兵士は何か言いたそうだったが、最後には言葉に詰まった。
「気にしないでいいさ。いっつもこんなだから。俺はサイモン・グレイツェル。ネルケディラ騎士団副団長の1人だ。よろしく」
「レイ・ディアデマートゥスだ。今はただのレイでいいぜ」
そう言いながら、お互いに握手を交わした。
「団長に用があって来たんだろ?だったら、俺についてきて。団長のところまで案内するから」
そう言って、レイはサイモンについて行った。2人はある1室の前に着いた。
「団長?レイ・ディアデマートゥス殿が来ましたよ」
サイモンはドアをノックしながらそう言うと、ドアの中から「通してくれ」という声がした。サイモンはドアを開けて、レイを中に入れた。
部屋の中ではクリシスがベッドから身体を起こしていた。
「思ったよか元気そうじゃねぇかよ。心配して損したぜ」
「まだ絞められた首の痛みはあるがな。そのせいで食道だったりが潰れて、今はスープしか飲めないが」
そう言いながら、クリシスはレイの方を向いたが、レイはクリシスの部屋を見渡している。
「何をしているんだ?」
「お前の部屋ってこうなってんだな〜って。なんかおもれぇもん無ぇかな……」
「私はこれでも近衛兵になった身だ。近衛兵の部屋に面白みがあると思うか?」
クリシスは少し微笑みながらレイに言った。
「しっかし、あのオルフェウスって奴、妙だよな……。安全な場所に移したって言ってんのに城の中に入れんだからな」
「私も驚いたさ。まさか城の中に移すなんてな。おかげで軍医からの処置を受けられた。だが……」
「だが……?」
クリシスは俯いて考え始めた。
「何故、仮にも魔王と呼ばれている存在がこのネルケディラ城に簡単に入れてしまうんだ……?」
「……分かんね」
レイはそう呟きながら、勝手にクリシスの仕事机の椅子に座った。
「お前の椅子、かってえな……。クッションはねぇのかよ?」
「別にあるんだ。後、勝手に座るな。お前じゃなきゃ牢屋行きだぞ」
「へいへい、すいませんでしたーっと」
そう言いながらレイは椅子から立ち上がり、部屋を出ようとした。ドアの取っ手に手をかけた時に、何かを思い出したようにクリシスに聞いた。
「そうだ。そういやセトは何処行った?レンも見かけねぇけど」
「ああ。セトならレンと一緒にいるぞ。セトの事だから真っ先にレンの心配をすると思って、兵舎の2人部屋に入れるように頼んだ」
「そうかい、それなら安心かもな。んじゃ、オレはアレクシアの所に戻ってら。身体、大事にな」
レイはドアを開けて、手を振りながら部屋を出ていった。クリシスはため息をつきながら再びベッドに横になった。
「私もレイのように丈夫だったらな……」
メインホールの階段から降りてくるレイを見て、1人の兵士がレイに近づいてこう言った。
「もう、お話は済んだのですか?」
「あぁ。こっちも準備してぇ事があるし、今日は一先ずな」
そう言って、レイは門番が開けた扉から出ていった。
ーーーーーーーーーー
「さてと、これからどうすっかね〜…」
レイは城から出て、このままレンとセトのいる兵舎に行こうか、アレクシアの様子をまた見に行こうか、どちらにしようか悩んでいたが……。
「まあ、レンとセトの事なら大丈夫だろ。飯食ったらアレクシアの所に戻るか」
と言うわけで、レイはレストランでたくさん食べてから宿に戻ってきた。
「ふぅ……。さすがにパスタ10皿とピザ5枚は食べ過ぎたか……?」
そんな独り言を呟きながら宿の廊下を歩いていると、
「キャアアアアァァァーー!!」
アレクシアがいる部屋からアレクシアの悲鳴が聞こえてきた。レイは何事かと思い、急いで部屋に駆け込んでドアを開けた。
「おい!アレクシア!!何があった!?」
レイはドアを開けてすぐに大声で言ったが、その時に見た光景にハッとした。
アレクシアが、血塗れになっている自分の手を見てしまったのだ。さすがのレイも、すぐに感づいた。アレクシアはその手を見て悲鳴をあげたのだと。
すると、レイに気づいたアレクシアは、すぐに布団で自分の手を隠してレイの方を向いた。アレクシアの表情はかなり精神的に辛そうで、目からは大粒の涙が溢れている。
「ハァ、ハァ……。レイ……さん……?ボク……まさか、殺して……」
かなり喉が絞まっているような声で聞いてくるので、レイは見ていられなかった。
「こりゃ見てられねぇや。何とかして落ち着かせねぇとな……。こんな時にハルの葬式の事話そうもんなら、アレクシア自殺しそうだぜ……」
その日中、レイはアレクシアの気持ちを落ち着かせる事に費やした。今にも精神が壊れそうになっているアレクシアの表情を見てしまわないように……。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
何でアレクシアがボロボロになってるかって?魔物の命をたくさん奪ってしまったからだよ。泣ける話だよね。
ちなみにep.5でアレクシアは戦っていますが、その際はその戦った魔物の命は奪ってません。あくまで護身の戦いです。




