魔王の猛威
【前回のあらすじ】
《セト》
アイリスに向かって極火炎を放った。
当たったはずなんだ……。なのに……!
まるで何事も無かったかのように平然としているアイリスに対してセトは絶句し、無理やり身体を起こしながらアイリスに質問した。
「お前……、なんで生きてんだよ……!!」
アイリスは、セトの質問に答えるように、全身に氷のバリアを張った。
「ボクは魔王だからね。一瞬でバリアを張るなんて造作もないさ。まあ、服はダメにしたけど」
そう言いながら、アイリスは何処からか懐中時計を取り出し、時間を確認した。
「後……、2分くらいか。便利だよね〜、この魔道具さ。時計って言ってたっけ?」
レンとセトはその発言に違和感を覚えた。なぜなら、トルネシア王国領に住んでいた2人にとっては、時計と言えば日時計くらいしかなく、時間に対しても、教会の鐘だけが頼りだったからである。
「時計……?あんな小さいのが時計とかふざけてんのか?」
「棒と太陽があれば時計なんていくらでもできるから、あんなになってもおかしくないんじゃない?」
すると、レイがよろけながらレン達に近づいてきた。
「ありゃ、極零帝国で最近出回りだした時計だぜ……」
「「はっ!?」」
「それまでは漏刻とかだったり、帝都では水運儀象台だったりなんだけどな。それをあいつが持ってるって事は……、あいつ極零でもなんか良くねぇ事してるってわけか。クソったれがよ……」
レイはそう言った後に舌打ちした。
アイリスはじっと時計を見つめている。そして、
「そろそろかな……」
アイリスはそう言って、闘技場の壁の上に飛び乗った。すると、上空から無数の氷の矢が降ってきた。氷の矢はレン達に降り注いできた。
「うおっ!?何なんだよ一体!」
「避けるか防いだりしないとマズいなこりゃ!」
レンとセトは少し慌てたが、突然レン達の身体の周りに光のバリアが現れた。クリシスがレン達に光殻を使ったのだ。
「突然の事だから耐久力はいつもとは低いぞ……!なるべく食らわないようにしてくれ……!」
クリシスは膝立ちしながらレン達に言った。アイリスは腹を立ててクリシスを思いっきり蹴り飛ばした。そして、クリシスの首元を掴み、空に向かって持ち上げた。
「おい……、やめろ!!ハルだけじゃなく、クリシスまで殺す気か!!」
レンは大声でアイリスに言ったが、アイリスは逆に嘲笑しながら、
「逃がす気だったら、こんな事するのかな?」
と言った。レンはクリシスを助けようとアイリスに向かって突撃しようとしたが、突然前から何者かの攻撃で突き飛ばされ、一撃で光殻が壊れてしまった。
なんと、アイリスの後ろから大量のスペクターが現れたのだ。
「おいおい、勘弁してくれよ……。1体でもキツかったってのに……!」
セトはため息をつきながらそう言った。
「おや、そうだったのかい?まあ、どうでもいいけどさ」
アイリスは素っ気なく言った。そして、スペクターはセト達に一斉に襲いかかってきた。
「アイ……リス……」
クリシスは首を絞められながら、声を振り絞った。
「私を……殺せば……、私の部下達が……、貴様を……葬るぞ……」
アイリスはその言葉を聞いて、あまり関心は持たなかった。
「ふーん、そう」
そう言いながら、アイリスはクリシスを上空へと蹴り上げた。同時に、氷の矢はクリシスへと飛んでいった。
微笑みながらクリシスを見るアイリスに、アレクシアは居てもたってもいられなくなり、力任せに後ろから攻撃しようとしたが、アイリスはアレクシアの方向を見ずに攻撃を避け、そのままアレクシアを掴んで地面に叩きつけ、アレクシアが吐血する程に強く腹部を踏みつけた。
「もうそんな力任せの攻撃は通用しないよ?」
余裕を見せたアイリスだったが、次の瞬間、オルフェウスがアイリスを真正面から殴り倒し、上空へと跳び上がってクリシスを抱えて降りてきた。
「息はできるか?」
「……ああ。なんとか……」
「そうか」
オルフェウスはすぐさまクリシスを控室へと運び込み、ベンチの上に寝かせた。
「まずはこの状況を何とかする。お前の治療はそれからだ」
「大した怪我はない……。これでも魔王と戦った身だ……」
オルフェウスはそれを聞くと、安心したように控室を出ていった。
オルフェウスはアイリスに立ちはだかり、アイリスに剣を向けた。アイリスは起き上がりざまにオルフェウスに言った。
「ちょっと。その剣は何?すぐに下ろしなさい」
「断る。最早俺は貴様に対して慈悲など与えるつもりはない。これはその為の行為だ」
「は、ははは……。何を言ってるのかな?それに、勝手にボクを殺しでもしたら、『あのお方』は君であろうとも容赦なく罰を与えると思うよ……?」
アイリスは思わず苦笑した。しかし、オルフェウスは逆に、にやりと笑みを浮かべた。
「既に主君からの許しは得た!!むしろ主君は、俺は貴様への生殺与奪の権を主君から頂いている!!」
その言葉を聞いた瞬間、アイリスの表情から一切の笑顔が消えた。
「……!!」
「貴様が主君の理想に害をなす事を行ったか進めた場合、魔皇帝への反逆行為と見なして貴様を粛清する為に!」
すると、アイリスは大きくため息をついて、鎌を構えた。
「……ならさっさと殺してごらん。できるものならね」
そう言いながら、アイリスはオルフェウスに素早く斬りかかった。
【ちょっぴり用語解説】
〈光殻〉
対象に光のバリアを張る基本的な防御魔法。
即座に放てるが、その分耐久力は弱くなり、耐久力を上げると、放つまで時間がかかるといった魔法におけるパワーバランスを学べるという面でも非常に実用的。
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