魔王アイリス、顕現
【前回のあらすじ】
《レン》
トロフィーの授与は終わり、武闘大会は幕を下ろすはずだった。けど、アイリスと名乗る魔王が現れて、それは一変した。だけど、あいつの攻撃……、どこかで見たような……?
アイリスが名乗ると、会場は一気に先ほどのお祭り騒ぎから一変して観客からのざわめきが聞こえた。アイリスが魔王であるという事に怯えて逃げ出した人までいる程だった。
すると、審判がアイリスに近づいた。
「ちょっと!魔王だか何だか知らないけど、下手な冗談を言って会場を困惑させるのは止めてください!!」
審判はアイリスに恐れることなくそう警告した。
「バカな人間だ……」
オルフェウスは小さくそう呟いた。
アイリスはため息をついたが次の瞬間、
「ごめん……、ちょっと邪魔だから死んで?」
アイリスは氷の矢を至近距離で審判の心臓目掛けて放ち、審判を射殺した。
会場はしばらく静けさが広がったが、
「お…、おい!あいつ審判を殺しやがった!!逃げろーー!!俺まで死にたくねぇよぉーー!!」
1人の観客がそう叫ぶと、観客は一斉に闘技場から逃げ出した。
そうして、闘技場は静かになった。
「虫けらがいなくなってくれたおかげで静かになった。これで、ようやく君たちの相手ができる……」
アイリスは不敵な笑みを浮かべながらレン達を見た。
「審判を殺す事は無かっただろう!!何故殺した!!」
オルフェウスは声を荒げてアイリスに聞いたが、すぐさまアイリスは何気ない顔でこう答えた。
「なんでって……邪魔だったからに決まってるでしょ」
「邪魔だったから……殺した!?」
レンは、レグルスよりも人間を軽く見ているようなアイリスの発言に思わず絶句した。
「君だって、目の前に障害物とかあったらどかすでしょ?それと同じだよ」
アイリスは続けざまにそう言い、オルフェウスは呆れたため息をついた。
「貴様のその腐りきった価値観は変わらんな……!」
「みんなが綺麗すぎるんだよ。レグルスだって、ベスティアの支配を狙ってる割には、反吐が出るほど真面目なやり方でやってたし」
アイリスのその一言に、セトは言葉を失った。
(レグルスのやり方が……真面目……?村を焼き討ちにして父さん達を殺そうとしたことが……、真面目だって!?)
それと同時に、セトはアイリスに対して沸々と怒りが湧き出してきた。
「たかが村1個、一瞬で更地にしてしまえばいいのに……。非効率だよね〜、レグルスってば」
アイリスがその一言を放った瞬間、
「……っ!この野郎ォォ!!」
セトは怒りのままにナイフを抜いてアイリスに突撃した。アイリスはフフンと笑いながら、セトの攻撃を躱した。
「なんかマズい事でも言っちゃった?」
「ああ!俺が死にかけるよりもマズい事だよ!!」
セトはそう言いながらアイリスに連続で攻撃を仕掛けたが、全てアイリスに避けられてしまう。
(ちくしょう!!全部避けられやがる……!なら、[ラピッド・ダンス]で一気に片付けてやる!!)
そう思いながら、セトはアイリスから離れてラピッド・ダンスの構えをとろうとしたが、
「ラピッド・ダン……、ぐっ!?」
セトの腹部をアイリスは素早く氷の槍で串刺しにしていた。
「予備動作する時間なんて……、ないよ?」
そう言いながら、アイリスはセトから氷の槍を引き抜いた。セトは、腹部から大量出血しながら倒れた。そこにアレクシアが近づいて、セトを治そうとした。
しかしセトが腹部を貫かれた瞬間、ぼんやりと見ていたレンの中で前にも同じような事があった事がフラッシュバックした。その事を思い出し、レンは震えながらアイリスにこう聞いた。
「……お前がやったのか?」
「え?」
アイリスは、唐突な質問に少し困惑した。
「さっきの攻撃、僕は知ってるぞ……。あの攻撃は、『師匠を殺した』技と同じだ……」
それを聞き、レンを抱えていたオルフェウスは驚いた。
「何だと!?という事は……」
オルフェウスの呟きに耳を貸さず、レンはアイリスに続けざまにこう聞いた。
「師匠を殺したのは……、お前なのか!?」
そう聞かれると、アイリスは顔をしかめながら考えるポーズを取った。
「うーん……そうは言われても、いちいち殺した虫けらの顔なんて覚えてる暇ないし……」
「とぼけるな!!僕の師匠……アンネロッテ・フリューゲルを殺したのはお前なのかと聞いているんだ!!」
アイリスに対して、レンは戦後では始めての声の荒げ方をして聞いた。
「アンネロッテ……、フリューゲル……?」
アイリスは相変わらずピンと来ていなかったが、
「もしかしてあの時の……、あっ!」
何か思い出したような声を上げて笑顔でこう言った。
「思い出した、あの時!あぁ、やったやった!確かに、ボクが殺したよ?」
「……っ!!」
それに対し、レンは目を見開いてアイリスを見つめた。
「しかし、ホントにバカだよね〜。自分より弱い虫けらを庇って死んじゃうなんてさ〜」
アイリスはまるでその事を悪びれもしないどころかむしろ、侮蔑するような感じで喋ったせいで、レンは『師匠を殺した者に対する怒り』が、『師匠を殺し、挙句の果てに庇った事をバカだと言うアイリス』への怒りに変わっていき、その怒りは我慢の限界に達し、爆発した。
「……貴様ァァァァーーーー!!!!」
アイリスに飛びかかろうとしたレンだが、オルフェウスに片腕を掴まれた。
「……オルフェ!!離して!!あいつだけは……!あいつだけは!!」
「その怪我でアイリスに挑むな!返り討ちに合うだけだ!」
しかし、その忠告を無視して、レンはオルフェウスの手を振りほどいてアイリスに向かっていった。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
はてさてこの先、どうなります事やら。




