武闘大全、終幕……?
【前回のあらすじ】
《レン》
オルフェウスとの戦いで僕は……、負けた。
けど、僕はすごく楽しかった。そう言えば、表彰式があるって言ってたっけ……。僕の家に準優勝のトロフィーが2つ来ることになっちゃうな。
レンが入場口から出ようとすると、兵士の一人がレンのもとに駆け寄ってきてこう言った。
「おっと、レンさん!まだ準優勝者の入場の呼びかけまで待ってください!」
レンはしぶしぶ待つことにした。
「待つことになるなんて思わなかったよ……」
しばらくすると、実況役の兵士の声が聞こえてきた。
「続いては、そのオルフェウス選手と雌雄を決し、惜しくも再び優勝を逃してしまった我らが……じゃなかった。トルネシアの英雄!レン・フリューゲル選手の入場です!!」
レンは待ってましたと言わんばかりに入場口から出た。そして、レンが入場口から出てきたと同時に、観客席からは歓声や拍手が聞こえてきた。しかも風船と紙吹雪のおまけ付きだ。
「凄いな……。準優勝にも歓声浴びせてくれるんだな……」
レンは圧巻されながらリングに上がった。
「「「「キャーーー!!英雄様カッコいいーーー!!」」」
思いもよらない歓声が飛んできてレンは一瞬困惑した。
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それは観客席にいたレイとハルも同じだ。
「今でもあんな事言われんだな……、あいつ」
「あぁ……。俺もビックリだ……」
レイとハルはそんな会話をしながらレンを見ていた。
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レンが「カッコいい」と言われる事は、ベスティア戦争中はしょっちゅうあった。
しかし戦争が終わり、すっかり雰囲気が一変したレンが「カッコいい」と言われる事は、レイとハルは絶対に無いだろうと思っていた。それはレン自身も同じことを思っている。
しかし、今回なんと言われた。だからレンとレイとハルは困惑しているのだ。
(どうしよう……?とりあえず、笑顔で手を振ればいいかな?)
試しにレンはニコッと笑いながら手を振った。なんと、興奮のあまり鼻血を噴き出しながら倒れる人がでた。
(あれ?間違えたっぽい)
レンがそう思って慌てて別の方向を向いていると、また実況役の兵士の声が聞こえた。
「最後に!こちらも初出場選手!なんと初出場でありながら前大会の準優勝者でもあるレン・フリューゲル選手と激アツな戦いを見せてくれた、ダークホースならぬバーニングホース!セト・ヴァールクス選手です!!」
「え?セト!?」
レンが驚くと、セトが普段の彼とは違った少しオドオドした様子で入場口から出て来た。
(俺、ホントにこんなんで名前上がっていいのか……?)
そう思いながらセトはリングに上がった。
「なんでセトが!?」
「ノエルが3位決定戦を降りたんだよ。興が醒めたって言ってよ」
「なるほど……、不戦勝ね」
「なんか悪いかよ?」
「別に」
レンとセトがそんな会話をしていると、審判と他の兵士がトロフィーを乗せた台車を持ってきた。そして、実況役の兵士までリングに上がってきてこう言った。
「いやぁ〜、いつ見てもこの大会のトロフィーは豪華ですねぇ〜。それでは、これより表彰を行います!まずは、トロフィー授与!と行きたいところなのですが……」
すると、リングにまた人が上がってきた。レンは驚いた。なんと、上がってきたのはクリシスだったのだ。
「毎大会、選手に直接トロフィーを授与して下さる、我が国の女王ティオーレ・ヴェーラ・ネルケディラ様が諸事情により途中離席をしてしまった為、今回は開会式と同じく、ネルケディラ騎士団団長クリシス・フォン・グラヴィエッタ様より優勝、準優勝、3位入賞した選手にトロフィーが授与されます!」
そう言われて、レンは納得した。
(そりゃ、あれだけの事件があれば離脱せざるを得ないよな……。一国の王様って何処も大変なんだな)
そして、3位のセトから準優勝のレン、優勝のオルフェウスの順にそれぞれ相応のトロフィーがクリシスの手から直接渡された。あまりにもクリシスの表情が緊張で強張ってるので、途中でレンがクリシスに向かって、
「もうちょい表情柔らかく……!」
とこっそり言ったのは、幸いな事に聞こえてはいない。
しばらくして、レンはオルフェウスの前に来た。オルフェウスは色んな人から質問攻めされていたが、レンが目の前に来たことを知って、レンの方を向いた。
「どうした?」
「オルフェ……」
そう言うと、レンはオルフェウスの前に手を伸ばした。
「次は僕が勝つぞ!」
レンは笑顔でそう言った。すると、オルフェウスは顔が少し和らぎ、レンが伸ばした手を握った。
「そうか。なら、俺は今回の勝利に浸る暇はないな!」
そう再戦の約束を交わしたレンとオルフェウスに、観客は最大級の歓声を送った。
こうして、第15回ネルケディラ武闘大全は、幕を下ろした。
………はずだった。
レンとオルフェウスは、それぞれお互いの手を離し、レンは後退りした。すると、オルフェウスが何かに気づいたようにレンの後ろを向いた。そして、レンに向かって、
「レン!!避けろ!!」
と大声で言った。
レンはそれを聞いてすぐに後ろを向いた。しかし時すでに遅し、レンは後ろから跳んできた氷の槍に右肩を貫かれた。
「なっ……!?」
レンは右肩を押さえながら、オルフェウスの方に倒れ込んだ。セトはすぐにレンの前に立ち、兵士たちはすぐに臨戦態勢に入った。すると、何処からか声がした。
「ハァ……、駄目じゃないかオルフェウス。ボクが攻撃したのに避けるように言っちゃったらさぁ……」
「貴様はそういう奴だと分かっているからな。姿を見せろ!アイリス!」
「……『やだ』って言ったら?」
「貴様の非業を主君に報告する!主君の怒りを買うがいい」
オルフェウスがそう言うと、笑い声と共に声の主が闘技場の柱の上から姿を現した。その姿を見て、レンはハッとした。水色の髪と蒼く鋭い目、そして背中から生えた背びれを見て、レンは確信した。あのアイリスと呼ばれた者が、『第二の魔王』だと言う事を。
「第二の……魔王……」
レンはオルフェウスに支えられながらそう呟いた。すると、その魔王は聞こえていたのか、レンに向かってこう言った。
「おや、ボクを知っていたのかい?あの似非皇帝め……!余計なことを……!いいでしょう、壊れる前にボクの名を教えておこうか」
すると、その魔王は闘技場の柱の上から飛び降りてリングに着地し、行儀のいいお嬢様のように頭を下げた。
「ボクの名は……アイリス。虫けら達は揃ってこう呼ぶ……。魔王アイリス。以後お見知りおきを」
アイリスは、嘲笑にも近い笑顔でそう言った。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
魔王アイリスとの戦いはこれからどうなるのか見物だったりして。




