加速する激戦
【前回のあらすじ】
《オルフェウス》
俺は本気を出し、レンは神竜覚醒を発現した。
この試合、存分に楽しもう。
レンもオルフェウスの戦いはさらに激しさを増していき、先ほどのレンとセトの戦いの比にならない程だった。
目に見える速度になってもお互いの剣のぶつかり合いは凄まじく、風圧で並の人間ではリングが見えなくなっている程にまで及んでいる。
ただ、レイとハルとクリシスは何とか見ることが出来ていた。
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観客席ではレイとハルが、腕で顔から風を防ぎながらリングを見ている。
「な、なぁ!!今、どんな感じになってんだ!?」
「は!?なんて言ったんだ!?」
「今、どんな感じなんだって聞いたんだよ!!」
しかし、会話となると一苦労のようだ。
一方で、入場口にいるセトは壁にしがみつきながらではあるが、何とか耐えることが出来ている。
(あいつ……!同等の相手とやり合ったらここまでになるのかよ……!!)
アレクシアは、ノエルの腕にしがみついて飛ばされないようにするのがやっとだった。
一方でノエルは、その風圧に諸共せずにレンとオルフェウスの戦いを見ていた。その目は、ただひたすらにリングを冷たく見つめていた。
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オルフェウスはレンの剣を受け続けていたが、一瞬の隙を突いて受け流し、そのままレンの背後に回り込んだ。そして、レンの尻尾を両手で強く掴んだ。
「なっ……!?」
「悪く思うなよ」
そう言うと、オルフェウスは受け流した時の身体の回転をそのままに、レンを軽々と投げ飛ばした。
レンはすんでの所で爆破を空中で放ち、投げ飛ばされた勢いを相殺し、何とかリングに留まった。身体の右側面から着地してしまったが。
「イテテテ……。尻尾は盲点だったな……」
そう言いながら、レンは自分の尻尾を見た。
「だが、そこまでの立派な尻尾だ。うまく使えば戦闘でも使えるんじゃないか?」
オルフェウスはレンにそう提案した。レンはそう言われて、少し考えた。そして、
「そういう事ね……!」
レンは何かを閃いた。そして、レンはバネのように身体を起こして立ち上がり、再び神竜覚醒の光を纏った。
「よし!仕切り直しだ!」
レンは、再びオルフェウスに向かって突撃した。オルフェウスも真っ向からレンに立ち向かった。そして、再びお互いの剣がぶつかり合った。時々レンは火炎や氷塊をオルフェウスに向かって投げたが、投げ返されて逆に自分の魔力を喰らってしまった。そして、オルフェウスはそのままレンに向かって横薙ぎを払おうとした次の瞬間、レンは足を浮かせ、身体を倒してオルフェウスの剣をギリギリの所で躱した。レンは尻尾を支柱にしたのだ。
「ほう……、そう来るか…!」
「アンタのアドバイスのおかげだよ!」
そして、レンは尻尾をバネのように縮ませ、オルフェウスの脚を剣を使って払い、バランスを崩した所を尻尾でジャンプして上に打ち上げた。しかしオルフェウスはそれも読んでいたのか、すぐにジャンプしているレンを両手剣の側面で打ち飛ばした。
レンはそれに対して、リングスレスレの所で剣を地面に刺し、その剣を台にオルフェウスに目がけて剣を蹴ってオルフェウスまで特攻した。オルフェウスは予想外の攻撃に戸惑ったが、殴りかかろうとするレンを空中で受け流し、向かってきた方向とは反対の方向に飛んでいくレンに目がけて両手剣を投げつけた。
レンもそれを分かっていたのか、目の前にある壁にあえてぶつかり、飛んできた両手剣を躱した。すると直ぐ様、オルフェウスは両手剣を遠隔で引き戻し、自分の手元に戻した。レンは壁を蹴ってリングに突き刺さったままの剣に向かって跳び、剣を引き抜くとそのまま向かいの壁を再び蹴ってオルフェウスに向かって突撃した。
オルフェウスは、今度は受け流さずにしっかりと受け止め、そのまま激しい打ち合いとなった。しかし、今度の剣の打ち合いは先ほどよりも激しく、最早闘技場が壊れる程の威力でぶつかり合っている。
「そろそろここが持たなくなりそうだな……。悪いが、次で決めさせてもらうぞ!!」
オルフェウスはそう言うと、レンを膝蹴りして自身から離した。
レンが空中で宙返りしながら受け身をすると、オルフェウスは両手剣を自身の正面に構えた。すると次の瞬間、辺り一面が崩れ去っていく程の激しい揺れが起こった。オルフェウスの周りを纏っているオーラはさらにその勢いを増していく。
レンはその様子を見ても、臆することは無かった。むしろ、今の自分とここまで相対する事が出来る相手の全力の一撃を受ける事が出来るという事実に内心、喜んでいた。
「次で全力って事ね……。だったら、僕も全力だ!!」
レンはそう言うと、剣を頭上に掲げた。すると、レンの剣に雷が落ち、その雷を剣が纏い始めた。
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観客席にいたレイとハルはレンが何をするのかをすぐに察した。
「げっ……!あの技って!!」
「あいつ……!こんな所で正気か!?」
レイとハルは立ち上がって今すぐにでも避難できるようにした。
レイとハルだけではなく、ノエルとアレクシアもそれを察した。
(あの技……。クソっ、嫌な記憶が蘇ってくる……)
ノエルは不服そうな表情を浮かべ、アレクシアはノエルの後ろに隠れた。
唯一、セトだけはレンが何をしようかを察していなかった。正確には、オルフェウスの全力に対抗すると察してはいたが、どれほどの全力で対抗するのかを知らなかった。
(あいつ……、何で対抗しようとしてるんだ……?)
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レンは顔の前に剣を持ってくると、左手で逆手持ちに持ち替えた。
(前よりも完成度は上がってる……。後はあいつの全力にどれだけ対抗出来るかだ!)
レンの目は全力で戦う時の険しい目になり、それに呼応するようにレンの剣を纏う雷は激しく轟音を鳴らしながら光り輝いた。
オルフェウスは自身の纏っているオーラ全てを両手剣に込め、大きく左に振り被った。
(俺はまだあいつの全力を見ていない……。だが、全力には全力を以て答えるまでだ!)
オルフェウスの鋭い目は、レンをしっかりと捉えて離さなかった。
レンとオルフェウス、双方の気迫だけでもう闘技場は崩れ去ってしまいそうになっている。揺れは収まることなく、ネルケディラ王都全土を激しく揺さぶった。
「こいつで決めてやる!!」
「見るがいい!我が全身全霊を!!」
お互いにそう言うと、レンとオルフェウスは全ての力を剣に込め、お互いに向かって走り出した。
「神竜覚醒の……!『サンダーソード』だぁーーーー!!」
レンは左手の剣を再び右手に持ち替え、絶大な雷と共にオルフェウスに斬りかかった。
「『鬼王の絶技・緋焼大断』!!」
オルフェウスはレンの近くに来たと同時に、振り被った両手剣を思いっきりレンに向かって振った。
2つの剣はぶつかり合い、その余波は闘技場どころか王都全体を巻き込み、城ですら崩壊させた。
【ちょっぴり用語解説】
〈鬼王の絶技・緋焼大断〉
自身の全ての闘気を剣に込め、敵を一刀両断するオルフェウスの必殺技。
偶然な事に、極零帝国にて語り継がれている英雄に、この技に似た技を使うものがいるらしい。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
次からはちゃんとします。いろんな意味で。




