決勝戦、英雄vs魔王
【前回のあらすじ】
《レイ》
レンとオルフェウスの戦いが始まった。
はてさてどーなりますことやら。
開戦と同時に、レンとオルフェウスは目にも止まらぬ速さでの剣技のぶつかり合いを繰り広げた。リングは一瞬にしてひび割れや陥没が次々と起こった。
観客はおろか、レイとハルとクリシスでさえその速さに目で追えていない。
「レ、レイ!見えるか!?」
「見えるわけねぇだろ!?大体、今何が起こってんのかも分かんねぇぞ!?」
レイとハルはそんな会話をしながらひたすらリングを見ていた。
その頃、セトはレンとオルフェウスの戦いが気になって入場口に近づいていき、目を細めながらレンとオルフェウスの戦いを見ようとしたが……。
「レンかオルフェウスのような人影は見えるんだよな……。見え……そうで見えねぇ……。少しはゆっくり動いてほしいぜ……」
レンとオルフェウスの戦いは、最早常人では目視できないレベルにまで及んでいた。レイ達や観客には見えてはいないが、レンとオルフェウスはリングを駆け回りながら激しい攻防を繰り広げていた。オルフェウスの重い剣撃をレンは受け止め、レンの素早い剣技をオルフェウスは受け流している。
(想像の何倍も強い……!こいつ、レグルスよりやるぞ……!?)
(俺の剣を何度も受け止めるとは……。やはりこの男は……!できる!)
そうして目にも止まらぬ攻防は続いていき、遂にはリングはボロボロになってしまった。しかし、そんな事をも視野に入れていたのか、レンとオルフェウスは陥没した影響で浮かび上がったリングの欠片を踏み台にしながら空を跳びまわり、今度はお互いに魔法を繰り出しながらヒットアンドアウェイを繰り返していた。
魔法の軌跡だけはレイ達や観客にもしっかりと見えていたが、お互いに速い中で撃ち合っているのでただの火炎だったりがありえない速度で飛び交っているように見えていた。
「こっ、これはどういう事でしょうか!?空中で炎や雷といった魔法が線のようになっています!!一体全体、何が起こっているのかがさっぱり分かりません!!」
実況役の兵士がそう言っていた頃、時を同じくしてノエルも入場口の近くに寄ってきた。妖刀抜剣による身体へのダメージをそのままに。
「お、おい!何で起きあがってるんだよ!?お前、俺よりもダメージがひどいはずだろ!?」
セトが辛そうに胸を押さえているノエルに話しかけると、ノエルの後ろからアレクシアが追いかけてきた。
「ノ、ノエルさんっ!まだ身体が治ってもいないのに起きてちゃ駄目ですよ!」
しかし、そんなアレクシアの言葉も聞かずにノエルはリングを見ていた。その目は、レンとオルフェウスの戦いが見えているかのように、ずっと動いていた。
「お前……、まさか見えてるのか!?」
セトがノエルにそう聞いても、何も返答がなかった。
「なんの反応も無しかよ……」
ノエルはただ黙って、レンとオルフェウスの戦いを見ていた。
(本来ならあの場にいるのは俺のはずだった……。それを魔王ごときに横取りされてしまうとは……!)
ーーーーーーーーーー
その後もかなりの超高速戦闘が続いたが、突然レンとオルフェウスは普通の速度で戦い始めた。
「おぉっと!?急に私でも目視できる速度で戦い始めたぞ!?一体何を考えているのか!?」
観客席にいたハルはその様子に驚いていた。
「な、なんだ!?急に見えるようになったぞ!」
「ホントだ。オレもう目で追うの諦めてたからありがてぇわ」
レイは少し疲れた様子で前の壁の縁に寄りかかっていながら見ていた。
(さっきまでとんでもないスピードで戦っていたのに、急に速度を落として何がしたいんだあいつら!?)
ハルはそう思いながら見ていた。
レンとオルフェウスはお互いに剣の打ち合いをしていたが、突然オルフェウスが口を開いた。
「お前のその剣術……。まるで白百合の剣姫と戦っているようだ……」
レンは少し驚いたが、すぐにオルフェウスに答えた。
「それは良かった!師匠の剣技って単純に見えて複雑だから、再現は難しいだろうと思ってたんだよね!」
「師匠……?」
オルフェウスはそう呟き、一瞬でレンから離れた。
「レン・フリューゲル」
「レンでいいよ」
「そうか、すまない。先ほどから気になっていたのだが、お前は白百合の剣姫の事を師匠と呼んでいるな。と言う事は……」
オルフェウスがそう言いながら考えていると、
「そう!アンネロッテ・フリューゲルは僕の師匠なんだ!」
とレンは言った。
「やはりそうだったか。あの者は滅多に弟子を取らないと聞いたが……」
「僕もそう聞いた。でも、前の大会で戦ってさ、何でか分からないけど、向こうから僕に弟子になるよう誘われたんだよね」
レンがそう言った途端、オルフェウスは全てが繋がったような顔でレンを見た。
「そうだったのか……!どうりでかなりの強者なわけだ……」
「何?まさか戦意が削がれた……?いや、そんなつもりで言ったんじゃ……」
レンがオルフェウスに申し訳なさそうに言うと、
「いや、むしろお前に本気を出さなければ申し訳なくなった……!」
とオルフェウスがにやりと笑いながら言った次の瞬間、先ほどまで青空だった空が一変、黒い雲に覆われた。それと同時に、オルフェウスは黒と金のオーラを纏い始めた。
「こ、これってもしかして……!」
観客席にいたハルが、レイにそう言うと、
「まさか、あいつ変身するって言うんじゃねぇだろうな!?」
とレイはハルの方を見て言った。
オルフェウスの纏っているオーラは段々と濃くなり、オルフェウスが両手剣を上げ、振り下ろして再び構えの姿勢を取ると、そのオーラは全てオルフェウスの元に集まった。
オルフェウスが立っているだけでも、その周りの壊れたリングの破片が浮かび上がっている。
「ビックリした……。変身するかと思ったよ」
レンはホッと胸をなで下ろしながら言った。
「なに、見た目が変わったからと言って強くなる訳では無いさ」
オルフェウスはそう言うと、レンに向けていた剣を下ろした。
「お前も使うのだろう。あれを」
オルフェウスのその問いに対し、レンは少し答えるのを渋ったが、
「やれやれ……。ここまで本気の奴が相手じゃ、使わなきゃだよね!」
と言い、レンは神竜覚醒を使った。
リングには、青い光を纏った英雄と黒と金のオーラを纏った魔王が再び剣をお互いに向けた。
「お互いに準備運動はこれぐらいにしておこう」
「そうだね。そろそろ本気で!」
レンとオルフェウスは観客のざわめきも耳に入れず、ただひたすらに勝つべき相手を見据えていた。
「「行くぞっ!!」」
レンとオルフェウスの声が闘技場に響いた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
早く続きを書きたい……。(←勝手に書けって話だけど)




