露天風呂
作者の精一杯のサービスカットです。
男性のハートにぐっときたら嬉しいです。
女性に関しては「あー、女子ってこういうノリだよね」と共感してほしいです。
こうして緑珪での二日目はあっという間に夜になった。双子は、飛鳥の講義が終わると既に廃人状態になっていた。
「大丈夫、ケン、ジョー?」
「ああ……なんとかな」
「ちょっとだけ、鈴宮司令で良かったと思ってしまった」
二人は力無く笑った。そこで朔也が提案した。
「そういえば、昨日の夕食前に案内図見たんだけど、ここ、露天風呂があるみたいだよ」
「え、そうなのか?」
「いいなぁ、露天風呂か。蛟が出やすいっていうから、基本的に屋外の天然水はご法度なんだよな」
竜鉱の含まれる淡水、特に天然水を蛟は好む。そのため生活用水は水道局によって竜鉱を除去する処理をされている。
「源泉じゃないけど、特殊な入浴剤を使っているらしいよ」
「そうなのか、じゃあ気分転換に夕食後に行ってみるか」
五十嵐も誘って四人は食事後、露天風呂に行くことになった。
竹林に囲まれた石造りの露天風呂は、うっすらと水色に染まっていた。四人は早速湯に浸かった。竹林のさらさらという葉擦れの音と外で風呂に入るという開放感にしばし四人は堪能した。しかし、その時間は長くは続かなかった。
「ゲッ、長谷部と榎木とチビ!」
「何だよ、チビっていうな、バカ双子」
「広田、簡単に挑発に乗るな」
「榎木クン、だって、あいつら……」
「そうだな、広田。低能たちなど捨ておけ」
長谷部は双子を無視してかけ湯をして湯船に入った。
「おい、俺たちが先に入ってたんだぞ?」
「だから、なんだ? この風呂はお前たちの所有物なのか? そうじゃないなら、風呂くらい静かにしてくれないか。せっかくの情緒が台無しだ」
双子がさらに言い募ろうとした時、竹の柵を挟んだ隣の女湯から歓声が聞こえた。
「めっさ露天風呂エモいんですけどー!」
「本当だ、竹がなんとも言えない雰囲気だね」
「真由、カレン、そんなに急ぐと転びますよ」
ぱしゃり、ぱしゃりと水をかける音が聞こえてくる。男湯は突如静まり返った。
「ていうか、みつきのスタイルまじでヤバくない? 肌とか色抜けるくらい真っ白だし、胸の形とかめっさ綺麗だし、美乳ってやつ? そんでもってウェストも細くて、足も長いし。プールの時から、見てたけど、ここまでとはねぇ。ふーん」
「な、何言っているんですか! バストだったら、私よりもカレンの方が大きいじゃないですか?」
「あーね。これ、結構肩凝るんよ。ウチはもっと全体的にダイエットしてから聖銃士になりたかったわ」
「でも、なんか太腿とか引き締まりつつ、ちょっと筋肉質で、カッコいいね、カレンさん」
「んー? あー、一応これでもテニスやってたんよ。絶対領域にはちょいこだわりがあるねー。でも、まゆてぃーの身体もふぅん?」
「え、何?! どうせ幼児体形ですよ!」
「いやいや、わかってないね、まゆてぃーは。これがなかなか、一部の男子たちにはグッとくるものがあるのよ。このちっちゃな身体に胸とお尻が、なんとも言えないロリチックでたまらない。しかも、見て、このピンク色!」
「うわー! タオル返してぇ!」
そこでガラリと戸が開く音がした。男たちは更に耳を澄ませた。
「アンタたち、風呂くらい静かに入れないの?!」
「うわっ! 鈴宮司令……なんすか、そのスタイル。マジ神じゃないですか? 目が潰れそうっす」
「すごいです。全てのパーツが完璧なバランスで整ってます……」
「鈴宮司令、一体何を食べたらそんな身体になるんですかぁ?!」
「バランスの良い食事と適度な運動、日ごろのケアを怠るべからずよ!」
「すごい脚の爪から綺麗です。このペティキュア、ご自分でされたのですか?」
「当然! 髪の毛からつま先まで、美しく保つのは女として義務」
「待って、その大きさのバストで形崩れてないってヤバくない? お尻まで引き締まってこのヒップラインに美しさ、尊みすら感じる」
「芸術的な美しさを感じます……」
「ホッホッホ! 見て減るモノじゃないから、好きに見るが良いわ!」
「なんですか、騒がしい!」
そこでまた戸が開く音がした。湯船に浸かった男たちに緊張が走る。
「あーら、誰かと思ったら小さな人が登場したわ」
「それって一体、誰のことです?! 私の身体的特徴に言及しましたか?」
「いーえ、アタシはただ、自分より背が低いと表現したかっただけで、決して胸と心が小さいなんて言ってないわよ」
「今、言っています! ……まぁ、自信と身体が肥大した誰かさんは、体重もその分比例して重いとは思いますけどね」
「はッ。いつも口だけは回るわ。だけど頭でっかちで栄養が全部頭に行ったせいで、そんな身体になったのね。バディーを解散してから、少しは成長したと思ったけど、成長期は終わってたみたいね。ご愁傷様」
「貴方こそ、栄養が全部胸に行ったせいで、言動が軽率なんじゃないですか?!」
「……けど、飛鳥司令の身体も綺麗だよね」
「はい。無駄なぜい肉が全くありません。長い手足が強調されてまるでアスリートのようなカッコよさがあります」
「髪もあの長さであの艶やかさ。シャンプーのCMとか全然出れるじゃん? 一体、普段どのブランド使ってるんだろ?」
三度、ドアが開かれる音が響いた。ペタリペタリと濡れた石畳を歩く音がする。男湯ではもう誰一人声を発しない。
「飛鳥司令ぃ、置いてかないで下さいぃ」
「胡桃さん……! 裏切りましたね!?」
「はいぃ? 何がですぅ?」
「やっぱり、身体も中身もあざとい女ね。男に媚びていくスタイルだわ」
「はぁ? あの体格であのバストの大きさ、反則でしょ? 核弾頭級にヤバい。めっちゃ揺れてるんですけど。あれってバレーボールくらいあるっしょ? わがままボディ過ぎるわ」
「前代未聞の大きさです……」
「ほぇぇ、い、一体、あたしの胸囲と何十センチ差があるんだろう?」
それからも女湯は賑やかな嬌声が木霊していた。まだ思春期の少年たちは、女湯から声が聞こえなくなるまでじっと身動き一つせず、湯船に沈んでいた。
その結果、七人の男子たちが湯あたりをして動けなくなったのを、様子を見に来た春田と武越が発見した。
お読みいただきありがとうございます。
次回「嫌な予感」をどうぞよろしくお願いいたします。




