作戦会議
部屋に戻りながらケンは言った。
「あの話ってつまりさ、Aユニットだっけ――あっちのユニットの同じ色のペアとグループになるってことだろ」
「まあ、そうだな。ということは、俺たちは渡辺先輩と江原先輩か。ん? つまり、朔也のグループって……」
「長谷部と真由ちゃんってことになるのか?!」
ジョーの言葉を引き継いでケンの声が大きくなる。
「なんていうか……濃いメンバーだな」
「そう、だね。実はこないだのユニット対抗戦の後の話なんだけど……僕が鶴来さんをかばったから、長谷部君怒ってて。上手く行くかな」
「いやいや、あれは仕方ないし。むしろ俺としては朔也を評価しているぞ」
「そうだな、あそこで鶴来さんを見捨ててたら、朔也は男じゃない」
ケンとジョーは口々に朔也の行動を称えた。朔也はほっとしながらも、内心ため息もついていた。双子よりも長谷部のことを苦手意識していないが、やはり気が重いものは重いのだ。
翌朝の食事も緑珪らしい品の良い品々が並んだ。白身魚の切り身に旬の野菜を使った小皿、それに漬物が絶品だった。しかし、朔也たちはゆっくりと味わっている時間は無かった。妙に急かす鈴宮により、食べ終わると早速一同は離れに移動した。離れは外からは見えない位置にあり、裏庭の景色に溶け込んだような和風建築だった。しかし、そこはやはり御子神学園の支部であった。
離れの内部は最先端技術の粋を集めたものだった。天井に設置された三次元プロジェクターが立体映像を投影し、その周囲をぐるりと囲むように円形の机配置されている。各席ごとに液晶パネルが内蔵されていた。鈴宮は何も言わずに上座にさっさと座り込み、春田が下座に座ろうとするとのを引き留めた。
「春田、何してるの? 春田は補佐なんだからアタシの隣に決まってるでしょうが!」
そう言われて苦笑しながら鈴宮の右隣に座った。
「あんたたちもぼーっとしてないで適当に座りなさい」
鈴宮に言われて朔也たちも春田の右側に順に座っていった。それから間もなく、飛鳥司令率いる仮称Aユニットが現れた。飛鳥は鈴宮が尊大に上座を陣取っているのを見て、一瞬むっとした後、対面側に着席した。その隣に補佐である胡桃も座り、長谷部たちも無言で席についた。
「もしかして、ただ自分があそこに座りたいがために俺たちの食事を急かしたのか?」
「ありうるな。すっげー負けず嫌いなんだな」
朔也の隣でケンとジョーが囁き合っていた。
「それでは、共同任務に関する作戦要綱を説明します」
「なーんで、アンタが勝手に仕切ってるのよ」
「貴方が進めるとめちゃくちゃになるからです」
「はッ、アンタの長い話を聞いてるとイライラしてくるけど、まぁいいわ。お手並み拝見と行こうじゃない」
鈴宮が足を組んで背もたれにもたれかかりながら、飛鳥を挑発した。飛鳥はそれには応じず、作戦要綱の説明を始めた。それは概ね、昨晩、鈴宮の説明した内容であった。そこで長谷部が質問した。
「同時間帯に同色あるいは相対色の蛟が別地域で発生した場合、どのように対処しますか?」
「へぇ、さすがに目端が利くわね。そうよ、この二ユニット三グループ制の最大の弱点はそこ。だから、いかに迅速に蛟を討伐し、次の現場に急行できるかという問題になるわ」
鈴宮がニヤニヤしながら長谷部を眺めた。
「特定のグループにだけ負担がかかるということになりませんか?」
「作戦要綱では、別のグループが先に現場へ行き、蛟をけん制するとともに治癒魔法などバックアップに回るとあります」
「……不確定要素が多すぎます」
「その通りよ、長谷部。だけどね、戦闘なんて不確定要素だらけ。ユニットとして対応していても、メインアタッカーが戦闘不能になることなんてザラにあるわ。その時は援軍を待つしかない。アンタも覚悟を決めるのね」
鈴宮の突き放した発言を聞いて、長谷部は唇を噛んだ。
「それでは、各個人のデータの分析と評価に移りたいと思います。まず、赤と青のグループのリーダーですが……」
そこからは、飛鳥の淡々とした説明が続いた。中央のプロジェクターと手元の液晶パネルに数値が表示される。薄暗い室内で鈴宮は途中から舟を漕ぎだし、隣の春田がしっかりとメモを取っていた。午前中いっぱい、飛鳥の講義は続いた。
「……私からは以上となります。午後は二ペア一グループの時の戦略についてお話しします」
久しぶりに授業らしい授業を受けたので、双子は午後も講義が続くと知り、ショックを受けた表情をしていた。目が覚めたらしい鈴宮は、ぐーっと大きく伸びをしていた。
「はぁ。退屈だった。アイツの話って長い上に薄っぺらいのよね。データ表見れば一目瞭然でしょうに」
「みんながみんな、あなたの様に一度読んで完璧に記憶できるわけではないんですよ」
「まぁ、そういう意味ではアイツ向きの仕事ではあるわね。さて、昼食は何かしら?」
お読みいただきありがとうございます。
次回「露天風呂」をどうぞよろしくお願いいたします。
作者が渾身の力を込めたシーンでございます。




