古都
またしても、うたた寝をしていた朔也はケンによって揺り起こされた。
「おい、すげぇぞ、緑珪!」
「いやー、こいつは趣があるなぁ」
ジョーの言葉で朔也も窓から様子を見ると緑珪はその名前に反して燃えるように赤かった。古き木造の塔や建物は、紅葉に彩られている。黒玖の都と全く違うその古風な風情に、朔也は思わず見入ってしまった。バスは市街地を抜け、やがて竹林の中を進んでいった。その先には一軒の古民家があった。
「まさか、今度はかやぶきかよ……」
「文化財レベルの建造物だぞ、これ」
朔也たち一行は今にも崩れ落ちそうなかやぶき屋根の建物の前に茫然とした。そこにたった今春田に起こされた鈴宮が欠伸をしながら、バスから降車した。
「何、口開けてぽかーんとしてるのよ。さっさと入る、ほら!」
鈴宮に追い立てられるように朔也たちは木製の引き戸をノックした。
「はいはーい。あ、どうも、いらっしゃいませ! 鈴宮司令、飛鳥司令、それからユニットの皆さんですね。初めまして、私、武越と申します。ここの管理人です。よろしくお願いしますー。あ、あなた方が鈴宮司令と飛鳥司令ですか? あの業火の魔女と冷徹の聖女と呼ばれた有名なバディーの!? おっと、いけない、いけない。それじゃあ、長旅で疲れたでしょうし、お部屋ご案内します」
出てきたのはひょろりとした三十手前くらいの青年だった。なぜか首元までボタンがあるスタンドカラーのシャツの上に着流しを着ている。その古風な佇まいはこの古民家にぴったりだったが、雰囲気に合わせているのだろうか。中に招き入れられると、またしても朔也たちは驚かされた。広い土間から上がると、まず目に飛び込んできたのは立派な無垢の梁だった。さらに裏庭からは光が差し込み、真っ白な白壁のお陰で明るく清潔な印象だった。
「また出たよ、外装詐欺物件」
「お宅拝見みたいな番組で紹介されたら、すごい人気になるだろうな」
艶やかな板張りの床をそろそろと歩きながら、裏庭を見ると美しい枯山水庭園になっていた。
「はいはーい。こちらがお部屋になります」
別棟に案内した武越はそれぞれに部屋の鍵を渡していった。
「はいはーい。皆さん、鍵は行き渡りましたね? それではごゆっくりおくつろぎ下さい」
武越がニコニコと微笑みながら一礼して、戻っていった。朔也はこの建物に似つかわしくないカードキーを使って、部屋に入った。部屋は狭いながらも、赤を基調にしたインテリアに行灯風のランプが上品に感じられた。朔也はスポルティングバッグを降ろして、ベッドで一息つこうとした。だが、その前にドアがノックされ、五十嵐が入って来た。
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