道中
やっと二人の口喧嘩は決着が着いたらしい。鈴宮はバスに乗り込み、最後列の真ん中を占拠した。それから少し間を開けて、飛鳥が少し目を伏せてバスに乗車した。静かにだが、その姿は怒気をまとっていた。
「おっかねぇな、オイ」
「ああ、この遠征が平和に終わる気が全くしないぜ」
双子が声を潜めて、対照的な二人の司令を見比べる。長い足を投げ出し、アイマスクをして寝る体勢に入っている鈴宮に対し、飛鳥はタブレット端末で何やら資料の確認をしている。
「まさか『共同任務』の相手が飛鳥司令のユニットだとは思わなかったな」
「全くだ。よりによって長谷部たちと一緒になるとはな」
苦々しい表情でジョーが前方で榎木と広田とともに座っている長谷部を睨みつける。
「あ、でもさ、久しぶりに樺倉さんにも会えたよ?」
「そうだな。真由ちゃんは俺たちの癒しだな」
「女子たちはなんだか楽しそうだ。羨ましい」
朔也たちから少し離れたところでは、みつきと樺倉、そして土屋が自己紹介していた。
「ちぃーす。ウチが土屋華恋でーす。黄の聖銃士してます」
「あ、樺倉真由です。白の聖銃士です。よろしく」
樺倉は若干気後れしながらも土屋に挨拶をしてぺこりと頭を下げた。
「ふーん、真由ね。あ、紅茶飲んでるからまゆてぃーって呼ぶから。なんか、この子めっさ小さくて可愛いんですけど? まじきゅんです」
「え、あたし、そんな褒められたことないから、なんか恥ずかしいな。田舎者だし、土屋さんみたいなおしゃれな人に言われると特に……」
「いやー、ウチ、まゆてぃーみたいな擦れてない子、まじすこ。その点、つるるんはなんか、いじりがいが無くて、物足りないわぁ」
「それはとんだご無礼を」
「その返しだよ。まぁ、嫌いじゃないんだけどさ。ねね、緑珪着くまで暇だしさ、まゆてぃーにメイクしても良き?」
「あたし、お化粧とかしたことなくて……」
「いやいや、絶対素材良いから化けるって。つるるんもそう思うっしょ?」
「はい。真由は可愛らしいと思いますよ」
「え、え、え? そんな二人に言われるとかえって自信が無くなるんだけど」
「よーし、決定。ウチのスゴテク見せてやんよ!」
「では、私もアイドル時代に鍛えた技を披露させて頂きます」
「おけーって、今、さらっとすごいこと言わなかった?! つるるんってアイドルなん?!」
女子たちは花やいだ声を上げ、そこだけぱっと明るくなったようだった。
それぞれの因縁と思惑を乗せ、バスは緑珪へと進んでいく。
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