今井再来
Sユニット一行が扶桑に着いたのは昼の一時を少し過ぎた頃だった。真新しいビル群と古めかしい灰色の大理石でできた石の都は懐かしい。それから更に一時間ほどで御子神学園へと到着した。がやがやと荷物を持ってバスを下車した。到着したことを春田が連絡を入れると、すぐにユニット全員の端末が震えた。
「なんだ……荷物を置いて東棟一階に集合だって」
ケンの言葉でそれぞれが端末を覗き込み、東棟に向かおうとする。しかし、朔也の端末だけは異なっていた。
「あれ、僕は至急救護室に集合って書いてある」
「さっきまでぶっ倒れてたんだから、休養と検査があるんだろう。それじゃ、またな」
ジョーが言うと皆が寮へと散っていった。朔也はスポルティングバッグをかけ直して救護室に向かった。
失礼しますと言ってドアを開けると、そこには今井が巨大な椅子に座っていた。
「久しぶり、真山くん。ご活躍だったけど、元気じゃなかったねぇ。魔力と体力は回復したかな?」
「ええ、はい。あの、随分、楽になりました」
朔也は今井のあまりの勢いに若干圧倒された。
「えぇー、まだ顔色悪いんだけどな。まぁいいや。これ、新開発した血液からの魔力測定器。ちょっとちくっとするよぉ」
今井は喜々として新器具を朔也の耳たぶに刺した。
「ええっと数値はと……うわぁー、万全じゃないのに平均値の三倍は優に超えてるよぉ。すごいなぁ、真山の血筋は。侮れない」
血筋と朔也は小さく言葉を繰り返した。
「あの、今井先生。僕の両親の血液検査と遺伝子検査の結果ってどうなったんですか?」
「えっ?」
今井はまさに虚を突かれた顔をした。それからしまったという顔になった。
「あーあ、そうだよね。これだけヒント出してれば気付くよね。私の悪い癖なんだ、人の知性を軽く考えるのは」
くるりと巨大な回転いすの上で回りながら今井が腕を組む。
「んー、真山くんは『候補』だしね、いずれは知らされるんだから急がない方が良いよ。都合が悪くなるとあの人手段を選ばないから。でも、ヒント位はいいかな。遺伝子検査の結果は魔法症候群罹患者全員に同じ部位に欠損が発見されたよ」
「遺伝子の欠損ってどういうことですか?」
朔也が尋ねると、ああと今井が額をぺしりと叩く。
「あーそこからか。そうね、遺伝子って身体の設計図が描かれているものでしょう? その一部分にね、皆同じ所に欠けたところがあるんだ。普通は修復されるんだけど、魔法症候群の欠損部位はそうじゃない。遺伝子地図にも何も意味のないところだと記載されてた部分で、未だに正確なことは分からない。サイレントDNAって私は呼んでる。ところが、元保因者の場合、その欠損は消えている。でも保因者以外にも遺伝子が欠損した人間がいるそれは……おっと、これは秘密だった。危ない危ない」
今井は大袈裟に口に手を当てた。朔也は聞き出そうと口を開こうとしたが、今井が遮った。
「話はここまで……それじゃあ、私はこれで。後で朝霧教官が来るって言ってたから。まったねぇ」
今井はのしのしと救護室から出ていった。
(どういう意味なんだ、今のは?)
朔也は一人残された救護室で思考する。自分は何らかの候補であり、いずれ知らされるが都合が悪くなれば何かされる。つまりは相当危険な立場に立っていると考えるべきだ。どうしようと悩んでいるとガラリと戸が開けられた。
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次回「もう一人の候補」をどうぞよろしくお願いいたします。




