決壊
「やったのか?!」
「鶴来、真山、状況を説明しなさい!」
ケンと鈴宮の声が同時に聞こえる。
「……蛟の核、破壊確認しました。移動します」
朔也が通信に応じた。みつきはぐったりして今にも倒れこみそうだった。朔也はみつきに肩を貸し、なんとか融解を始める蛟から離れた場所に休ませた。
「ありがとうございます、真山君。私はちゃんと蛟を倒せましたか?」
「うん、鶴来さんはしっかり核を破壊したよ、今は休んで」
「良かったです……」
みつきの口元にかすかな笑みが浮かぶ。他のユニットのメンバーも次々に降下してきた。
「すげぇ早業だったな」
「まさかあそこで飛び乗るなんて思ってもいなかったぜ」
ケンとジョーが笑いながら着地した。双子と朔也とみつきはハイタッチを交わす。
「お疲れ様、二人とも怪我はないかい?」
「最後の一撃、マジ痺れたわ。つるるん、やるじゃん!」
疲れ切ったみつきの頭を土屋が撫でる。みつきがくすぐったそうな顔をする。
「さて、こんなところさっさとおさらばして、あったかい飯と風呂にありつこうぜ」
「そうだな。少し雨も弱くなってきたしな」
「鈴宮司令、周辺の蛟発生状況はどうですか?」
五十嵐が鈴宮に問いかける。
「今のところは無いわ。ついでにもうすぐ、本部からの援軍と常駐ユニットも到着するわ」
「遅いっつぅの」
土屋が足元の小石を思いっきり蹴っ飛ばした。
「ていうか、この川めっちゃくちゃ増水してないか?」
「あそこらへん、今にも決壊しそうだな」
ケンとジョーが少し飛んで上空から珠江の様子を伝える。
「危険水域を越えたわ。急いで避難しなさい。ワゴンに乗りなさい」
鈴宮の声にも焦燥感が滲む。五人は急いでワゴンの方へと駈けていく。
「真山、アンタもぼんやりしていないでさっさと乗りなさい」
「……僕、残ります」
えっと全員が言葉を失った。
「あそこの堤防が今にも決壊しそうなんです。防御壁ならなんとか押し留めることができるかもしれない」
「真山、それは理論上の話よ。洪水の時の水圧は蛟の攻撃とは違うの」
「でも、今ここで逃げたら災害が起きるってわかっていて、逃げることはできません。せめて土嚢が積まれるまで、耐えて見せます」
土砂降りの雨音と吹き荒れる風の音だけが辺りを支配する。束の間の沈黙を破ったのは双子だった。
「馬鹿だな、朔也は。俺たちの上を行くよ」
「一人でカッコつけようったって駄目だぜ」
双子が乗り込んだワゴンから降りてきた。
「あー、マジだるいんだけど。でも、ここで人が死ぬとかそっちの方が最悪だわ」
土屋が短い黄色のチェックのスカートを翻しながら双子に続く。
「人命は何にも代えがたい。この美しい都を守るために僕が出来ることがあるならば」
五十嵐がネクタイを直しながら車から出てくる。
最後にみつきが顔を出してきた。
「皆を守ってこその、守護者ですね」
そう言ってみつきは車から軽やかに降りてきた。
「ああもう、バカばっかり! 春田、消防局に連絡! 蛟討伐完了と堤防補強のための重機の要請。いい、アンタたち危険になったら速やかに離脱するのよ?」
了解と六人は声を揃えて唱和した。
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次回「結束」をどうぞよろしくお願いいたします。




