混戦~中編~
咄嗟のことで土屋が防御魔法を放つのが一瞬遅れた。青の光線は五十嵐の左頬と左肩を掠めていった。
「司令、五十嵐が被弾した!」
「五十嵐、被害状況を説明できる?!」
「……肩が少し、抉られました。左肩なので戦闘には支障ありません」
「バカ者! 鶴来、すぐに五十嵐に治癒魔法を。土屋は防御魔法を張って二人の保護を。天地謙、譲は青の蛟の警戒しなさい」
了解と六人の声がバラバラに鈴宮に届く。鈴宮は移動中のワゴン車の中でマイクを切って舌打ちをした。
「サシの勝負を見守ってくれるほど、状況は甘くないってわけか」
「鈴宮司令、現場まであと一時間はかかります」
「なんですって?!」
「氾濫水位のため、通行止めになっており、迂回せざるをえません」
「これは何が何でもあの子たちに堪えてもらうしかないわね……鶴来、五十嵐の怪我の状況はどう?」
「はい、鈴宮司令。一応止血と貫通した箇所は治療しました」
「五十嵐、戦闘に影響は?」
「問題ありません」
「アタシが聞きたいのは正確なアンタのコンディションよ。正直に言いなさい」
「……少し、痛みはあります。飛行には影響ありませんが、射撃の精度に自信がありません」
五十嵐が少しだけ眉根を寄せながら、答えた。
「ごめんね、ラッシー。ウチのせいで怪我させて」
「戦場でそんな甘えたこと言ってるんじゃないわよ、土屋。ミスは仕事で挽回しなさい。青の蛟は天地赤青に牽制を続けさせて、五十嵐、土屋は黄の蛟を仕留めなさい。鶴来、真山はその援護」
鈴宮は土屋を一喝し、新たな指令を下した。黄の蛟が先程のダメージから回復し、再び動き出そうとしていた。
「土屋君、防御魔法を。一撃離脱で額の核を狙う」
「わかった。でも無茶はなしだかんね?」
五十嵐と土屋が蛟の頭上に高く飛翔した。
「五十嵐君、出来る限り蛟の気をこっちに引く。タイミングが来たら声をかける。鶴来さんも撃てる?」
「まだ平気です。やりましょう」
朔也とみつきは黄の蛟の目をめがけて黒と白の光線弾を撃ち込んでいく。黄の蛟が煩わしそうに朔也とみつきを睨みつける。その眼に見据えられて、みつきは小さく悲鳴を上げた。
「大丈夫。口を開けたら防御魔法を張るから僕から離れないで」
朔也とみつきは聖石銃を撃ち続けた。そして目に直撃し、明らかに蛟が怯んだ。
「五十嵐君、今だ!」
朔也が大声で叫んだ。
「行くぞ、土屋君!」
五十嵐が土屋を連れて蛟と二メートルほどの距離まで近づく。土屋の張る黄色に輝く防御壁から五十嵐が銃を突き出す。
「今の僕でも」
五十嵐がマスケット銃を抱えて呟いた。
「ここからなら外さない」
五十嵐は全力を込めて引き金を引いた。緑の光線は黄色の核に直撃し、パリンと儚い音を立てて割れた。
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次回「混戦~下編~」をどうぞよろしくお願いいたします。




