水中訓練
翌朝になると何とか身体に体力と魔力が回復しているのが感じられた。
あの後、五十嵐に起こしてもらい、四人は何とか夕食と風呂を経て、布団で眠ることができた。
幸いにも今朝は鈴宮の襲撃はなかったため、七時まで眠ることができた。
身支度をして朝食をとると、六人は春田によってプールへと連れてこられた。
そこには白いビキニにパレオを巻いた鈴宮がいた。形の良い胸は大きくせり出し、ウェストは程よくしまった完璧なスタイルだった。男子は見慣れない異性の水着姿に思わず赤面する。
「おはよう、よく眠れた?」
「お陰様で、永眠するほどよく眠れました」
とは誰も言わなかった。
「さて今日からは水中の訓練をやってもらうわ。水泳の経験がある人は?」
「こないだ、スキューバダイビングならやりましたけど」
双子が手を挙げて答える以外、四人は首を振った。蛟は淡水を好むため、川や湖での遊泳は推奨されていない。むしろ嫌厭されているといっても過言ではなかった。
「そう。分かっていると思うけど蛟は淡水に出現する傾向にあるわ。その際に不慣れな水中戦を挑まれることもある。だから、ある程度の水泳能力と水に慣れてもらう必要があるわ」
そこで指をびしっとプールに示して、鈴宮は言い放った。
「全員飛び込みなさい!」
えっと硬直する六人に対して、鈴宮は冷酷だった。
「良いから、入りなさい!」
鈴宮は双子の背中を押して、どぼんと音を立てて双子が水に落ちた。
「ちょ、待ってくれよ、司令! いくらなんでも服着たままとか酷いだろ!」
「蛟との対戦は雨や水上でと知っているでしょう? 当然その制服も防水仕様になっているわ。だから、女子も安心しなさい。服が透けたりしないから。わかったらほら、全員飛び込め!」
残りの四人も静かにプールに身を沈めた。慣れない塩素の香が鼻を刺激する。
「これから十キロ、このプールは五十メートルだから百往復歩きなさい。はい、開始」
六人は水深の浅い両端にみつきと土屋が、水深の深い真ん中を長身の五十嵐が入り、五十嵐を挟むように双子がレーンに着き、朔也も空いたレーンの移動した。六人は不慣れな水中をかき分けるように進んでいく。
防水とはいえ、水の抵抗があり、身体が重く感じる。横並びだった六人も徐々にバラけて、女子たちが遅れていくようになってきた。
朔也は双子と五十嵐に続き二時間ちょっとでやっと達成した。女子たちはなかなか苦戦しているようだった。
「朔也、鶴来ちゃんを応援してやれよ」
「え、いや、そんな……」
「大丈夫だって。あれ見ろよ」
ジョーが指をさしたのは五十嵐だった。
「土屋君頑張れ! ゴールは近いぞ!」
「うるっさいなぁ! あんたはウチの熱血コーチにいつ就任したん?! まだあと八百メートルもあるわ!」
「な?」
あれはあれでなんだか問題があるような気がしたが、朔也も勇気を出してみつきに声をかけてみることにした。
「つ、鶴来さん、頑張れぇ……」
弱々しい応援にみつきに疲れた表情から一転して笑顔を浮かべて朔也を見た。
「応援ありがとうございます! あなたの心に降り立った一羽の鳥、元ホワイトフェザーのみつきです! 私から目を離したらダメだぞ」
濡れたみつきが水中でぴしりと決めポーズをとると飛沫が舞って煌めいた。
「すげぇな、ハードな訓練中にもあんだけ笑えるなんて。朔也が惚れるのもわかるかも」
ケンとジョーが折り返して歩き続けるみつきを見送った。
「え、いや。僕はただのファンだから!」
朔也は顔を真っ赤にして頭と手を振った。
「ああ、そうだった。そういう設定だったな。すまん、すまん」
「設定とかじゃなくて……」
もう朔也には反論する気力も残っていなかった。
「天地と真山! 遊んでるんならもう十キロ歩かせるわよ!」
鈴宮が鋭く叱責する。やがて女子二人も水中ジョギングが終わった。確かに透けないが、服が体に張り付き、みつきの柔らかな体の線が露わになって朔也は目のやり場に困った。
「昼食に割包用意してもらったから食べなさい。食べて少し休憩取ったら次は水泳の練習をするわよ」
はーいと六人は深い溜息とともに返事をした。割包は豚の角煮を白いふかふかの生地で包んだ肉まんのような食べ物で生地とたれが相まってとてもおいしかった。
午後の練習は春田が泳ぎ方の指導をしてくれた。教え方がとても丁寧でわずか数日で全員がクロールと平泳ぎまではなんとか泳げるレベルにまで達した。
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次回「嵐到来」をどうぞよろしくお願いいたします。




