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鈴宮の過去と出発

全員が席に座ってからしばらくして、ヒールの音も高らかに鈴宮が現れた。


「全員揃っているわね。紹介するわ、運転手兼秘書兼雑用の春田よ。一応、私専用だけど、アンタたちの世話も一緒に見ることになっているから何かあったら言いなさい。ただし、アタシ優先よ」

「この度、鈴宮司令の補佐役に任ぜられました春田です。至らぬ点も多いかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します」


 キリリとしたスーツ姿の春田は長身も相まって、まるで女優の如き美貌の鈴宮に従うSPのような雰囲気だった。


「ふん、こんなジャリたちにそんなに丁寧に挨拶することないわ。それじゃあ、出発!」


 そう宣言すると一番後ろの席で長い脚を組んだ。春田は運転席に着くとゆっくりとバスを発進させた。


「なぁ、鈴宮司令って本当にマスターコース出てるのか?」

「ていうか、何歳なんだ?」


 こそこそと双子が言葉を交わしていると後ろから声がした。


「聞こえてるわよ、天地。アタシは扶桑大学の防衛戦略科の博士課程をきっちり首席、オール秀で修了しているわ。霊珠が消えた年に大学を受験して一発合格したのよ。ついでに大学もいくつか飛び級しているけど」


 バスの中で春田を除く六人が一気に振り返った。


「それじゃあ、鈴宮司令も聖銃士だったんですか?」


 五十嵐が質問すると事も無げに鈴宮が答えた。


「そうよ。何にも驚くことなんてないじゃない。御子神学園の先公してるのなんて、ほとんどが聖銃士経験者よ」

「そういえば、飛鳥司令と勝負に負けたことがないってあれってもしかして・・・・・・?」

「そうよ。あの石頭と二十年近くバディー組んでたのよ。全く離れられてせいせいしたのに、司令試験場であいつとばったり顔合わせた時はうんざりしたわ」


 鈴宮はそう言いながらポーチの中をごそごそと漁り、アイマスクを取り出した。


「ああ、つまんない話をしたわ。黒玖の都まで陸路で五時間、ゆっくり寝させてもらうから。それじゃあ、アンタたちは勝手にやってなさい」


 鈴宮はアイマスクと耳栓をするとリクライニングを倒してごろりと横になった。数分もするとすやすやと寝息が聞こえてきた。


「鈴宮司令は一度寝ると中々起きないからゆっくりくつろいで大丈夫だよ」


 春田が冷蔵庫から飲み物を配りながら話した。


「春田さん、運転は?」

「大陸横断道に乗ったから自動操縦にしたんだ。最新式だから安心していいよ、俺の運転より安全なくらいだ」

「鈴宮司令のことよくご存知みたいですね」


 みつきが穏やかな口調で飲み物を受け取りながら尋ねた。


「幼馴染なんだ。鈴宮司令がまだ聖銃士になる前までよく遊んでもらった……のかな。うん、多分、そういうつもりだったと思う」


 春田の返答が妙に歯切れが悪くなる。車内になんとなく納得したような生ぬるい空気が流れる。


「じゃーあ、春田さんは鈴宮司令追いかけて守護庁の職員になったってこと?」


 土屋がキラキラした瞳で春田を見つめた。その視線を受けて春田は申し訳なさそうな顔をした。


「いや、司令が聖銃士止めたらいきなり実家に連絡が来て、守護庁の試験を受験しろって命令されたんだ……誰も逆らえなくって。会社辞めて、入庁したんだ」


 またしても事情を察した車内には同情と諦念の入り混じった空気になる。


「さて、俺の話はこんなところだ。冷蔵庫にプレートが入ってるから、腹が減ったら温めて食べるといい。それじゃあ、運転席にいるから何かあったら呼んでくれ」


 ケンは春田が運転席に戻るのを見送った後小声で、ジョーに囁いた。


「俺たちとんでもない司令に当たっちまったんじゃないのか?」


 バスはどんどんと御子神学園から離れ、見知らぬ都へと若き戦士たちを運んでいく。


お読みいただきありがとうございます。


次回「南の都 黒玖」をどうぞよろしくお願いいたします。

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