初めての喧嘩
みつきは重たい気持ちを抱えたまま、寮へと戻った。鈴宮の言葉が頭をよぎる。実戦だったなら自分のせいで朔也が死んでいたのだ。ベッドの上で小さくうずくまっていると、ドアがノックされた。
みつきは疲労と落胆で身体を動かすのも億劫だったが、再度催促するようにノックされた。渋々、みつきがドアを開けるとそこには樺倉がいた。
「真由、一体どうしました?」
「みつきちゃん、どうしてさっきの試合であたしを撃たなかったの?」
樺倉は身長が十センチ以上違うみつきを下から睨みつけていた。みつきは言葉を返せなかった。
「最初の試合では二人、倒しているの見てたよ。綿貫先輩相手でもみつきちゃんは撃ってた。でも、あたしの防御壁が無くなった瞬間、みつきちゃん射撃体勢に入ってたよね? どうして?」
「そ、それは……」
友達だからという言葉をみつきはすんでのところで飲み込んだ。そんなみつきに樺倉はなお言い募る。
「あたしがチビで年下で弱いから憐れんでる? 自分より成績が低いから見下してるの? まさか、友達だから手を抜いてあげたなんて言わないよね?」
「私、そんなつもりじゃ……」
樺倉はみつきの頬を平手で叩いた。みつきは痛みよりも樺倉の行動に衝撃を受けて呆けた。
「あれは、真剣勝負だった! 蛟と戦うために必要な試合だった! 少しでもお互いに高め合うために大切な試練だった! あたしは、みつきちゃんが大切だからこそ、手加減なんてしてほしくなかった! ちゃんとあたしと向き合って欲しかった!」
「真由……ごめんなさい……」
涙がこぼれ落ちる。泣いていたのはみつきじゃなく、樺倉だった。その目は真っ直ぐな怒りが宿っていた。
「真由の言う通りです……真由だと思ったら引き金にかけた指が動きませんでした。万が一でも傷つけるのが怖かったのです」
「バカだなぁ、みつきちゃんは。あたし、田舎育ちだから丈夫なんだよ。飛行訓練でも何回も落ちてるし、あれくらいの攻撃余裕だよ」
「うん……ほんとにごめんなさい」
「真山君にはちゃんと謝った? 身を挺して庇ってくれたんだよ?」
みつきは無言で頭を振った。
「ね、みつきちゃん、これから時間ある?」
「ええ。レポートがありますが、大丈夫です」
「じゃあ、ちょっと来て」
みつきは樺倉に手を引かれて、部屋を出た。
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次回「初めての手作り」をどうぞよろしくお願いいたします。




