聖石の神様
朔也は安心すると同時に、倒れたみつきが心配になった。授業後、双子を誘って救護室に向かうことにした。
「全く朔也は意気地なしだな。見舞いくらい一人で行けばいいのに」
「女子の見舞いに行くのはハードル高いって。そこは俺たちがフォローしてやろうぜ」
救護室に行くと、そこには意外にも長谷部と榎木もいた。
「長谷部、何でお前がいるんだよ」
ケンが喰ってかかると長谷部は冷淡に受け流した。
「鶴来さんの見舞いだ。発色の瞬間に初めて立ち会ったから、どんな感じだったか話を聞きたかったんだ。お前たちこそ、騒ぎに来たのなら帰れ」
双子が更に言い返そうとしたところで、みつきがベッドから身を起こして割って入った。
「皆さん、お見舞いに来てくれてありがとうございます。発色したって聞いた時は驚きましたが、もう体調は問題ありません。朝霧教官の魔力供給が効いたようです。発色した直後は身体に力が入らなくて、なにか夢を見たような気がしました」
「どんな夢だった?」
長谷部が間髪おかずに尋ねた。
「わかりません……真珠の、聖石の神様みたいな人に会ってきたような感じとでもいいますか」
「神様、か……」
長谷部はその言葉を聞いて考え込んだ。その間にみつきが朔也に礼を言った。
「倒れた時、支えてくれたの真山君だそうですね。ご迷惑おかけして申し訳ありません」
「……いや、そんな、偶然いただけだから」
しどろもどろに答える朔也を無視して、長谷部と榎木は出口に向かった。
「それじゃあ、鶴来さんお大事に。発色おめでとう」
そういうと二人は部屋を出ていった。扉が閉じると双子が口を開いた。
「全く、何でいつもつっかかってくんだろ? カルシウム不足だよな、絶対」
「早く禿げるタイプだな、三十過ぎたら額からじわじわくるタイプ」
それを聞いてみつきと樺倉が小さく笑った。
「本当に心配してきてくれたみたいです。三人も来てくれてありがとうございます」
「いや、朔也がどうしてもっていうから、俺たちは」
おまけというケンの言葉は咄嗟に朔也が口を塞いだ。あまりに慌てたのでばちんという音がするほどの勢いでケンが痛そうに口元を抑えた。
「仲が良いよね、三人は。見てて楽しい」
樺倉が子犬のじゃれあいを見ているかのようにくすくす笑った。
「霊珠見せてもらってもいい?」
ジョーがベッド脇に置いてある銃を指さして尋ねた。
「どうぞ……こんなに、はっきりと色が変わるのですね。不思議」
そう言いながら銃をジョーに手渡した。男子三人が覗き込むように霊珠を見る。透明だった霊珠は艶やかな純白に染まり、まさに真珠という名前に相応しかった。
「発色した霊珠、間近で初めて見た」
「ああ、本当に『発色』するんだな」
朔也は丁寧に銃をみつきに返した。
「発色してとっても嬉しいけど、これでみつきちゃん月白寮に移動しちゃうんだね……」
樺倉が微笑みに少し寂しさを滲ませながら、みつきを見つめた。
「真由・……真由なら大丈夫です。絶対強い戦士になれます。いつか一緒に戦いましょう」
うんと答える樺倉の目には涙が浮かんでいた。そんな樺倉をみつきは抱きしめた。感動のシーンの中で双子も少ししんみりした雰囲気になった。
「そうだな、もう一緒に授業受けたりできないんだからな」
「でも、治癒魔法と防御魔法の授業は一緒だろう? またよろしくな」
気持ちを切り替えようと双子が二人に声をかける。樺倉が涙をぬぐい、満面の笑顔で答える。
「そうだよね。あたしも頑張るよ! みつきちゃん、待っててね!」
うんとみつきも笑って頷いた。そこで双子と朔也の三人は部屋を辞することにした。
歩きながら、双子は初めて見た発色に興奮して話していた。
「発色ってあんなすごい光が出るんだな!」
「ああ、目の前が真っ白になったな。朝霧教官の治癒魔法にちょっと似てたけど、迫力が違ったな」
「あー! 俺も早く発色してユニット組みたいぜ」
「鶴来さん、明日から模擬銃から自前の銃が支給されるのか。どんな奴になるのかな?」
賑やかな双子を見ながら、朔也もみつきと離れる寂しさとみつきが発色したという事実を受け止めかねていた。みつきと朔也は同時に入学した。
(いつ自分も発色してもおかしくないってことだ……)
戦いの日は確実に近づいてきている。そんなことを考えながら朔也はいつまでも散ることのない扶桑の花を眺めていた。
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