防御魔法訓練開始
翌日には防御魔法の訓練が開始された。結界室に入ってきたのはがっちりした長身の男子学生だった。元は野球部だったろうと思わせるほど、丸刈りが似合っていた。首元の苦しそうなボタンを一つ外し、黄色のネクタイを付けている。男子学生は声を張り上げた。
「黄の聖銃士、今回教官を務める石川だ。防御魔法は物理または魔法による攻撃を防ぐ魔法である。相性にもよるが、黄、黒、青、赤、白、緑の順に硬度が高いと言われている」
石川はホワイトボードに大声で説明しながら大書きした。
「注意点は治癒魔法と同じく銃口を攻撃者相手に向けることだ。もう一つは変色訓練と同様、力を長時間与え続けて一定の形状を保たねばならない点だ。まずは模範演技だ。そこの玻璃の聖銃士、撃ってみろ」
指名されたのは長谷部だった。長谷部は音もなく立ち上がり、前に出てお手本通りのきっちりとした発砲体勢をとり、躊躇いなく一発石川に向かって撃ち込んだ。石川の前には黄色の燐光を放つ盾が煌めく長谷部の魔弾を弾いて打ち消した。
「イメージとしてはまずは一メートル四方の盾を構築してみろ。出来た者から俺が撃ちこむから、受け止めてみろ」
朔也はイメージを始めた。変色訓練とやり方は変わらない。引き金を引き、自分の前に盾を創造する。ぼぉっと光の壁が出来上がる。それは一メートル四方どころか三メートル四方はあった。気付いた石川がつかつか歩み寄ってくる
「君の名前はなんだ?」
真山ですと朔也は恐る恐る名乗った。
「もう一度やってみろ……良いというまで解除するな」
朔也は体勢を取り、同じように盾を作り出した。先ほどよりも少し小さめの形になった。
「大きさは十分。次は持続時間か。十分間このサイズを保つことができるか?」
「……やってみます」
石川は左手の時計をちらりと見て、計測を開始した。トリガーを引く人差し指に力がこもり、ほんの少し震える。
(けど、体力も魔力もまだまだ余裕がある……)
そう考えていた朔也も七分を過ぎた頃、力が一瞬ブレた。光の壁の橋がゆらりと揺らめく。
「どうした、真山。もうへばったか?」
朔也は無言で首を振り、集中しなおした。壁は再び輪郭を取り戻す。そして、ようやく残り三分間を耐えきった。
「十分経った。よし、三分の休憩をやる。次は強度を確認する」
石川は朔也の元から去り、他の学生を見に行った。朔也は安堵の溜息をついた。
「初っ端からやるな、朔也。あんなでかい盾作って、十分も耐えるとか」
「どでかすぎて、俺の前まであったぜ……それは言い過ぎか。無理だけはするなよ」
双子が隙を見て朔也に声をかけていく。朔也はそれに軽く笑って返した。周りを見ると一メートル四方の壁を構築することに苦心しているようだった。一人だけきっちり一メートル四方の壁を展開させている学生がいた。黄色の光を放ちながら、盾が形成されている。
「土屋か。これから撃ち込むが大丈夫だな?」
「平気っす、石川先輩!」
「ここでは教官と呼べ。では撃つ」
石川はごっついハンドガンを取り出し、至近距離から撃ち込む。ガンっガンっと硬質な音を立てて、石川の弾丸は弾かれた。
「よし、とりあえず合格だ。サイズの拡張と持続時間の延長を訓練しろ」
「やった、うち一発合格とか凄くない?」
黄色の壁が消えてみるとそこには金に近いほど脱色した髪と濃いアイメイクを施したギャルが飛び跳ねていた。
「落ち着け、土屋。訓練を続けろ」
「ラジャーっす」
石川は土屋という少女を軽くあしらうと、朔也の元にやってきた。
「十分、休憩はとれたな? 今のを見てたろう。これからお前にも撃ち込む。耐えきって見せろ。防御魔法を展開しろ」
朔也は再びトリガーを引く。オーロラのような虹色の壁が朔也と石川の間に現れる。
「よし、それでは撃つ」
マシンガンを取り出し、それを朔也に向けて撃ち込んだ。朔也は一瞬怯むが、力を緩めなかった。
黄色の輝きは虹色の壁に吸い込まれて、シャボン玉のように消えた。二弾、三弾と石川は撃ち込んでいく。弾丸が壁に達する度、強い圧が手元にかかる。五発目を撃ったところで石川は手を止めた。
「良いだろう。しかし、装甲の厚さにばらつきがある。均等になるように訓練しろ」
はいと朔也が答えると、長身の石川が朔也をじっと見定めるように見つめると、次の学生の元へと去っていった。
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次回「みつきの発色」をどうぞよろしくお願いいたします。




