気になるあの子とランチ
ケンの言う通り、数日後治癒魔法と防御魔法の受講者が掲示板に張り出された。無色の九人の他に色付きの数人がを連ねていた。
「おお、俺たちの名前もあるな」
「当然だろ、朔也も勿論あるぜ。げっ、広田もいるな。もう顔見なくてもいいと思ったのに」
双子が掲示板の前を占拠していると、後ろからみつきが話しかけてきた。
「ごめんなさい、受講者表、私たちにも見せてもらっても構いませんか?」
「うわっ、ごめん。玻璃の聖銃士はみんな名前があったよ」
ケンがいつになく丁寧な言葉遣いでみつきに対応した。
「本当? 良かった、真由も一緒だって」
「良かったぁ。あたし一人落ちこぼれたらどうしようって不安だったよ」
双子は前を譲り、みつきと樺倉は自分の名前があるのを確認して喜んだ。
「全員入って良かったな。俺たちこれから飯食いに行くんだけど、良かったら二人も一緒に行かないか?」
ジョーが手慣れた感じで二人を食事に誘った。みつきと樺倉は少し驚いた顔をして視線を交わした後、みつきが一瞬考えて答えた。
「私は構いませんよ。真由はどうです?」
「あたしも大丈夫だよ」
「よし、それじゃあ、行こうか。俺たちの名前は知ってるよな?」
「天地謙君と譲君でしょ」
「それじゃあ、どっちがどっちかわかる?」
そう聞かれてみつきは首を傾げてしまった。その様子を見て四人は笑った。
「オレンジのパーカーの方が謙君で、灰色のジャケットの方が譲君でしょ」
樺倉が正確に双子を見極めた。
「え、どうしてわかったの?僕もケンとジョー見分けるのに時間がかかったのに」
朔也が驚くと双子も目を丸くしている。
「俺たちもこんな簡単に見分けられたことないや。服装で?」
「えっ、なんか雰囲気かな? いつも授業で見てたから。わからなくなったことないよ。うち牧場だったから動物見分けるの得意なのかも」
「牧畜扱いかよ。でも学校でもクラスメイトたちはしょっちゅう間違ってたのに、樺倉ちゃん、すげぇな」
そんなことを話しているうちに、食堂に着いた。今日はピザ・パスタフェアらしく、朔也にはよく知らない名前のスパゲッティとピザが出ていた。
「……実はピザもパスタも大好物なのです。ここに来て良かったのはダイエットをしなくていいことですね」
「みつきちゃんはスタイル良いからいいけど、あたしはもう少し身長欲しかったよ」
樺倉が背伸びしてみつきと背比べをした。それでも若干みつきの背が高かった。
「いいじゃん、いろいろ頼んでシェアして食べようぜ」
「大人数だし、丁度いいな。それじゃあ女子のお二方、お好きなメニューをお選びください」
二人は喜々としてメニューを見て検討し始めた。みつきと食事をするということで朔也は緊張しっぱなしだった。ジョーを引っ張ってきて耳打ちした。
「ジョーどういうことだよ。みつきを食事に誘うなんて」
「良いだろう、別に。いつも男だけで飯食っててもつまらないし」
「不純異性交遊は禁止だろ?」
「グループ交際はセーフだろ」
ニヤリと笑ってジョーが返した。
「あの日、朔也が鶴来さんのファンだって仲間内にばらしちゃったせいで、全部グッズしまっちゃっただろう。悪かったと思ってるんだ。鶴来さんにはファンだって言わないから、リラックスしてこの瞬間を楽しめよ」
あれはそう言うんじゃなくてと言い訳する間もなくするりとジョーは朔也の拘束から抜け出し、メニュー選びに参加した。二十分後、六人掛けのテーブルには所狭しとカラフルなピザとパスタが並べられた。
「うわぁ、こんな炭水化物の塊、聖銃士にならなかったら食べられなかったなぁ」
真由が目を輝かせている。みつきの隣にいる朔也は心臓が破裂しそうだった。左手の時計型端末が異常を示して、赤いランプを点滅させている。
「冷める前に、食べようぜ」
ケンがマルガリータに手を伸ばした。各自、好きなピザとパスタを取っていく。
「あら、真山君はお食事されないのですか?」
みつきが朔也を覗き込んできた。さらりと髪が流れて、シャンプーのいい香りがする。
「た、食べるよ。たくさんあって迷っちゃって」
「でしたらこのピザ、ジェノベーゼはいかがでしょう? バジルを使ったピザです」
みつきが大皿をそっと朔也の前に差し出してくれた。
「……頂きます」
そう言って朔也はピザを一切れ取った。チーズが垂れそうになるのを皿で受け止める。それから手が震えているのを隠しながら口に運んだ。朔也は緊張のためいくら咀嚼してもどんな味かよくわからなかった。
「一つ伺いたいのですが、真山君。私たち以前に面識がありますか?」
ぎくりと朔也と双子が動きを止めた。
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次回「カミングアウト」をどうぞよろしくお願いいたします。




