大人たちの茶飲み話
「真山朔也か……ありゃ、化けるかもしれないな」
「大井さんもそう思いますか?」
射撃場の横にある小さな鷹山の部屋で大井と雨森と鷹山の三人で茶を飲んでいた。
「一発に込められてる魔力量はメーター振り切っていやがった。そのくせ、精度もなかなかなもんだ。それを平気な顔して十発撃ちやがった」
「玻璃の魔法使いとはいえ、現時点でも蛟にダメージを与えることが出来るでしょうね」
雨森が遠い日を思い出すように呟いた。
「技術面ではまだ拙いものがありますが、魔力量、威力なら数十年に一人の人材ですね」
鷹山が射撃場を見つめた。朔也の撃った標的の後ろの土壁が抉れていた。
「残るは精神面か……こればかりは自力で成長してもらうしかないな」
「やっと引き金を引くのに抵抗が無くなってきましたが……外であれば、優しいと呼ばれたかもしれない気性でもここでは足枷になっています」
大井の評価に雨森がため息交じりに答えた。
「一人でも多くの命を救い、仲間と自分を生き残らせることができるよう、精一杯やってやりますよ。我々大人はもうそれしかできないのですから」
鷹山が大井の湯飲みに茶を注いだ。
「そうだな。酷なことだが、世界の理がそうなっている以上それしかないな」
「子供たちに前線に立たせる……そのために自分たちがいると思うと時々嫌になります。聖銃士になったおかげでこうして生きていられる僕でさえ」
「雨森、お前も昔から甘過ぎる。我々はやるべきことをやるしかない……それだけだ」
無力な大人たちにできることは少ない。ただ、少しでも生存の確率を高めてやること、それだけしかできず、戦場に立てば誰も守ってはくれないのだ。
朔也が寮に戻ると双子が携帯ゲーム機で対戦しながら待っていた。
「おかえり。どうだった、朔也?」
「また暴発したりしなかったか?」
ゲーム機をベッドに放り出して、朔也の方を心配そうに朔也を眺めた。
「大丈夫だったよ。お陰様でリミッターも全部外れた」
その言葉に双子は我が事のように喜んだ。
「良かったな、朔也。お前なら大丈夫だと思ってたんだ」
「そう言うけど、ケンはゲームしながらそのことばっかり言ってたんだぜ」
ばらすなよとケンはジョーを殴る振りをして、ジョーがそれから逃げる。
「祝賀会で飯食べに行こうぜ」
「そうだな、今日は北国海鮮フェアをやってたはずだから」
双子の言葉に朔也も笑顔で賛同する。
「それは楽しみだね」
三人は和気あいあいと食堂へと向かった。朔也はようやくスタートラインに立つことができたと並んで歩きながらほんの少し誇らしく思った。
翌日の訓練からリミッターなしの銃で臨んだ朔也だったが、その飛躍は凄まじかった。飛行訓練では百メートルストレートで長谷部を抜いてトップを取り、変色訓練では人工玉を十分間発光させたものを一時間に三個作ることができた。
ただ射撃訓練では新たな課題に取り組まなければならなかった。
「真山、お前の射撃能力はおおよそ分かった。その上で次は威力を自力でコントロールすることも覚えなければならない。蛟に発砲したとして、蛟の向こう側に民間人がいたらどうする?市街戦の場合に備えて、威力の調整を学べ」
そう言うと鷹山は標的の向こうにもう一つ木板でできた的を置いた。
「手前が蛟、奥が人だと思え。手前は貫通させ、奥の板は壊すな。わかったな?」
鷹山の課題はもっともだったが、これが本当に難題だった。膨大な魔力をある程度コントロールする術を覚えたが、細かな調整はまだ難しかった。結果として最初の射撃訓練では板をボロボロにして終えた。
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次回「飛躍」をどうぞよろしくお願いいたします。




