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魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
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リミッター解除

 翌日、朔也は双子から瀬川が発色したと聞いた。元より授業も訓練も出ていなかった瀬川がいなくなってもあまり変化を感じられなかった。ただみつきと樺倉は少し寂しそうな顔をしていた。

 

 しかし、朔也はそれ以上に自分の事で精一杯だった。平均レベルに達しても朔也は墨村と雨森に頼み、個人練習を続けさせてもらうことにした。訓練の中で墨村の出す課題もより難解なものになってきた。口径が徐々に大きくなり、変色訓練では発光を維持させる段階までやってきた。そんな訓練の日が続いたある日、雨森が朔也に告げた。


「リミッターを外す?」

「そうだ。墨村教官とも少なくとも一段階はリミッターを外すべきだと話し合った。ここ最近の成績から見ても妥当(だとう)な判断だと思うよ」

「有難いお話なんですけど、リミッターが無くなったらまた暴発するんじゃないかと心配で……」


 雨森は神妙(しんみょう)な顔で頷いた。


「その危険性はある。だが、リミッターがあれば、これ以上の技術の向上は望めない。今の、真山なら大丈夫だ。それと広田が発色した」

「広田が? 一体何色になったんですか?」

「緑だ。広田は少し発色の時期が早かったが、真山、君も遅かれ早かれ発色する。そうしたら、今のままの銃では苦しい時がやってくる。何より戦闘に制御できない人間を出すわけにはいかない。明日、大井さんが来てくれることになっている。授業が終わり次第、射撃場に来なさい」


 朔也は嬉しさと不安な気持ちの中で、寮へと戻った。すると遠野が荷物をまとめていた。


「あれ、遠野どうしたの?」

「部屋移動。広田が発色したから、隣の二人部屋に。玻璃の聖銃士は集団生活を学ぶために四人部屋になっているんだ。天地兄弟を移動させるわけにもいかないし、俺が貧乏くじ引いた」

「そっか。寂しくなるな」

「隣の部屋になるだけでなに感傷的になっているんだよ。雨森先生の話って何だった?」


 ああと朔也は答えて、銃を取り出した。


「明日、リミッターを外すらしい」

「そうか。最近成績上がってきているからな、真山。天地たちと仲良くやれよ。それじゃあ、また」


 そう言って遠野は部屋を去っていき、朔也は一人部屋に残された。


 遠野の引っ越しに双子は文句を垂(た)れたが、それ以上に自分たちも早く発色したいと意気込んだ。


「発色って本当に突然来るんだな。成績とか発病からの長さとか関係なく」

「それで言ったら長谷部なんてとっくに発色してるもんな。広田からとは思わなかったけど。一体、俺たち何色になるんだろうな」


 朝食をがつがつと食べながら双子が言い合った。朔也はそれを黙って聞いていた。


「そういえば、朔也。今日リミッターを外すんだって?」

「おめでとさん。また、どでかいのぶち開けるんじゃないぞ」


 双子は朔也の癖毛を撫でまわした。どうやら双子にとって朔也はどんくさい幼い弟だとでも思っているらしい。兄弟のいない朔也にはそれがくすぐったかった。

 

 その日の授業の終わり、射撃場に行くと鷹山と大井、雨森と墨村が揃っていた。


「遅くなってすみません」

「いや、時間通りだ。大井さんお願いします」


 あいよと大井が承って、朔也から銃を受け取った。細部を確認し、計測器具を取り付けていく。


「いつものように撃ってみろ」

「真山、立ち射撃、一センチを十発」


 大井の要望に鷹山が指示を出す。朔也は力を銃へと落とし込む。ぱすっという軽い音が連続で十回続く。


「なるほど、ある程度は仕上げてきたみたいだな。それじゃあリミッターを一つ減らす」


 そういってサイレンサーに似た魔力吸収装置を取り外した。


「真山、立ち射撃、一センチを十発だ。さっきと同じ様に撃て」


 朔也はまず一発先ほどと同じくらいの力で撃った。穴は二センチほどになったのをゴーグルで確認し、少しずつ魔力を糸を撚るように細く尖らせていく。二発目、一・五センチ、三発目一・二センチ、四発目でとうとう一センチ丁度になり、感覚を集中させた。


「いいだろう、真山。大井さんいかがですか?」

「数値も安定している。これなら、もう一段階リミッターを切っても良いだろう。銃を貸せ」


 そう言って霊珠の横のレバーを切り替えた。


「これが最終段階だ。撃ってみろ」

「真山、先程の要領で撃てばいい。撃て」


 朔也は自分の中の魔力が大蛇のように渦巻いているのを感じた。暴れまわるその力を精神力で捻じ伏せようと強く念じた。手の中の銃が震える。冷や汗が一滴背筋を伝う。発砲させようとした時、墨村の言葉が朔也の動きを止めた。


「真山さん、力ずくで制御するのではなく、流れを捉えるのですよ」


 朔也は射撃体勢を一度解き、深呼吸した。目を閉じて、風を頬に感じる。それからゆっくり射撃体勢を取る。体内をぐるぐると力が奔流となって巡っていく。抗うことでは息が出来なくなりそうだった。朔也は流れに身を任せ、ただその出口を手中の銃へと向かわせた。魔力は両手を介して外へと流れだす。その瞬間に朔也は引き金を引いた。五センチほどの穴が標的に開く。朔也は少しずつ力の出力はそのままに細くしていく。量も流速はそのままに、力を受け流す。トリガーを引く一瞬、朔也は頭の中が真っ白になった。引くと同時に既に穴は開いていた。


(もう少し、小さく……)


 一発ずつ、自分の想像した形に近づいていく。十発を撃ち終えた後、朔也は放心状態となった。


「……こりゃ、たまげた。この数値であの口径の小ささと正確さと威力を維持できるなんて」


 大井は計測器と標的を見比べている。


「真山、いい射撃だった。しかし、打ち始めが遅い。素早く射撃体勢を取れるよう心掛けろ」


 鷹山が朔也の肩を一つ叩いた。雨森がそれを見て頷いている。朔也はその場に座り込んだ。


「大丈夫ですか、真山君?」


 墨村が日傘をさして朔也に歩み寄ってきた。


「ありがとうございます、墨村教官。訓練のお陰です。アドバイス助かりました」


 その言葉を聞くと墨村は上品に微笑んで口元を隠した。


「努力したのも今日の結果も真山君の実力ですよ……もう、わたくしは必要ありませんね。また訓練でお会いしましょう」


そう言い残して墨村は射撃場から去っていった。


「真山、もう寮に戻って良い。魔力はともかく体力は消耗しただろうから早めに休むように」


 鷹山の言葉通り、疲労感を感じていた朔也は一礼をして射撃場を出ていった。


お読みいただきありがとうございます。


次回「大人たちの茶飲み話」をどうぞよろしくお願いいたします。

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