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魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
20/88

天才サボり魔

 みつきと樺倉は飛行訓練を終えて寮へと帰って来た。


「ひゃあー、飛行訓練めちゃくちゃ疲れたよ」


 初めての飛行訓練を終えて、戻ってくるなり樺倉がベッドに倒れ込んだ。その隣のベッドで瀬川はいつも通りごろごろと転がってタブレット端末をいじっている。


「あー、あれね。そんなに疲れた? 前やった時は結構簡単だったけど?」

「あさみちゃん、飛行訓練出たことあるの?」

「あるよぉ。ていうか、全部の訓練は一度はやったし。それで大体要領(ようりょう)は掴めたよ」

「そうなの?!」


 樺倉が驚いたように瀬川を見た。瀬川はごろりと仰向けになった。


「不思議に思わなかったのかねぇ、まゆちゃんや。いくら玻璃(はり)の聖銃士とはいえ、ほとんど訓練に出ないことを許されているのかというと――あたしが天才だからだ」

「あさみちゃんたら、そんなところで見栄張らなくてもいいよ」


 樺倉が瀬川の言葉を軽く流した。しかし、瀬川は挑戦的に笑った。


「信じないならいいよ……うん、ゴロゴロするのにも飽きたし、三重リミッターの新人君にも会ってみたいし、明日は訓練に出ようっと。お風呂行こう~」


 そういうと瀬川は浴場へと一人で出ていってしまった。あまりに自然な瀬川の態度は、その言葉に妙な真実味を持たせていた。


「真由も麻美が訓練している所、見たことないのですか?」

「うん、ここに来てから座学も訓練も一度もない。珍しいよね、あさみちゃんがやる気を出すなんて」


 御子神学園は学園と銘打っていながら、実際は人類の守護者を養成する機関だ。有名無実化している国軍よりも、はるかに強力な武力が集まっている。その御子神学園において、瀬川の様な存在が黙認されているという現状の方が異常だ。みつきは無意識のうちに(つやや)やかな白金色の髪を梳いていた。それから窓から月を見上げて呟いた。


「綺麗な満月ですね。月虹も出ています」

「本当だ。そういえば、この月虹って東大陸特有の現象なんだって」


 へぇとみつきは夜空に見入っていた。御子神学園の夜はゆっくりと更けていった。


 次の日、朔也たちが射撃訓練場に来ると見知らぬ女子生徒がベンチで眠っていた。


「え、新入生かな?」

「ああ、朔也は会うの初めてか。瀬川っていうんだ。サボり魔で滅多に訓練に出ることないんだけど、珍しいこともあるもんだな」

「おーい、瀬川。そろそろ訓練始まるぞ」


 うーっと唸ってゆるく波打つ茶髪を一つに縛った女子生徒が起き上がった。それから、きょろきょろと周囲を見回して、最後に朔也のところで視線を止めた。


「鷹山先生はまだ来てないんだね。良かった~。それで、双子くん、その子が三重リミッターの新人君?」

「あ、真山朔也って言います」

「同じクラスメイトなんだから、気楽にいこうよ。三重リミッターなんて大変だねぇ。今日は久しぶりに肩慣らししようと思ったのと、新人君に会いに来たんだ。意外に普通の子なんだね」


 そこで、みつきと樺倉が訓練場にやって来た。


「あ、あさみちゃん、本当に来たんだ」

「あー、まゆとみつき。うん、早く来すぎちゃったから、さっきまでそこで寝てた」


 ケンが樺倉に訊ねた。


「瀬川ってまゆちゃんたちと同室なのか?」

「そうだよ。女子は五人しかいないから三人部屋と二人部屋で分かれてるの」


 そこまで話したところで鷹山が入って来た。


「あー。鷹山先生、ご無沙汰してます~」

「瀬川か。お前が訓練に参加するなんてどういう風の吹き回しだ?」

「ふふふ、ちょっとした気分転換です。今日はよろしくお願いします~」

「そうか。真山、今日は瀬川の訓練を見学してろ」


 えっと朔也は驚きの声を上げた。


「ん~、あたしが新人君の実力見たかったのに。まぁいっか。新人君は犬派、猫派?」

「えっと、犬派」

「え~、そうなの。あたし、断然猫派。だから今日は猫にするから」


 はぁと朔也は意味も分からず相槌を打った。それから、間もなく玻璃の聖銃士たちが集まった。長谷部が瀬川の姿を視線に収めるとわずかに眉根を寄せた。


「それでは立ち射撃百発始め」


 ゴーグルを付けた瀬川は右手で聖石銃構え、リラックスした様子で射撃を始めた。的の左上に命中した。その次はさらに数ミリ左に当たる。中心からは程遠い。


(この人の何を見ろって鷹山先生は言ったんだ?)


 瀬川は休むことなく無造作に次々に射撃を行っている。朔也はゴーグルでズームして的を見た。数十発目で朔也はやっと気付いた。それは等間隔で点描画(てんびょうが)のように猫の一部をかたどっていたのだった。最後に目を真ん中に撃ち抜くとだらりと右腕を下げた。


「どう? あたし、猫描くの上手いんだよ~」

「どうやって、コントロールしているんですか?」

「え~。最初からできたから、コツとか聞かれても分かんないな。聖石銃なんて石入れた時点で、自分の身体の延長みたいなものでしょ?」


 そこに鷹山がつかつかと歩み寄って来た。


「瀬川、たまに来たんだから真面目にやれ。それじゃあ座り打ち百発」


 はいはいと言いながら瀬川は銃を構えた。


「真山、お前の魔力量は高い。だが、瀬川はお前と違った意味で天才だ。あの精度で射撃を行える学生は他にいない。他の訓練でも魔力操作にかけては実戦に出ても十分通用する。真山、その力に振り回されず、コントロールすることを学べ……理解できたなら立ち射撃から始めろ」


お読みいただきありがとうございます。


次回「ゴスロリ教官と個人練習」をどうぞよろしくお願いいたします。

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