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魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
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初めての飛行訓練

 リミッターを付けられてから朔也の成績はますます振るわなかった。射撃訓練ではエイミングは(かろ)うじて良くなってきたものの、威力調整がきかず鷹山の指示通りの口径にならず、いつも同じサイズの弾痕(だんこん)になった。墨村の変色訓練でも全く進歩が見られなかった。進歩どころか人工玉を三個破壊した。教本をいくら読んでも『精神的な制御によってコントロールされる』としか載っておらず、鷹山も墨村も『体感で覚えろ』と繰り返した。そして、いよいよ飛行訓練が行われることになった。

 

 山際(やまぎわ)と名乗るツーブロックにした堀の深い顔立ちの教官が、飛行訓練を担当した。グリーンのラインの入ったブレザーを少し着崩した山際教官は。女子たちから魅力的に映るらしく、ひそひそ声が聞こえてくる。


「では、飛行訓練を行う。初めての者はこちらに来い。飛行器具を渡す」


 その声で朔也と鶴来、それから名前の知らない小柄なボブカットにした気の弱そうな女子が付いてきた。


「これが推進飛行器具(すいしんひこうきぐ)、通称『トンボ』だ」


 そう言って山際教官が見せたのはまさに蜻蛉(とんぼ)の羽根のように薄く透明な羽根が四枚付いた器具だった。羽根の付け根には黒い十センチほどの立方体があり、そこから背負えるように肩ひもが伸びている。


「トンボの動力源はもちろん霊珠の魔力だ。銃とトンボを同調させろ」


 言われた通りに銃の引き金を引きながら立方体のスイッチを押すと、羽根の翅脈に虹色の光が張り巡らされた。


「よし、次はショルダーを付けて、その場で静止していろ」


 三人はトンボの肩紐を通し、想像以上に軽いそれを背負った。山際が肩紐の確認と調節をしていった。


「安全確認。ショルダーの確認は毎回するように。次に飛行訓練に入る。精神を統一し、霊珠のエネルギーをトンボに届けるイメージを持つ。銃に安全装置がかかっているのを確認してから、空に向けて引き金を引け」


 朔也も重い引き金を天に向けて引いた。ヴィーンと小刻みに背中の羽根が振動するのを感じる。


「よし。次は一メートル上昇してみろ。射撃訓練や変色訓練と一緒だ。イメージと精神統一」


 朔也は必死で念じた。羽根に魔力が行き渡り、飛翔する自分を思い描く。しかし、羽根は振動するものの朔也の身体を持ち上げるまでには至らない。


「私、飛んでいます!」


 その時、隣のみつきが声を上げた。羽根が燐光を放ち、まるで妖精のように空中を漂っている。日光を浴びて、ポニーテールにしたみつきがふわふわと宙を舞うのを朔也は見惚(みと)れていた。


「それでいい、鶴来。そのまま力が続く限りその状態を保持しておけ。あとの二人は訓練を続けろ」


 そう言い残して山際は他の学生の様子を見に行った。ふわふわと浮かぶみつきも集中力を使っているらしく、額に玉のような汗が浮かんでいる。


「みつきちゃん、どうやって飛んでるの?」


 小柄な少女がみつきに問いかける。


「集中して、羽根が自分の身体の一部だと、イメージして飛ぶのです。真由の羽根も力が流れて光っているから、大丈夫ですよ。リラックスしてください」


 真由と呼ばれた少女は深呼吸して目を閉じた。しかし、その体が浮かぶことはなかった。逆に集中しすぎて疲労したらしく、ぺたりとその場に座り込んでしまう。


「大丈夫か? 魔力消費し過ぎたんじゃないか。教官呼ぶ?」


 朔也の言葉で少女は首を振って立ち上がった。


「大丈夫。心配してくれてありがとう、真山君」

「そっか。無理するなよ。僕の名前知ってるんだ。君の名前は?」

樺倉真由(かばくらまゆ)。三重リミッターが付いたって女子部屋でも有名だよ」

「そっか。でもコントロールできなくてこの通り。二人とも落ちこぼれだな」


 朔也が苦笑すると、樺倉もつられて笑った。小さな野草が咲いたような温かい気持ちにさせる笑みだった。


「あたし、みつきちゃんと真山君が来る一月前に来たんだけど、みそっかすで。何の訓練でも上手く行かなくって。なんであたしなんかが聖銃士になっちゃったかなぁ」


 スカートの埃を払い、軽くため息をつく。しかし、からりとした口調でそこには悲壮感(ひそうかん)は感じられない。


「僕もだよ。みそっかす同士頑張ろうな」

「うん」


 そう言って二人は終了時刻まで二人は少しでも飛行しようと試みたが一センチたりとも浮かび上がることはなかった。


「ユニットを組むまで装備は訓練室で預かっておく。各自、休息を取るように」


 号令がかかると樺倉は息も絶え絶え、飛行装置を外した。それを見た満月が音もなく降りてきて介抱した。朔也はそっとその場を離れ、トンボを訓練室に片付けようとしたところで、後ろから双子が飛びついてきた。


「駄目だぞ、朔也君。不純異性交遊は禁止だといっただろう?」

「鶴来ちゃん狙いとフェイントをかけてからのまゆちゃんとはなかなか手広いな」

「痛いよ、そんなんじゃないから」


 双子のヘッドロックを外そうと躍起(やっき)になっていると冷たい声が降ってきた。


「そうだな、ただの飛べない者同士、傷をなめあっていただけだったな」


 長谷部が厳しい目をしてこちらを(にら)んでいた。


「訓練に集中できないなら、霊珠なんて破壊してさっさと消えてしまえ。お前らみたいなやつらが戦場に出る方が迷惑だ……片付けの邪魔だ、退け」


 その剣幕に押されて三人は道を譲った。長谷部は後は無言で装備を片して出ていった。


「あーあ、またいつものあれだよ」

「よく悪態のバリエーションが尽きないよな。やれやれ、飛行訓練で体力消耗したし、飯でも食いに行って休もうぜ」


 朔也は長谷部の言葉を思い返した。


(このままじゃ、戦場に立っても何もできない。仲間も守れないし、すぐに死ぬ……)


 朔也は双子たちと別れて雨森の元へ向かった。


お読みいただきありがとうございます。


次回「個人レッスン」をよろしくお願いいたします。


米 活動報告にありますように、改稿してヒロインである鶴来みつきの性格を変えました。

  クール&大和撫子キャラです

  アドバイスを下さった方ありがとうございます。

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